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【Emotional Rescue】(1980) The Rolling Stones 絶好調ストーンズ、世紀の凡作??

ローリング・ストーンズの本作【エモーショナル・レスキュー】はかなり売れたことを御存知でしょうか?
昔、私はチャートが大好きでよく調べましたが、我が家にある全米ビルボード本に拠れば【ブラック・アンド・ブルー】(76年)は4週、【女たち】(78年)は2週、本作は何と7週!【刺青の男】(81年)に至っては9週!!、それぞれ1位を獲っているのです。パンク・ニューウェイヴの時代にもストーンズは絶好調。中でも本作はビッグヒットだったのです。

なのに、この存在感の薄さ…。思えば本作を高評価したレビューって読んだことがありません。前後の有名作に挟まった運の悪さなのか。ボブ・ディランの【ストリート・リーガル】のような立ち位置です…笑。
しかし、聴いてみれば特段悪くない。そんな可哀想な本作【エモレス】。今回は目一杯褒めちぎってあげたいと思います。出来るかな💦

本作の録音は1979年。ナッソー、パリ、ニューヨークと様々なスタジオでレコーディングされたとあります。私が昔読んだ解説には、たしか75曲を録音して選りすぐりの10曲を揃えたと書いてあったと記憶…。えっ??それでこのクオリティ!?  とはファンでも偽らざる本音です。でもストーンズというバンドは、ノッてる時に大量の曲を録音していくことで有名。創作意欲は旺盛だったんですよね。

私が思うに本作は、【ブラック・アンド・ブルー】【女たち】でストーンズが挑戦してきた音楽ジャンルの集大成だったと考えています。それぞれの曲に注目すれば、より磨きをかけて、複雑に味付けをまぶしたかなりハイセンスな音。過去のアップデイト版と言える楽曲も多いのです。
例えばディスコ路線なら「ミス・ユー」を先鋭的にしたイメージの "Dance (Pt. 1)" 。ラテン要素も加わって無茶苦茶カッコいい〜。


キース・リチャーズの大好きなレゲエをストーンズ流に仕立て直した"Send It to Me"、カントリー志向を覗かせる"Indian Girl"、パンキッシュ路線の"Where the Boys Go"、ブルース回帰も忘れない"Down in the Hole"……。
冒頭にアップビートな曲を置いて、最後はバラードで閉めるという各面の流れも、ストーンズにしては見事な計算高さ。非常にバラエティ豊富で、バランスの取れた作品です。

しかしながら、この抜け目の無さが仇となったのかもしれません。歴史的に見て、ストーンズ作品は凝ったものより少し位ラフな方がウケる傾向にあります。食べ物に喩えるなら、ジャガイモを食べるのにわざわざビシソワーズにしなくても、じゃがバターで十分というのが世間のストーンズ評。素材を活かした音が求められたのかもしれません。

とはいえ、そのまま捻らずやれば芸がない、やれマンネリだと言われる始末。流行を敏感に察知して、マーケティングも怠らない商売上手なミック・ジャガーですが、変わりゆく音楽シーンに対して、ストーンズを何処に着地させればいいのか…。この辺りからミックの苦悩が始まったように思います。


(アナログレコード探訪)
〜日本盤がオススメです〜

ストーンズ・レーベルの米国初回盤

本作の米国初盤はアトランティック配給。ストーンズがコロムビアに移籍する1983年まで続きます。
ジャケットはメンバーのサーモグラフィー画像。ストーンズは自信のないアルバムの時はメンバー写真をぼかすのかもしれません笑。

東芝EMIの日本初回盤

我が国ではストーンズレーベルの作品は1978年から東芝が発売。本作も初回は東芝です。前作【女たち】も良音ですが、本作も素晴らしい。米国盤と比べて奥行きがあって、各パートが明瞭、レンジの広い良音盤です。チェックしてみると…

日本盤の内周無音部「CUN−39111」

英国オリジナル盤の規格番号が刻印されていました(米オリジナル盤はCOC−16015)。
つまり本国英国から送られたコピーマスターからの日本プレス盤ということのようです。二束三文で投げ売りされてる中古の日本盤、買いですよ〜。

巨大ポスター

そして内容より知られている?かもしれないのが、封入の特大ポスター。
全長150センチ✕60センチ、所謂LPジャケット10枚分のサイズです。今回初めて広げてみましたが、両面20コの写真はすべてサーモグラフィー画像。有り難みは半減ですね…笑。


Side-A
③ "Send It to Me"

レゲエともスカとも取れるリズム。裏打ちビートに乗ってミックが歌うメロディも何処となくポップで洗練されています。ストーンズ流に消化したところが秀逸です。他ジャンルも自分達で料理してしまう貪欲な姿勢。彼等が老いない秘訣なのでしょう。

④ "Let Me Go"

ストーンズのR&Rナンバーには、上手く言えませんがスイングする?ような独特のノリがあって私は好きです。この曲はマンネリ路線と思わせて、軽やかに乗せてしまうグルーヴが気持ち良い。2人のギタリストも自由なプレイスペースがあって楽しそうです。
キース・リチャーズ曰く「みんなロックすることに一生懸命だけど、ロールすることが大切なんだよ」。金言。

⑤ "Indian Girl"

やや感傷的な雰囲気のカントリーバラード。とは言え直球のカントリーではなく、少し洗練されたアップデイト感が新味か。こうした試みは悪くはないと思うのですが…。

Side-B
③ "Emotional Rescue"

本作からの1stシングル。ミックのプリンスばりのファルセットが賛否を分けそうですが、これこそ「ミス・ユー」路線を深堀りした感じがします。ブラックソウルへの憧憬を深く感じる一曲です。

ミック、キースの御両人へ。そろそろ【エモレス】のデラックス・エディションを発表しませんか? 残りの65曲と言わないまでも、まだまだ沢山の未発表曲があるハズ。聴かせてくださいよ。そうでないと、いつまで経っても【ダーティ・ワーク】との不毛な最下位争いから抜け出せませんよ!


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