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【Straight Shooter】【Passin' Thru'】(1972) James Gang 〜ドミニク・トライアーノが在籍した第2期ジェイムス・ギャング

アメリカン・ハードロック・シーンで人気のあったジェイムス・ギャング。
後にイーグルスのメンバーとなる、初代ギター兼ボーカルのジョー・ウォルシュが在籍した時代こそ有名ですが、その後は商業的に低調だったこともありマイナーな存在になってしまいました。

ジム・フォックス(Dr)、デイル・ピーターズ(B)の2人が、その時々で才能あるメンバーを迎えて、音楽性もコロコロと変えながら、しぶとく活動を続けた姿はなかなかユニーク。私は好きなんです(^^)

昨年はトミー・ボーリンがいた第3期ジェイムス・ギャングの作品を取り上げましたが、今回は第2期です。カナダ人ギタリスト、ドミニク・トライアーノらが参加した2作品を紹介します〜。

ジョー・ウォルシュがジェイムス・ギャングを脱退したのが1971年。3枚のスタジオ作品と1枚のライヴ盤を残して、セールス的に最も恵まれた時代は幕を閉じます。

残された2人はこの後、何と無名バンドと合流。カナダ出身でアルバム1枚のみで解散の憂き目に遭っていたBush(ブッシュ)なるバンドのロイ・ケナー(Vo)、ドミニク・トライアーノ(Gt)の2人を迎え入れることになります。

この辺りの細かい経緯は全く不明なのですが(情報が無さすぎます…)、理由の1つとしてBush作品の米国配給がジェイムス・ギャングと同じくABC-ダンヒルレコード系列だったこともあったかと思われます。因みにBushの楽曲はスリー・ドッグ・ナイトやJ.ガイルズ・バンドにもカバーされており、業界内では多少話題のバンドだったようです。

何はともあれ、ジェイムス・ギャングは専任ボーカリストを立てた初のカルテット編成に増員。きっとジョー・ウォルシュの役は荷が重過ぎるという判断もあったのでしょう。

この第2期のメンバーでは2枚の作品を発表。基本的に泥臭いアメリカンロックを聴かせています。ウォルシュの時のようなブリティッシュ風情もなければ、後のトミー・ボーリンの器用な音作りも無し。あくまで直球勝負のサウンドというのがこれまた潔いです。

リズムセクションの2人にとっては、ここは新メンバーの才能に賭けて、思い切った軌道修正もアリだろう、なんて感じだったのかもしれません??(多分)。

左からジム・フォックス(Dr)、デイル・ピーターズ(B)、ドミニク・トライアーノ(G)、ロイ・ケナー(Vo)


【Straight Shooter】(1972)

第2期ジェイムス・ギャングの1作目。1972年5月発表。カナダ人の2人が主導権を握り、先代とは打って変わって、泥臭くファンキーで武骨な音に。長閑なアコースティック曲も良い味わい。全米58位。 
ジャケットは表裏ともエンボス加工。
彫金のような美しい仕上がりです。
ABCレコードの米国盤。プロデュースもジェイムス・ギャング。日本は東芝音楽工業から発売。        


All tracks by Roy Kenner & Domenic Troiano, except A-③⑤, B-①②③

Side-A

①"Madness" 3:13
ドラムのジム・フォックス曰く、新加入のトライアーノに何か曲はないか?と尋ねた所、彼が披露したのがこの曲だったそうです。
エッジの立ったギターワーク、ロイ・ケナーのネチっこいボーカル。次の2曲目とメドレーで繋がる、泥臭さくファンキーでこの時期のバンドを象徴する1曲です!


②"Kick Back Man" 4:51
③"Get Her Back Again" (Troiano) 2:45
④"Looking for My Lady" 2:53

⑤"Getting Old" (Troiano) 3:43
ドミニク・トライアーノは、同年ソロとしてもマーキュリー・レコードからデビューしており、恐らくジェイムス・ギャングとしての活動は割り切っていたものと思われます。
こちらはトライアーノ本人による歌、ギターとストリングスのみを配したバラード。彼のメランコリックな趣味が出ています。

Side-B

①"I'll Tell You Why" (Peters, Troiano) 3:53
②"Hairy Hypochondriac" (Kenner, Peters, Troiano) 2:57
③"Let Me Come Home" (Peters, Troiano) 4:59

④"My Door Is Open" 5:55
本作の中ではヘヴィーな楽曲。骨太なベースラインがリードする重量感あるハードロックです。この時代らしい音で好きです。



【Passin' Thru'】(1972) 

1972年10月発表の2作目。どちらもナッシュビル録音ですが、よりプロデュースされた内容。現地ミュージシャンによる鍵盤楽器、ストリングスなどが新味。曲もポップな側面でています。全米72位。  
発表前の1972年9月には初来日!
ウォルシュ時代から所属したABCレコード最後の
作品となります。


All tracks by Roy Kenner & Domenic Troiano, except A-②④, B-②③

Side-A

①"Ain't Seen Nothing Yet"  2:59
②"One Way Street" (Domenic Troiano)  4:36

③"Had Enough"  3:00
2作目もファンキーなロック色が主体。トライアーノは何が何でもギターを16分を刻むのが癖のようです(笑)。トレモロの効いたギターに多少ライトな歌メロ。サビではオルガンも登場してウォルシュ時代の雰囲気も。

④"Up to Yourself" (Troiano)  2:43

⑤"Everybody Needs a Hero"  6:06
これはちょっと毛色の違うタイプ。でもこの曲にはかなりセンスを感じますね〜。
当時のニュー・ソウルの影響を窺わせる黒いグルーヴのニュアンス。歌メロ、コーラス、演奏も光ってます。 こんな引き出しがあったとは。現地ナッシュビルのミュージシャンも好サポート。後半のクラビネットとギターの掛け合いも熱いですね〜。隠れ名曲。


Side-B

①"Run Run Run"  3:44
②"Things I Want to Say to You" (Troiano) 3:41
③"Out of Control" (Troiano)  3:39

④"Drifting Girl"  5:09
B面はアコースティック調が並びます。ラストはクラシック風の爪弾きイントロがお洒落なミディアムバラード。爽やかな曲調でピアノやストリングスが優美な彩り。おおらかなメロディに癒やされます。


ジェイムス・ギャングが最もアメリカンロックらしかったのはこの時期だったんじゃないかと思います。当時はキャッチーな曲作りが及ばず、先代と比較されたかもしれませんが泥臭く生っぽい音も結構捨て難いんですよね。

1年足らずの活動で、ドミニク・トライアーノは脱退。地元カナダに戻ってゲス・フーに参加します。翌年ジョー・ウォルシュの推薦でバンドにはスーパーギタリスト、トミー・ボーリンが加入。ジェイムス・ギャングの歴史はまだまだ続いていきます!!

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