見出し画像

総特集 『ミッシェリーの魔法 ‐1928年、ラジオジャック‐』って何だ!

公社流体力学の最新作『ミッシェリーの魔法‐1928年、ラジオジャック‐』が上演される。

5/14、6/3、6/10
(会場:インストールの途中だビル401号室 インストジオ)
各、14時・18時30分開演(開場受付は30分前)
料金2000円
5/14回は昼夜両方、初日割で1000円。
6/3の14時回はアフタートークで萩田&公社

上演時間1時間30分
予約
 
20世紀初頭に活躍した劇作家・演出家ミッシェリー・K・ブラントン。
常識を覆す破天荒な喜劇を次々発表し、魔法使いと呼ばれ時代の寵児となった。そんな彼女は何故!ラジオ局で立てこもり事件を起こしたのか。
数々の歴史事実、演劇・ジャズ・映画等20世紀カルチャー史、
そしてミッシェリー作品の再現を組み込んだ、演劇史エンターテイメント。



今や飛ぶ鳥を落とす人気劇団東京にこにこちゃん主宰、萩田頌豊与さんがミッシェリーの伝記をもとに書いた小説

これを原作に
第10回せんがわ劇場演劇コンクールグランプリ受賞団体であるこの私が作り上げる新たな一人芝居。滅茶苦茶叫んで走るタイプの芝居(にしたい)。
 美少女至上主義をテーマに活動している私が、この演劇界の魔法使いに一体どんな美少女性を見出したのか。ミッシェリーの美少女性を男一人芝居でどこまで引き出せるか。
 
初日の二公演は半額1000円、6/3の14時回は萩田さんとのアフタートークあり。
 
とはいえだ、名前は知ってるが見たことない劇団の一角に入りつつある団体があらすじと軽めの紹介したところでどれだけ影響があるのか。ということで、より深ぁく解説をしようじゃないか。

ミッシェリー・K・ブラントンって誰でしょう?

1880年に生まれた劇作家・演出家。(アインシュタインの1歳下、カフカの3歳上)
代表作は破天荒な展開を迎える『死して、尚(原題:Dead and still )』、前代未聞の手法を取り入れた『晴れた日に、また(原題:On a sunny day again)』 等。この2作品は公演の中で一部抜粋の形で上演します。
 1927年に商業ラジオ局の乱立を抑えるために設立された英国放送協会(BBC)。この出来立てほやほやBBCラジオの番組パーソナリティーに抜擢されるなど、ラジオ黎明期に名を残す文化人である一方で、世界初のラジオジャック犯という説がある。
 戦前の演劇人で日本で上演される機会もないということもあって、知名度が低いのは否めないが彼女のまだ見ぬ演劇を作り出そうとする意志は
前衛演劇というより現代の日本小劇場演劇・特にナンセンス演劇に非常に近しいものを持っているのではないか。そういう意味では100年早すぎた演劇と言えるだろう。そういう意味で、今最も勢いのある演劇人である萩田頌豊与さんが惹かれるのも納得。
詳しい内容はモロ本編なので、どうぞお楽しみに。
尚、原作もこの作品も権利者からの許諾を得て執筆・上演していることを記載しておく。

そんで公社さんってどんなジャンルの人?

 さて、公社は演劇ユニットとは言っていたが自分のやっていることを演劇と言っていない。じゃあなんて言っていたかというと
 今までは朗読見世物というジャンルを名乗っていた。が、昨年をもって朗読見世物を終了した。何故ならば朗読見世物(朗読ではない)と書いたときにじゃあ朗読って言わなきゃいいじゃんと思ったから。自分で自分にツッコミしたらそりゃあもうおしまいだよ。
とはいえやることが変わる訳じゃないので、新たなジャンル名をつけようと思って何も思いつかなかったので新しいジャンル名は公社流体力学になりました。
公社流体力学は公社流体力学をやる団体です。
いや、そう言われてもよくわかんないだろうと思うでしょう。だから、3月に発表した現時点の最新作『オカルトライターと秘密を抱えた少女』(14分)をどうぞ。

