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【Eat It】(1973) Humble Pie 全盛期に見せたブラックミュージックへの直截なアプローチ

ハンブル・パイが大好きなんです〜。そもそもの出合いは名盤【スモーキン】なのですが昔ストーンズ狂だった私にバイト先の先輩が教えてくれてどハマり。

音楽マニアの方は、人生の中で何度か運命的な出会いのアーティストがあるかと思いますが、私にとってはハンブル・パイはそんな存在でした。

スティーヴ・マリオットの黒人顔負けのボーカルとハードで泥臭いサウンドに心底惚れてしまい、彼らのアルバムなら全部揃えたい、名盤も愚作も全て清濁併せ呑んでやろう!という気持ちにさせられましたね〜。

そのハンブル・パイは、ギタリストがピーター・フランプトンから元コロシアムのデイヴ・クレムソンに交代して発表した【スモーキン】(72年)から最盛期へ突入。同時にマリオットの専制化が始まるのですが、そんな最高潮の時期に発表したのが本作【イート・イット】これもまた良い作品なのです!

とは言え【スモーキン】の続編ではなく、実は肩透かし。バンドの勢いに便乗したマリオットがレコード2枚組に渡ってやりたいようにやったような作品なのです。

本作より黒人女性3人によるコーラス隊、ブラックベリーズも参加。ツアーにも帯同させるなど、この時期はマリオットのブラックミュージックへの傾倒が露骨になります。

・英米盤アナログレコード

(米国盤レコード)

こちら米国盤のジャケット。
カラフルな配色でパイのアルバムの中でも最も派手なデザイン。

ダブルジャケットを広げると各クレジットとライブ写真が掲載。

ホントはここにブックレットが綴られており

このブックレット、中古盤は大体ジャケット本体
から外れてます。

このブックレットを広げると…

当時のバンドの勢いそのままに、20ページに渡ってメンバーのイラストや写真が載った豪華な仕様となっております。

キングレコードの日本初回盤には、更に大貫憲章氏の渾身のライナーノーツも付くので通常の2枚組以上の重量感があります〜。

米国盤レーベルです。私のはプロモーション盤で白色。A&Mレコード発売。

初回盤はブラウン色(1973年途中まで使用)ですが、これは市場に出る前のプロモ盤で白色です。放送局や関係者用に先行してプレスされるので良音とも言われます。

内周部には名匠エンジニア"pecko" "porky" の刻印も確認。私が所有する英・米・日盤の中でも1番音圧があります。とは言え、このアルバムは音が結構モコモコして酷いんです。CDで聴いた方がいいかもしれません(笑)

昔読んだデイヴ・クレムソンのインタビューによれば、本作は当時出来たばかりのマリオットのホームスタジオで録音。ヤリたい放題の上にスタジオ音響も悪かったそうです。確かに音質のバラツキも感じます。

(英国盤レコード)

マトリックスは4面全て1でした。

一方こちら本国英国盤。
ハンブル・パイの英国盤は割合どれもベース音が際立つのですが、本作はボーカルや他の楽器が引っ込んでバランスがイマイチ。音圧も力不足。

米プロモ盤と全く同様に"pecko" "porky" の刻印があるので、もしやスタンパーは同じなのかもしれません。この頃のパイは米国は主戦場だったので、あるいは米盤がオリジナルではないかと私は勘繰っております。


Side-A
①"Get Down to It" (Marriott) – 3:25
②"Good Booze and Bad Women" (Marriott) – 3:11
③"Is It for Love?" (Marriott) – 4:39
④"Drugstore Cowboy" (Marriott) – 5:35

Side-B
①"Black Coffee" (Ike Turner, Tina Turner) – 3:09
②"I Believe to My Soul" (Ray Charles) – 4:03 ③"Shut up and Don't Interrupt Me" (Johnny Bristol, Edwin Starr) – 2:58
④"That's How Strong My Love Is" (Roosevelt Jamison) – 3:44

Side-C
①"Say No More" (Marriott) – 1:58
②"Oh, Bella (All That's Hers)" (Marriott) – 3:25
③"Summer Song" (Marriott) – 2:42 ④"Beckton Dumps" (Marriott) – 3:13

Side-D
①"Up Our Sleeve" (Humble Pie, lyrics by Steve Marriott) – 4:57
②"Honky Tonk Women" (Keith Richards, Mick Jagger) – 4:03
③"Road Runner" (Eddie Holland, Lamont Dozier, Brian Holland) – 13:30

A-①"Get Down to It"

この1曲目が最高!本作のベストチューン!!
マリオットの黒いボーカルと本人が弾くオルガンが目茶苦茶クールでソウルフル!
ブラックベリーズのコーラスも加わって、より黒く変貌したハンブル・パイです。とにかく痺れる曲です〜。タマりません(^^)

このA面はマリオットの自作によるロックナンバーが並ぶサイド。
ハード、スロー共に泥臭いブリティッシュ・ロックがカッコいいです!

B-①"Black Coffee"

アイク&ティナ・ターナーのR&Bカバー。
本作はこのB面こそが1番濃いエッセンス!
ブラックミュージックへの憧れが爆発した、ハードロックとは程遠いマリオットの独壇場!黒人なりきり大会です。渋すぎる歌唱と演奏がジワジワと染みます。

こちらBBCスタジオライブの映像。これ良く観ました。スタジオ盤以上にマリオットとブラックベリーズの掛け合いがムード満点!
ドス黒い雰囲気に引き込まれます〜。

B面は他にレイ・チャールズやオーティス・レディングで有名なR&Bナンバーを収録。
ソウル・レビュー風で渋いノドを楽しむべきサイドとなっております。

C-②"Oh, Bella (All That's Hers)" 

C面は一転マリオットのペンによるアコースティックナンバーが中心。ソフトでメランコリックな感触がピーター・フランプトンのいた頃を彷彿とさせます。マリオットの多面性が垣間見えますね。

中でもスティールギターの音色がカントリーフレイヴァーを運んでくるこの曲、なかなかの味わいです。レイドバックしたユルいサウンドに身を委ねていたいです。

D-②"Honky Tonk Women" 

そしてD面はデイヴ・クレムソン加入後の新生パイのグラスゴーでのライブ音源3曲。
どれもゴリ押しのハードサウンドが楽しめますが、音が悪いのが残念。そんな中からやはり有名曲カバーのこちらを。
マリオットの客を煽りまくるMCに導かれてストーンズ・クラシックのハードロックバージョンが炸裂!スゴい熱量です〜。
同じ頃のライブ映像。これもスゴいですね。


飛ぶ鳥落とす勢いだったハンブル・パイはこの年の5月に来日。同時期に来たベック、ボガート&アピスに話題を持って行かれたとも言われますが、音楽評論家の湯川れい子さんなどがツェッペリンの次に良かったと大絶賛する話も聞きます。やはり全盛期のステージは圧巻だったようです。

私が知る東京・町田市のロックバー「ヘブンズ・ドア」のマスターは、何と渋谷公会堂のステージを観たらしく、当日最前列で大騒ぎしていたら、ブラックベリーズに指を差されそれを見たマリオットが駆け寄って握手をしてくれたそうなのです!何と!羨ましい〜!!
以来、私は神の手と称して何度も握らせて頂きました(笑)

ハンブル・パイの話、長くなるので続きはまたいつか(^^)/

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