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【Against the Grain】(1975) Rory Gallagher ロリーのハードロック倍増計画!

常にステージでは全力投球、熱きアイリッシュハートを持ったギタリスト、ロリー・ギャラガー。
私が彼の魅力にハマったのは、西新宿で手に入れた海賊版ビデオの映像でした。英国BBCの音楽番組《オールド・グレイ・ホイッスル・テスト》に出演した1975年のロリー・ギャラガー。曲はサム&デイヴの"I Take What I Want" 。ロックに決めまくります!

私、ロリーは大好きなのですが、特に好んで聴くのが70年代中盤の作品です。ブルースロックのイメージが強いかと思いますが、この時期は寧ろハードロッカーの佇まい。本作【アゲインスト・ザ・グレイン】も私が推したい作品の1枚ですね〜。

何とも味のあるジャケットは、ロリーの代名詞と言われた塗装がボロボロに剥げたストラトキャスター。本作は通算7作目。テイスト時代から所属したポリドール・レコードを離れてクリサリスに移籍した1作目に当たります。

ソロ転向後、少しずつサウンドにバリエーションを持たせてきたロリーですが、本作ではギターが歪んだ音へと変化しており、明らかにハードロック系の音へのシフトを感じますね。ギターアンプも変えたのかもしれません。またアメリカナイズされた曲作りが目立つのも大きな特徴。ストレートな8ビートの曲が増えて、よりキャッチーなフレーズを意識した作風となっています。

欧州では人気が高いのに、アメリカでの知名度はまだまだだったロリー。でも本作からはハッキリとアメリカに進出していこうとする気迫が感じられますね。作風を広めながらオリジナリティを探っていたロリーの重要作の1つです。


(アナログレコード探訪)
〜没後に出た大胆なリマスター版CD〜

クリサリス・レコードの英国初期盤
マト4/4

ロリー・ギャラガーの実弟にドネル・ギャラガーという人物がいます。生前、ソロ時代のマネージャーを務めた人です。
ロリーが亡くなった1995年以降、次々と過去作品のリマスター版、未発表曲集、未発表ライブ、新規ベスト盤など発表されましたが、これら全てを監修したのがドネルです。
新規ファンにアピールしようと、ひたむきな兄への想いが伝わってくるシリーズなのですが、ちょっとこれはやり過ぎでは??と思ったのが本作です。

(左)93年発売の日本盤CD(アルファ)
(右)99年発売の日本盤リマスターCD(BMGジャパン)

ロリー存命中に出た(左)は上記のオリジナル英国盤と全く同じ内容ですが、ドネル監修の(右)は、先ずジャケットが大幅に変更。中身も全曲でギターorボーカルが差し替えられ、ミックスも異なり、ほぼオルタネイト版の様相。シリーズでも本作だけの処置です。
ラフなライブ感を出して現代版に更新しようとの意図を感じますが、正規盤に馴染んだ耳には違和感アリアリ…💦

ロリーは音源管理に厳しく、亡くなる前の遺言にリマスターの際の指示を書き残していたとも伝え聞きます。もしやロリーの指示なのか?ドネルが勝手にやったのか?いずれにしても別物として扱いたい謎のリイシュー版です。


Side-A
②"Cross Me Off Your List"

Jazzyなドラムに16ビートのギターカッティングが絡みつく新境地。ロリーが珍しくファンクに挑戦した曲です。キレのあるビートではないですが、アレンジの妙味は今聴くとなかなか新鮮です。

④"Souped-Up Ford"

本作で随一のハードロッカーぶりを示すナンバー。私大好きな曲です。得意のスライド・ギターが歪んだ音で唸りを上げ、テンションも一段とアップ!ピアノも懸命のバッキングでサポートしてます。この時期のバンドの一体感を示す名演ですね。終盤はロリーのブルースハープも加わって暴走列車は過ぎ去ります…。

Side-B
④"Out on the Western Plain"

レッドベリーの曲をアレンジしたアコースティックナンバー。ロリーはアコギ捌きもまた素晴らしい。荒野を駆けるカウボーイが思い浮かびような朴訥としたプレイと歌い口にホロッときます。

⑤"At the Bottom"

全体に乾いたサウンドの本作。アルバムのラストはカントリーロック風なエッセンスを取り込んだミディアム曲です。ブルース・ロックからの脱皮と、ロリーには米国市場が狙いにあったのでしょう。

最後に本作のライナーにあったロリー・ギャラガーの誠実さを表すエピソードを。

70年代の来日時、女学生ファンが一目見ようと宿泊ホテルに押しかけ、階下の喫茶室を覗くと偶然ロリーがマネージャーと打ち合わせをしていました。少ししてロリーが1人になったので「お話させてもらっていいですか?」と尋ねると快く応対。約30分も相手をしてくれたそうです。では次の仕事があるからとロリーは立ち去り、暫し感激の余韻に浸った女学生が、さて自分の会計を済ませようとすると「先程の男性が支払われましたよ」。

ロリー、何という紳士!

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