  まぁ、こういうひたすら喋るのを1時間30分くらいの尺でやるけど流石に1時間30分棒立ちじゃないよ。なんと!1時間30分動きながら喋るよ。上で叫んで走るって書いたしね。

とは言え自称だけじゃ不安なので、過去のお客様の声をどうぞ

 さて、手法は公社流体力学だけど、物語のジャンルは多彩。何故なら公社はこれまで自分が好きなジャンルに挑戦してきたから。
 
『美少女がやってくるぞふるえて眠れ』 は戦闘美少女モノ(戦姫絶唱シンフォギアとか)
『夜色の瞳をした少女、或いは、夢屋敷の殺人』 は初期メフィスト賞(森博嗣、清涼院流水、積木鏡介)リスペクトの新本格ミステリー
『粘膜少女戀愛綺譚』 は伝説の電波アニメserial experiments lainリスペクトのSF

 
そして今回の好きな物は演劇、特に東京にこにこちゃん、そして海外文学。
 


公社ちゃんは演劇大好き

公社は演劇が大好きである。その中でも大好きな劇団は東京にこにこちゃんである。ウェルメイドナンセンスコメディにおいて東京随一の劇団で打率が高い。ぶっ飛んだ登場人物たちによるイカれたギャグの連発の後に愛を描く物語へと着地する。そしてそれは、この伝記小説においても生かされている。躍動感と愛。これを今回の上演でも伝えられたらと思う。
 公社は色んな演劇を見て感想を書いているのだが。最近公演を観たことはないがあなたの感想がtwitterで流れてきたと言われることが多々あり、感想呟き人間として定着してるっぽい。なので普段色んな演劇を観た私らしい様々な演劇に影響を受けた作品を作っている。
 と、書くと演出とか演技とかすごい凝った物が出てきそうだがその逆。立派な演劇を出すところが一杯あるなら私はもう、ニッチ産業一筋でいいやと。舞台装置も音響も照明も削った肉体一本勝負。わざわざ私がやる必要ねぇよ。一人なんだから、他の誰もやってないことをやろう。ステゴロで勝負だ。
 影響を受けすぎて、何の影響も受けてない演出をやってます。
 でも、今回は映像と音響を使う。何故ならにこにこちゃんリスペクト。
私の公演で音響が使われるのは2016年の『懺悔800』以来なので何と驚きの7年ぶり。(尚、照明演出に関しては8年の活動歴において『夜色の瞳をした少女』の1回しか使ってない。あと全部、地明かり)

物語を描かないで物語を描く奇想文学

そして影響を受けた海外文学。
 公社は海外文学好きで、その中でも基本的に国書刊行会の本しか買わないくらいである。国書刊行会、他の会社が出さない変な内容の本ばかり出す素敵な出版社。
 そして特に好きなのがオラフ・ステープルドンの名作『最後にして最初の人類』
大戦争以降に起こる人類の進化を20億年という長さにわたって描く古典SFだが、これが物語ではなく20億年の歴史をまとめた架空の歴史書というか記録なのである。人の形を喪い宇宙に進出する人類という架空を事実として記録する。これがまさにフィクションの面白さ。
 更に、パトリク・オウジェドニーク『エウロペアナ』(こっちは白水社)。日本翻訳大賞も受賞したチェコ文学の傑作だが、これはただひたすら20世紀史が描かれるだけである。物語はなく、ただ歴史がつづられる。しかし、時代が入り乱れ記録や噂話・雑多な話題がシャッフルされテレフォンセックスの話してると思いきやいつの間にかナチスの収容所の話になっていたりする。情報の螺旋によって20世紀という物語を描く。
 
