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Peter Frampton初期3作品 【Frampton Comes Alive!】ブレイク前に歩んだ紆余曲折

ピーター・フランプトンを御存知でしょうか?1976年にライヴ盤【フランプトン・カムズ・アライヴ!】の大ヒットで一躍スターダムに駆け上がった英国のロックミュージシャンです。
私は後追い世代ですが、高校時代に彼の音楽に出会って以来、今でも折に触れて聴くほど大切なミュージシャンの一人なのです。とくに梅雨時は決まって欲します。雨の日にピッタリなんですよね。

ギタリストとしても確かな腕前のフランプトン。最近You Tubeのショート動画で海外の面白い方を発見しました。披露するのは「もしもピーター・フランプトンが "天国への階段" のソロを弾いたら」というものです。


うんうん、納得。ハンブル・パイ時代やソロでフランプトンが弾いてみせた、ちょっとJazzyなフレーズ回しや手癖をこの方はよく理解しています。勿論ジミー・ペイジの原形が下敷きですが、フランプトンならこんな風に弾くだろうとイメージを膨らませた「架空の物真似」にはひたすら感心。世界には面白い人がいるものデス。

さて、ピーター・フランプトンと言えば何はともあれ【カムズ・アライヴ!】。他の作品を好き好んで聴く方は、まず皆無でしょう。
私の完全な贔屓ではありますが、これがなかなか良いのです。一応言っておくと売れる前も、売れなくなってからも、です。。

今回はフランプトンの初期作品の素晴らしさを【カムズ・アライヴ!】収録曲のオリジナルテイクを中心に紹介していきたいと思います。あまりソソらない?!

1st 【Wind of Change】(1972)
〜際立つフォーキーで繊細な出発点〜

ハンブル・パイ脱退後の1972年5月にA&Mレコードから発表したソロデビュー作。
抜けた途端にパイのライブ盤【パフォーマンス】がチャートを駆け上がり、失敗したかなと思ったとは本人談です。
ストーンズの "Jumpin' Jack Flash" も収録。ロックなアプローチを見せつつも、全体ではアコースティック中心にフランプトンのセンシティブな感性が充満した処女作です。全米177位。

"Wind of Change"

【カムズ・アライヴ】ではアコースティックコーナーのB面に収録。アットホームなムードでの弾き語りでした。
英国人らしいリリカルなメロディとコードワークが美しい。本人はボーカル、ギター以外にダルシマー、ドラムス、ハーモニウムとマルチに演奏。スペイシーな音像も新鮮です。


"It's a Plain Shame" 

【カムズ・アライヴ】A面に収録のストレートなR&R。スッキリしたバージョンで私はこっちが好みです。2本のギターの絡みとサビのコーラスワークが曲に表情を加えてます。


2nd 【Frampton's Camel】(1973)
〜フランプトン流ブラックミュージックの解釈〜

1973年5月発表バンド名義の2ndです。英国に同名のプログレバンドがいた為にFrampton's Camelと改名。Mick Gallagher(Key)、Rick Wills(B)、John Siomos(Dr) を率いた初の米国録音。John Siomosは後の【カムズ・アライヴ】のメンバーとなります。
ジャケットこそセンスは無いですが、これぞフランプトン不遇時代の力作です。
彼が嗜好するソウルミュージック、ジャズをロックと掛け合せた意欲的な内容。ある意味ハンブル・パイに対する回答とも取れる熱い作品です。全米110位。

"I Got My Eyes on You"

ウーリッツァー、クラヴィネットなど鍵盤を駆使したファンキーなノリのトラック。当時のブラックミュージックの影響が濃厚です。スティーヴ・マリオットとは嗜好は似ても、資質の違いを実感する音作りです。【カムズ・アライヴ】未収録。


"Lines on My Face"

ジャズフュージョン風な音色にシットリした歌メロが印象的。【カムズ・アライヴ】D面にて、素晴らしい仕上がりで収録されるメロウなフランプトンが結実した一曲です。鍵盤やリードギターのフレーズもお洒落。
本テイクはぎこちなさが残る未完品ですが、この後ライブサーキットでゆっくり育てられていきます。【カムズ・アライヴ】版は私の雨の日フェイバリットです。


"I Believe (When I Fall in Love It Will Be Forever)"

スティービー・ワンダー【トーキング・ブック】収録のバラードをカバー。ゴスペル感溢れるアレンジに、声の細いフランプトンが懸命に熱唱しております。数年後、まさかスティービー本人とグラミーで覇を競うことになろうとは…。【カムズ・アライヴ】未収録。


"Do You Feel Like We Do"

ハードロックにフランプトンのJazzyなセンスを投入した初期の傑作ナンバーです。
静と動を織り込んだ展開で【カムズ・アライヴ】D面エンディングにおいては、14分の白熱した大熱演でハイライトを飾ります。
ライブでは十八番のトークボックスも登場。今や古臭いだけの演出ですが、あの観客との親密なやり取りに私は心温まるのです。本テイクではジャンゴ・ラインハルトがルーツという彼らしい流麗なギターが聴きどころ。


3rd 【Somethin's Happening】(1974)
〜マイルドなハードポップ路線へ〜

Frampton's Camelはツアーで借金を背負ったため、あえなく解散。再びソロに戻った英国録音の3枚目です。1974年3月発表。
フランプトンの個性となるマイルドで甘口なハードポップ路線はこの辺で確立。作曲センスも熟れて、ブレイクまではあと数ピース揃えば…といった印象です。因みに本作だけ音質の悪さが気になります。全米125位。

"Baby (Somethin's Happening)"

【カムズ・アライヴ】A面幕開けに抜擢されたメロディアスな代表曲。スタジアムロック風の演奏だったのに対して、こちらはポップさを強調した可愛いテイクです。珍しくスライド・ギターをフューチャー。
中間の ♪Oh〜、Baby〜ってコーラスはつい楽しく歌いたくなります。ウェイブヘアの若きフランプトンが思い浮ぶなぁ…。


"Doobie Wah"

ツアーで同行したドゥービー・ブラザーズからヒントを得た曲で、ギターを聴けばナルホド、まんま拝借したのが一聴瞭然。
【カムズ・アライヴ】ではA面2曲目に収録。但しこちらはテンポを落とした鈍く重いノリ。曇った音とビートが英国的です。


ピーター・フランプトンはこの次の【フランプトン】(75年)で遂にブレイクの兆しを見せ、同年の北米ツアーを収録したライブ盤で人生が変わります。
時代とフィットしたことが成功の要因でしたが、優れた音楽センスと地道な努力があっての賜物だったことは間違いありません。
冷や飯を食わされ続けた苦い日々の作品も、私にはダイヤモンドの原石のようで愛おしく聴こえるんですよね。

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