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第2回公社流体力学賞(という名前の観劇ベスト5)


まぁ観劇年間ベスト1を決めようというよくあるあれなんだけどあまりにも好きな演劇が賞と縁遠いので私があげてやろうじゃあないかという奴です。お遊びですね。去年のは↓

以下ノミネート作品という名の年間ベスト5。ちょっとした文章書くけど以前書いた記事や観劇直後のツイートを貼るんで短めにね。

ノミネート①
東京にこにこちゃん『ラストダンスが悲しいのはイヤッッッ!』

会場:荻窪小劇場 ・ 公演日程;1月16~19日
作・演出 : 萩田頌豊与

 近いうちに死んでしまう女の子が理想の葬式にしようとするが、様々な人の思いが交差して滅茶苦茶になるコメディ。
 イカレたやつらばっかり出てきて、次から次へとオフビートな笑いがやってくる終活コメディ。
死という物を扱っているからか不謹慎な笑いが連発だが最後は美しく終わる。愛らしい作品。脚本は勿論、演出の馬鹿馬鹿しさ・ラストの強烈な盛り上げが決まった。
 今ウェルメイドをする劇団の中で1番勢いがある。まぁナンセンスに片足ツッコんでる気もするけど。

ノミネート②
ゆうめい『俺』

会場:こまばアゴラ劇場 ・ 公演日程:3月4日~16日
作・演出:池田 亮

 過去3作を上演する企画、「ゆうめいの座標軸」で上演した中の1本。2015年の旗揚げ公演を再々演、しかも2人芝居を1人芝居に書き直した上演。かつて配信アプリで知り合った男から聞いた半生。それに感動した男はその話を今この場で再現するという。そうして演じられるのは七転八倒、地獄のような人生。友人、クラスメイトの女子、暴力的な兄、微妙な関係の母親、そして炎上している俺の物語。
 どこまでもヘビーな内容を、勢いのある馬鹿馬鹿しさ、アニメへの愛情、配信アプリ、MISIAの「Everything」等によってPOPなエンタメに磨き上げている。それを乗りこなす田中祐希の必死の演技。
 今、特に勢いのある劇団の本領を観た。
 ストパン本編10年ぶりの新作TVシリーズ『ROAD to BERLIN』が放送された2020年にふさわしいストパン演劇。ただ、夢小説嫌いにはキツイ、そういう内容。

ノミネート③
盛夏火『ウィッチ・キャスティング』

会場:某団地の一室 ・ 公演日程:3月20日~22日
作・演出:金内建樹
 とある団地で次々起こる怪奇現象に対して、住民は自警団の結成をする。そんな彼らがやがて世界をまきこむ巨大な禍に立ち向かうことになる。
 主宰である金内建樹の自宅である団地の一室で行う団地演劇専門劇団。団地の一室というシチュエーションが限られてしまいそうな中で次々と愉快なアイデアで世界へ連れていく。ホラーの中に様々な作品をサンプリングして、その上に物語を築く。
 この作品の中でもおびただしい量のアイデアが使われるが、他の作品でもマンネリと縁遠い新鮮な作品ばかり作る。恐らく今最も才能のある演出家は金内建樹である。


ノミネート④
昼寝企画『万物流転モラトリアム如来大卍』

会場:阿佐ヶ谷アートスペースプロット ・ 公演日程:10月24日~25日
脚本・演出:佐藤昼寝
 軋轢のある姉妹、働かない彼氏に悩む彼女、焼鳥屋。色んな人の物語が積み重なり姿を現すのは世界を救う鍵となる大卍の物語。
 意味不明なタイトルがあらすじそのものになっているという異様な作品。ナンセンスな事ばっかり起きるが最終的には、家族と個人の物語となる。
 竹内銃一郎で旗揚げし、これが2回目の公演である。2回目でここまで強烈な作品が出来るなんて、次回以降が楽しみ。