物語を描かないでで物語を描く。トリッキーな作品大好き人間にとってこれほど胸躍る手法はない。私が萩田さんの小説に感動したのもミッシェリーの生涯を再構成して記録として物語を構築しているからである。
今回の上演は、公社がやってみたかったレクチャーパフォーマンスの形式をとる。20世紀文化史の中のミッシェリーの生涯を解説。しかし、ミッシェリーの物語は一般的な物語異常に波乱万丈であり、それをさらに劇的に演出するのが公社流体力学である。世界一大きい声を出すレクチャーパフォーマンス、エンタメ魂のドキュメンタリー。

どんなフィクションよりも劇的な実話

 そういう意味ではドキュメンタリー映画からの影響もあるだろう。世界一大好きなドキュメンタリー映画こと『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』
バンクシーが監督したこの映画は、バンクシーの記録映像を獲っている男が徐々に暴走をし始め逆にバンクシーが彼の記録映像を撮り始める。そして男の暴走は誰も想像できなかった結末に至る。面白いドキュメンタリーは数あれどラストで大爆笑したドキュメンタリー映画はこれしかない。

 
面白い実話だと『マン・オン・ザ・ムーン』も大好きさ。
80年代の伝説のパフォーマー、アンディ・カウフマン。プレスリーのモノマネやキャラコントでコメディアンとして人気を得るが、お客さんを無視して「グレートギャッツビー」の朗読を始めたり、わざと全米を怒らせて嫌われ者になった後アンディ・カウフマンを嫌っている視聴者とレスリング対決をしたり、滅茶苦茶な事ばかり繰り広げる。彼の人生を、名匠ミロス・フォアマン(『カッコーの巣の上で』『アマデウス』)が監督し、ジム・キャリーが最高のパフォーマンスで演じる。
波乱万丈の生涯はどんな映画よりも映画的。
 
ということでどんな演劇よりも劇的な人生を是非ともご覧になってほしい。

21世紀アニメ暗黒の金字塔に捧ぐ

 あと、ちょびっとだけ意識しているのは『喰霊‐零』のサスペンス。
 2008年に放送されたこのアニメは、天才退魔師の少女と彼女を姉と慕う少女の友情を描いた作品。
 なのだが、第1話でこの退魔師の少女が人々を殺戮する。そして2話で時代が過去にさかのぼりそこで上記の友情物語でつづられる。どんなに平和的なシーンでも、退魔師の少女が人々を救っても、視聴者は辿り着く先が殺戮であることを知っている。なぜ、慕われていた少女は破滅してしまったのか。じっくり描かれて全貌が明らかになる悲劇。21世紀の日本アニメに燦然と輝く暗黒の金字塔。
 そして、その構造はこのミッシェリーにも生かされている。何故魔法使いと呼ばれ時代の寵児になったミッシェリーは立てこもり事件を起こしたのか。
 寵児と事件を結ぶ線は一体何なのか。是非ともそれもお楽しみに。

最後のご挨拶

さて、原作は短い。そこで不安なのが、結局小説とおんなじ内容をただ棒立ちで喋るだけなら見たくないなぁという思いだ。
 でも安心してほしい。確かに、原作はあるがそれに上記作品からの影響をぶち込み公社リミックスとして仕立て上げた。というか、ミッシェリーの伝記小説として書かれた原作に対して、演劇史エンターテイメントとしてミッシェリー以外の要素も山盛りで含んでその中のミッシェリーを描く。
シンプルに内容が面白い原作と、トッピング全のせフラペチーノの劇場版。
読んでから見るか、見てから読むか。
どちらにも耐えうる最高の原作、最高の公社流体力学。どうぞよろしく、
 
『ミッシェリーの魔法‐1928年、ラジオジャック‐』
5/14、6/3、6/10
(会場:インストールの途中だビル401号室 インストジオ)
各、14時・18時30分開演(開場受付は30分前)
料金2000円
5/14回は昼夜両方、初日割で1000円。
6/3の14時回はアフタートークで萩田&公社
 
上演時間1時間30分(にしたいけどどうだろう。縮むことはあるかもしれんが)
予約

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?