【Stephen Stills/Manassas】(1972) スティルスの幅広い音楽性を投入した大作
1968年くらいから数年間のスティーヴン・スティルスの活躍には、ホントに目を見張るものがあります。
バッファロー・スプリングフィールドの末期を経て、アル・クーパーらとのセッション・アルバム、CSN (&Y)、そしてソロ。他にも多数の作品にゲスト参加していますね〜。
かなり精力的に活動しており、この時期のスティルスはまさしくロックシーンの最前線を突っ走っていたと言えます。
そしてこのマナサス。1972年に結成されたこのバンドは、スティルスが持てる音楽性の全てを注入したようなバンドです。
アナログ時代には2枚組で発表された本作は収録70分を超える彼らのデビュー作です。
1971年秋に、スティルスは3枚目のソロ作品の制作に入りますが、この時CSN&Yから顔なじみでスティルスのツアーにも同行していたダラス・テイラー(ds) カルヴィン・サミュエルズ(b) ポール・ハリス(or, p)の3人が録音に参加します。
スティルスの頭には予てより温めていた構想があったようで、さらなる音楽性の充実を図るために当時フライング・ブリトゥ ・ブラザーズにいたクリス・ヒルマン(g, vo) アル・パーキンス(steel-g)や元ブルース・イメージのジョー・ララ(per)にも録音への参加を要請。
かくして総勢7人の精鋭が集結し、ソロから一転、スティルスの新バンド マナサス結成に至ったようです。
当時の発言によれば、スティルスはマナサスでバッファロー時代のサウンドを目指したそうです。多彩な音楽性を持つ彼だけに、幅広いジャンルを制約なく自由に表現したい欲求は常にあったのでしょうね。
本作ではラテン、カントリー、ブルーグラス、フォーク、ブルースなど思い付く限りの音楽を披露しています。
しかも専門的な音楽素養があるメンバーを集めたことで、より本格的に演奏出来たことはマナサスの大きな強みだったと思います。
CSN&Yやソロではデリケートな一面を見せたスティルスも、ここでは幅広い音楽ジャンルをダイレクトにあるいは掛け合わせながら、ダイナミックで骨太なバンドサウンドとして聴かせています。本作の1番の聴き所ですね〜
また各面で性格を替えており、全体の流れがスムーズになるような曲順や曲間の工夫がみられます。
Side-A – The Raven(渡りカラス)
① "Song of Love"(Stills) 3:28
② (a)"Rock & Roll Crazies"(Stills, Taylor)
(b)"Cuban Bluegrass"(Stills, Lala) 3:34
③ "Jet Set (Sigh)" (Stills) 4:25
④ "Anyway" (Stills) 4:21
⑤ "Both of Us (Bound to Lose)"(Stills,Hillman) 3:00
A面は腰の重いロックサウンド。
A-①からラテン風味をまぶしたサザン/スワンプロックが目白押し。スティルスがこのバンドで最も目指した音かと思います。
二部構成の曲が多く、A-⑤の本格的なラテンビートの演奏などは時代の先取りですね〜。曲間を詰めた演出も効果的で、このA面全体が組曲のような感じすらします(^^)
Side-B – The Wilderness(荒野)
① "Fallen Eagle"(Stills) 2:03
② "Jesus Gave Love Away for Free"(Stills)2:59
③ "Colorado" (Stills) 2:50
④ "So Begins the Task" (Stills) 3:57
⑤ "Hide It So Deep" (Stills) 2:44
⑥ "Don't Look at My Shadow" (Stills) 2:30
B面はカントリー、ブルーグラスの世界です。
B-①はゲストにフィドルやアコースティックベース奏者も迎えての楽しい演奏。映像で観るクリス・ヒルマンのマンドリン捌きが素晴らしい!個人的にはスティルスの朗々とした歌い口のB-③はかなりの名曲と思います(^^)
Side-C – Consider(熟慮)
① "It Doesn't Matter" (Stills, Hillman, Roberts) 2:30
② "Johnny's Garden" (Stills) 2:45
③ "Bound to Fall" (Brewer, Mastin) 1:53
④ "How Far" (Stills) 2:49
⑤ "Move Around" (Stills) 4:15
⑥ "The Love Gangster" (Stills, Wyman) 2:51
C面は比較的ポップでソフトな楽曲が中心。C-①はシングルにもなったホロ苦いメロディ。共作のリック・ロバーツも後に結成するファイヤーフォールで取り上げています。
私が大好きなのはC-⑤。フォークロック調にムーグシンセサイザーが目一杯広がって、トリップしたような感覚が甘美ですよ(^^)
Side-D – Rock & Roll Is Here to Stay(この世はロックンロール)
① "What to Do" (Stills)4:44
② "Right Now" (Stills) 2:58
③ "The Treasure (Take One)" (Stills) 8:03
④ "Blues Man" (Stills) 4:04
(in tribute: Jimi Hendrix, Al Wilson, Duane Allman)
D面は再び野太いロック。徐々に緊張感が高まるスリリングな曲順です。
そのハイライトがD-③。スティルス渾身の一曲で演奏も熱い!終盤はアル・パーキンスとスティルスのギターバトル・セッション!
ラストはお得意のアコギブルース弾き語り。クレジットにはジミヘン、キャンド・ヒートのアル・ウィルソン、デュアン・オールマンへ捧げると。静かな終焉。まるで映画のエンドロールのような幕引きです。
やはり本作はスティーヴン・スティルス一世一代の力作ですね〜。力がこもってます。
自分のバンドで自由自在に演奏出来て、スティルスにとってはさぞ充実したひと時だったでしょうね。
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