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【A Song for All Seasons】(1978) Renaissance クラシックと調和した抒情的プログレの後期傑作

秋を通り越して冬が訪れたようなこの所の冷え込み。私の住む神奈川県でも師走の寒さです。寒いのはイヤですが、これからは街も華やいでロマンチックな季節ですね。この時期、私なら透き通った女性の声で癒やされたいです。

70年代プログレの中でもクラシックミュージックとの相性なら群を抜いていたと言っていいルネッサンス。紅一点アニー・ハズラムのクリスタルボイスに寒い日はウットリと身を委ねていたいものです。

ルネッサンスのデビューは古く1969年。ヤードバーズのメンバーだったキース・レルフ、ジム・マッカーティが、キースの妹ジェーンらと共に立ち上げたバンドでした。
バンドは当初よりクラシック、フォークを基盤にしていましたが、2枚のアルバムを作って空中分解。このオリジナル・ルネッサンスからほぼメンバー総入れ替えで再始動したのが所謂一般的に知られるルネッサンスです。

クラシックミュージックのドラマ性を大胆にロックに取り込んだ新生ルネッサンスは、声楽を学んだリードボーカル、アニー・ハズラムの存在感もあって人気急上昇。2ndアルバム【Ashes Are Burning(燃ゆる灰)】は名作と誉れ高い作品として知られています。

その後、米国でも人気を獲得していき大手のワーナー・ブラザーズへ移籍した2作目(新生ルネッサンスとしては6作目)となるのが、本作【A Song for All Seasons】(邦題【四季】)です。
クラシックの深淵さを表現したサウンドが魅力のルネッサンスですが、本作では適度にポップな作風で抜けるような明るさが特徴的。彼等の作品の中では1番親しみやすく、個人的には代表作の1つではないかと思ってます。


(アナログレコード探訪)
〜謎の良音、ワーナー・パイオニアの1万番台〜

ワーナー・パイオニアの日本初回盤

本作の日本初回盤はワーナー・パイオニア発売です。レーベルデザインはこの年まで使われた通称Burbankの並木道。
この日本盤、すこぶる音が良いのです。非常にクリアで高音が伸びて、臨場感のある音。素晴らしい1枚です。1つ前の【お伽噺】(77年)もやはり音が良い。
ワーナー・パイオニアでは1975年から品番が8000番台から1万番台となりますが(本作はP-10525)、この74, 5年位から突如、驚くような高音質盤がちょくちょく出てくるのです。ドゥービー・ブラザーズ、リトル・フィート、PFM…などなど。
新しいカッティングマシーンを導入したのか、或いは敏腕エンジニアがパイオニアに入ってきたのか、何かがあったのでしょう。

英国盤ジャケット タイトルは赤文字
クリーム色レーベル(78〜84年頃)

それほど良音ならば、本国の英国盤はさぞ凄いだろうと手に入れてみました。こちら2ndレーベル盤。ところが意外にナチュラルな音でした。良音だけど高音はそんなに突出していません。どうやらパイオニア盤は派手な音にマスタリングしていますね。この時代、日本盤は音が悪いとの評判を覆すべく、レコード会社も試行錯誤していたように思えます。


Side-A
① "Opening Out"

本作の看板となる一曲。静かな導入部から始まって、ダイナミックなオーケストラが溶け合う流れが何とも素晴らしい。抒情的な旋律を歌い込むアニー・ハズラムの澄み渡る美声……う〜む惹き込まれます。


② "Day of the Dreamer"

前曲から一転、明るくアップテンポな曲調とロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団の壮麗なオーケストレーションが存分に活かされた10分近い大作。ドラマティックな演奏が楽曲に起伏を与えます。
中盤からはアコースティックなアレンジへと変わりスピーディな展開で長尺を飽きさせません。終盤はアニーがシットリと歌い上げる場面もあり、まるで全体を通して本作のタイトル【四季】を巡るような音風景です。前曲のメロディも登場したりと、トータルな流れは本作のハイライトとも言うべき仕上がり。ルネッサンスの最良の部分を掬い上げた見事な大作主義です。


Side-B
① "Back Home Once Again"

バンドのもう1つの魅力が英国らしいフォーキーな作品。但し本作では時代の変化を見据えた木漏れ日のような明るさがあります。
本作の主な曲作りはジョン・キャンプ(bass)マイケル・ダンフォード(guitar)の2人。ポップなメロディセンスの才能を発揮してます。


③ "Northern Lights"

こちらも親しみやすいメロディが印象的な全英トップ10入りを記録したヒット曲。アニーのクリスタルボイスに心が洗われます。

ルネッサンスはプログレッシヴロックのバンドですが、主軸としたのはクラシックのポピュラーな解釈だったように思います。
クラシック、ポップス両フィールドを股にかけて世界的な成功した歌手と言えば、英国出身のサラ・ブライトマンが有名ですが、そのルーツを辿るとルネッサンスのようなプログレに繋がっていくような気がしますね。

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