ノミネート⑤
劇団「地蔵中毒」『おめかし、鉄下駄、総本山~削ればカビも大丈夫(村の掟全無視バージョン)』

会場:駅前劇場 ・ 公演日程:11月12日~15日 
作・演出:大谷皿屋敷
 惨劇が起きた村の旅館に集まる訳アリの男女。SEXばかり考えているサークル。イルカになった母親を探すテニスコートの神谷さん。それはやがて3年に1回御開帳される御神体へと繋がっていく。
 下北初進出作品は最高傑作。いつも通りの荒々しいナンセンス、いつも通りの荒々しい演出。でもただの荒々しさではなく、洗練された荒々しさなのだ。
 いつも通りハイレベルな小道具に加え舞台装置が豪華になっている。そして物語の強度が強くなっており、演劇らしさが高い物になっている。だが、結局何をやりたかったのかは一切分からない。流石だ!俺たちの地蔵中毒が進化しまくっているぜ。
 いつものメンバーは全力の大暴れを見せ、客演も大暴走。テニスコートの神谷さんを演じる神谷圭介(テニスコート)は勿論、映像参加となったうちやまきよつぐ(演劇らぼ・狼たちの教室)の素朴さと狂気が同居する姿もインパクト抜群。


見事に4月から9月の演劇が空っぽですね。そりゃ自粛してるんだから当たり前だ。最低1ヶ月に1回は演劇を観ていたのに何か月も劇場へ行けなくなる日々になるとは。
 劇場に行けない代わりに劇場公演の演劇の配信や、ZOOM演劇も観たりしたが演劇は空間芸術だと思っているのでピンとこない物ばかり。
 演劇の配信ではゴキブリコンビナートがDVD発売前の過去公演3本『何も言えなくて…唖』、『瘋癲老人日記 〜俺の名はアポトーシスの巻』、『ナラク』を配信。映像を超える存在感は流石ゴキブリ。
 新作だとダムタイプ『2020』が素晴らしい。巨大な穴を中心に次々と変わる風景。巨大な振り子や巨大な四角で顔の隠れたダンサー。アンソロジーのような印象で飽きさせない。2002年の「Voyage」からの引用でファンに目配せ。
 ZOOM演劇も結局映画『アンフレンデッド』の方が面白いとなってしまう中で、東京03『隔たってるね。』は圧倒的だった。ZOOMという空間を使った演劇であれこそZOOM演劇だと感じた。『未開の議場-オンライン版-』『12人の優しい日本人』は、元々評価の高い傑作戯曲に豪華な実力派メンバーによる夢の作品。とまぁ、映像の感想はこんなもんか。

 観ている本数は少なかったけれど、それでも年間ベスト5を選べるくらい面白い物に出会えた。去年に続き、オルギア視聴覚室系が3つでありやはり私の好みを体現しているのがオルギア視聴覚室なのだなと思う。その中で、人気急上昇中のゆうめい、タイトルの長さが気になって観たら大当たりだった昼寝企画とオルギア以外の楽しい出会いもあったので良かった。まぁ作品傾向はナンセンスばっかりだけどさ。これでも、ちゃんとシェイクスピアとか見てるんだぜ、本当だぜ。でも好きなの選んだらこうなっちゃうんだよ。
 
さて、余談だけど昨年は短編演劇のコーナーがあったのだが今年はほぼ見れなかったのでやらない。でも、今年観た短編ベストだけ書くと、
中陣剛佑『変態2020』(三六闇市内で上演)である。

演劇クロスレビューという企画を始めたので来年以降もっと新たな出会いに期待したい。
 

 今年はどれに受賞するか非常に悩ましい。愛らしさか、パワフルさか、才能か、新たな出会いか、暴力か。どこを評価すべきか。

という訳で第2回公社流体力学賞は

東京にこにこちゃん『ラストダンスが悲しいのはイヤッッッ!』

貰ったって何にもならないけど。そういうお遊びなので。

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