【Ziggy Stardust】(1972) David Bowie 美しき異星人による華麗なロックアルバム
グラムロックのスターとして彗星の如く登場したデビッド・ボウイ。本作【ジギー・スターダスト】は彼の出世作というだけでなく、いまやロック史の金字塔の1つとされる作品です。1年ほど前にこんな事がありました。
長く通う中古レコード屋(個人店)で本作を見つけたので、私が手元に置きながらレコードを漁っていると、後客に大学生くらいの若者男女3人が入店してきました。
アナログブームなんだなぁと実感していると程なくしてこの内の女の子が私の手元に気いたようで、
「あっ!デビッド・ボウイだぁ!」と素っ頓狂な声を上げたのです。さらに続けて、
「◯子が好きなんだよなぁ」と男子A
「あいつ探してたよ」と男子B。
うむ、やはりデビッド・ボウイは若い子に人気なんですね〜。
暫くすると、また1人来店。何と噂の◯子さんが入店して来たのです。間もなく当然の如く私の手元をロックオン。
「アッ〜!!ジギー・スターダストだぁ!」
……………………………………………………
皆さん、ここまで言われてシレッと買って帰れますか?(笑) よく知る店主にも顔で合図され、私も持ってる盤なので特に未練もなく宜しければどうぞ〜、と譲ることにしました。すると、
「いいんですかあァァァァ??!!」
相当に喜んでおりました、◯子さん。他の3人にもまるで命の恩人みたいに頭を下げられてしまう始末。ちょっと恥ずかしいような嬉しいような気分で店を後にしたのでした。
いやはや、Z世代にもジギー・スターダストは凄まじい人気なのですね〜。
私は中学時代、深夜のテレビで観たグラム時代の "Ziggy Stardust" のワンシーンがほぼボウイの初体験。当時は映画《戦場のメリークリスマス》で名前と顔を知る程度の知識だったので、あの派手なメイクアップと奇抜な衣装を纏った、眉毛のないデビッド・ボウイを観た時はかなりの衝撃でしたね。
ちょうど親友が本作をレコードで買ったというので聴かせてもらいましたが、これが期待ハズレ…。意外とデビッド・ボウイって内省的なんだなと思ったのが第一印象です。
実は私、それ以来本作をそこまで好きという訳ではないのです……💦 (A面が地味。次の【アラジン・セイン】の方が好き)
でも最近、本作を聴き返してみて、なるほどよく計算されたアルバムなのだと気が付きました。
前半はアコースティックな楽曲に、バンド、ストリングスの演奏を加えた奥行きのあるロック・オペラ的な佇まい。後半は自身のバンドであるスパイダーズ・フロム・マーズを前面に押し出したエレクトリックなR&Rでノセてしまう……なかなか練られた楽曲の配置です。1枚を通してコンセプト作品らしい流れは確かに芸術的です。
異星からやって来たロックスター・ジギーという設定など、ボウイはロックに演劇の要素を持ち込みましたが、その魅力が最大限に発揮されたアルバムでしょう。
(アナログレコード探訪)
〜各国、各時代の盤あれこれ〜
今回は本作のアナログ盤を色々と集めてみました。各プレスでどのように音が違うのか比べてみました。
人気の初期盤は時価で数万円という英国盤。とても買う気になれません。これは再発盤。それでも雑味がなくキメの細かい音でした。歌も楽器も自然な鳴りでよく響きます。英国盤は再発でもクオリティが高いことがよく分ります。
続いて日本盤。ご厚意でお借りしました。実は冒頭の話で、私が◯子さんに譲ったのがこの盤でした。
聴いてみると、日本盤にしてはやけに上ずった音なのです。米国盤によくある傾向の音ですが、これ、盤面にちょっと気になる点がありました。
レコード内周部に、日本盤では先ずあり得ない手書きの刻印があるのです。刻まれた品番は日本初回盤。ただし日本製品を証明するJISマークがないんです。日本ビクター盤では初めて見ました。
これ、もしや米国が日本向けに作ったスタンパーを元に刷った盤ではないかと想像しています。であれば音にも納得がいきます。
時代は移って、90年にデビッド・ボウイの旧カタログをリマスターしたRYKO盤。SOUND+VISIONシリーズとしても知られ、当時はボーナストラックも付いて大々的にCD化。私もこれでボウイを聴きました。その貴重なアナログ盤なのですが…うむ〜デジタル化が盛んだった時代らしい派手な音なのが気になります。芯がなく音がキンキンした印象です。
最後は近年の再発盤。ボウイ存命の最期の頃に出たリイシュー盤です。RYKO盤に比べれば音質も落ち着いて低音が復活。英国盤に近いニュアンスですが、歌も楽器も鳴り方は別物ですね。デジタルリマスターらしい音の太さ。これが現況の音なのでしょう。
こうしてレコードも比べてみるとジギーの音質も色々と違いがあるようで興味深いです。
Side-A
③"Moonage Daydream"
フォークを基調にした曲が続くA面で、ロックオペラ的な世界を体現しているのがこちら。アコースティック主体ながらスケール感あるメロディとアレンジで聴かせます。
当時のボウイの右腕ミック・ロンソンはギター、ピアノ、ストリングスのアレンジと大活躍。2人が思い描くSF的なロックサウンドといったイメージです。
④"Starman"
ボウイが12弦ギターで弾き語る代表曲。ボブ・ディランのようなフォークスタイルだったデビュー初期の頃を匂わせる一曲です。端正なメロディ作りも冴えてます。
Side-B
①"Lady Stardust"
B面が私は圧倒的に好きなのですが、これはピアノをバックに切々と歌うボウイの傑作。美しい旋律、凛とした佇まいが圧巻です。ボウイが既に単なるグラムスターではなく、類まれなメロディメイカーだったことを証明していますね。
②"Star"
ここから一転、ロックンロール4連発。とにかく気持ちいいカッコいい!ギンギンでノリノリのロックンロール大会です。ボウイの歌もミック・ロンソンのギター、ピアノもアクセル全開。バンドの演奏も結構上手い。
④"Ziggy Stardust"
そして本作の表題曲、ボウイの全キャリアでも代表する一曲です。イントロのギターから鳥肌モノ。曲の構成もよく出来たこれぞ名曲ですね。異星人ジギーというキャラクターの存在感は、アルバムのコンセプトなど解らなくても、このライブ映像が全てを語っていますね。
⑤"Suffragette City"
もう一つロックンロールを。ストレートに邁進するノリはパンクっぽくもあります。
ロックオペラ風な本作は、静かで熱い次曲の"Rock 'n' Roll Suicide" で幕を引きます…。
本作はボウイの中でも特別に華のある作品ですね。計算された内容、コンセプト、楽曲などすべてが1つになった磁力を感じます。
ボウイは星に還ってしまったけれど、作品は時代を超えて残っていくでしょう。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?