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【The Gilded Palace of Sin(黄金の城)】(1969) Flying Burrito Brothers グラム・パーソンズが描く米国ルーツ・ミュージック

カントリーロックの始祖とも評価されるグラム・パーソンズは今も人気の高いミュージシャンですね。
ストーンズファンの私は彼のバンド、フライング・ブリトゥ・ブラザーズ版「ワイルド・ホーシズ」(2作目に収録 )でその存在で知ったのですが、こちらの方が先のリリースと知った時は驚きました。

バーズ在籍時には、カントリーミュージックへの接近を主導して【ロデオの恋人】(68年)製作に大きく関わったグラム・パーソンズは、脱退後にメンバーのクリス・ヒルマンと意気投合してフライング・ブリトゥ・ブラザーズ(以下FBB)を結成します。

本作は彼らのデビュー作。発表当時は全く売れなかったようですが、グラムの優れた才能が光る名作です。

本作は何より楽曲が良いのです。
カバー曲が2曲ありますが、どちらもマッスルショールズにあるフェイム・スタジオゆかりの白人SSW、ダン・ペン、チップス・モーマン、スプーナー・オールダムといった手練れのサザン・ソウル名曲を選曲。

そしてグラム本人がメンバーらと書いたオリジナル曲が何とも絶品で、彼の曲作り、曲選びのセンスが充分にうかがえます。
これら楽曲が違和感なく並び、アルバム全体が淡い南部フレイバーに包み込まれるような空気感がとても魅惑的な内容です。

ちなみに本作では、カントリー系のバンジョー、フィドルといった楽器はなく、アコギ、スティール・ギター、鍵盤を中心としたシンプルなロックアレンジ。しかもあちらこちらでサイケな味付けが。

ちょっと地味な印象もありますが、この簡素なアレンジがかえって楽曲の良さ、歌唱を引き立てているようで個人的には好きです。

この当時のグラム・パーソンズは人脈も広がり、デラニー&ボニー等との相互影響を受けながら、カントリーに限定しない広い意味でのサザン・ミュージックを目指していたのかな、と私は本作を聴いていて感じますね。

(アナログレコード探訪)
〜曲エンディングに粗が見える本作〜

米国A&Mレコード(SP 3122)
シルバー色レーベルの再発盤(1973年以降のプレス)

私が持っているのはこの米国盤のみ。千円程で手に入れた再発盤ですが音は良好。音圧あってなかなかイイです。

ただアナログ盤で聴いていると残念な事を発見。
A面①②④の曲終わり箇所が、完全に音が消える前にブチッと切れてしまうのです。
昔のレコードにたまにありますが、何だか気になる雑なエンディング。

私のが再発盤だからかと思い、確認のためにCDで聴いてみると…何とCDはアナログ盤のほんの僅か直前で早めにフェイドアウトする編集なんですよね!
これってつまりマスターテープからの問題なのでしょうね〜。

プロデュース不足が一部指摘されてる本作ですが、こういう粗に気付いてしまうと製作環境はあまり良くなかったのかもしれません。

Side-A
①"Christine's Tune" (Gram Parsons, Chris Hillman) – 3:04
②"Sin City" (Hillman, Parsons) – 4:11
③"Do Right Woman" (Chips Moman, Dan Penn) – 3:56
④"Dark End of the Street" (Spooner Oldham, Penn) – 3:58
⑤"My Uncle" (Parsons, Hillman) – 2:37

Side-B
①"Wheels" (Hillman, Parsons) – 3:04
②"Juanita" (Hillman, Parsons) – 2:31
③"Hot Burrito #1" (Chris Ethridge, Parsons) – 3:40
④"Hot Burrito #2" (Ethridge, Parsons) – 3:19
⑤"Do You Know How It Feels" (Parsons, Barry Goldberg) – 2:09
⑥"Hippie Boy" (Hillman, Parsons) – 4:55

A-①"Christine's Tune" 
本作の軸となるグラムとクリスのデュエットによる軽快なロックナンバー。スニーキー・ピートのファズを効かせたスティール・ギターがサイケデリックに暴れてます。

A-②"Sin City"  
2人の共作によるカントリー・ワルツ。後にエミルー・ハリスもカバーしています。名曲ですね。ハーモニーが美しい。染みます。
ここではナチュラルなスティール・ギターの音色が切なく響いています。

④"Dark End of the Street" 
サザン・ソウルの古典。私はライ・クーダーのバージョンから知りました。FBB版はなかなかの名唱、名演です。この南部が醸し出すゆったりとした空気が切なく胸を打ちます。

B-③"Hot Burrito #1" 
グラムがベーシストのクリス・エスリッジと書いた屈指のラブ・バラード。甘く、切ないロマンチックなメロディに卓越したソングライティングの才能を感じます。
残された映像を観ると、グラムはなかなかロックスターを気取ってますね〜。

B-④"Hot Burrito #2"
こちらも前曲と同じ2人の共作。グラムのセンスを感じる一曲。良い曲書きますね〜。
サイケ的なオルガンとファズギターの響きが聞き手を幻想の世界へ導いていきます。


本作の後にグラム・パーソンズ在籍中のFFBはもう1枚発表しますが、出来栄えは圧倒的にこちら。生前のグラム関連作品としても、荒削りながら随所に才能を感じる最高の内容だと思います。

しかし2ndを発表して脱退。真相はクビだったらしく、繊細でありながらグラムって結構気まぐれな性格だったのかもしれません。
才能はあるのに、快楽的で奔放すぎたことが災い、短命で終わったことが惜しまれます。

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