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【Rita Coolidge】(1971) スワンプの精鋭が集まった豪華デビュー作

デラニー&ボニーを中心に大きく盛り上がった米国西海岸のスワンプロックシーンからは沢山の優れたミュージシャンが登場しました。
長身で黒髪、ネイティブアメリカンの血を引くエキゾチックな美貌で、レオン・ラッセルが自作曲 "Delta Lady"と歌い上げた、このリタ・クーリッジもそんな1人だと思います。
後年AORのヒット曲もありましたが、彼女のこのデビュー作は素晴らしいスワンプロックの名盤です。

リタ・クーリッジが当時のL.A.スワンプの人脈に加わったのは、デラニー&ボニーのスカウトだったようです。
以降D&Bのアルバム、ツアーにフレンズの一員としてバックコーラスで参加。その流れからスティーヴン・スティルス、デイヴ・メイスン、エリック・クラプトンといったトップミュージシャンの作品に関わっていきます。

レオン・ラッセル主宰のジョー・コッカーの米国ツアー・ライヴ作品【マッド・ドッグス&イングリッシュメン】(70年)ではソロコーナーを設けられたリタが "Superstar" を熱唱。これがA&Mレコードのデヴィッド・アンダーレの目に留まり、ソロデビューへと話が進んだようです。

本作はプロデュースもデヴィッド・アンダーレ。ある種鳴り物入りでデビューしたリタだけに、当時のスワンプの精鋭たちが集結した豪華作品となっています。

〜参加ミュージシャン
Guitar:クラレンス・ホワイト、マーク・ベノ、スティーヴン・スティルス、ボビー・ウーマック、ジェリー・マギー、ライ・クーダー
Piano, Organ:レオン・ラッセル、ブッカーTジョーンズ、スプーナー・オールダム
Base:クリス・エスリッジ、ドナルド・ダック・ダン、ファジー・サミュエルズ
Drums:ジム・ケルトナー

などなど!さらにコーラス、ホーンセクション、ストリングスを入れれば総勢50名を超えるゲスト!

この中でブッカーTジョーンズは、当時リタの実姉プリシラ・クーリッジの旦那さんでした。本作では鍵盤、ベース、ギター、アレンジャーとして名を連ねており、業界でも名の知れた彼の指揮が大きく反映されていたと言えそうです。

リタより先にデビューした実姉プリシラ・クーリッジの1st【ジプシー・クイーン】(70年)。プロデュースは旦那のブッカーTジョーンズです。      
ヒッピー風なルックスですが、ブルージーな自作曲もあり、レオン・ラッセル "Hummingbird" など取り上げたアーシーだけどちょっとサイケな内容です。 


(アナログレコード探訪)
〜キングレコード日本初回盤の実力〜

キングレコードの日本初回盤、邦題【リタ・クーリッジ=ビューティフル・デビュー】(AML 101) この時代のレコード解説には"ビューティフル"という形容詞が散見されます。ジャケットは上で載せた米国盤と比べて発色が若干暗めです。          
当時のキング盤は、キャロル・キング、カーペンターズなど装丁に力が入っており、これもおそらく日本盤のみのダブルジャケット仕様。歌詞が掲載。
音圧にビックリ!非常に音が太く、低音もよく響いて土着的なスワンプミュージックの雰囲気が出ています。キング洋楽盤の中でもかなりオススメです。 
一方こちら米国A&Mレコードの再発盤(SP 4291)
インナースリーブの新譜広告からして1976年のプレス。母国盤だけに音はクリアで繊細ですが、再発盤の為か低音が弱いです。この辺り好みですね。    


Side-A
①"That Man Is My Weakness"(Weiss,Doerge)  3:50
オルガン、ピアノをバックに静かな歌い出しから、徐々に盛り上がるスワンプな一曲。リタのおおらかな歌声とゴスペルコーラスが響き渡ります。
そのコーラスの1人、作者のドナ・ワイスは80年代にキム・カーンズ "ベティ・デイビスの瞳" の共作者となる方だそうです。


②"Second Story Window" (Benno) 3:00

③"Crazy Love" (Morrison) 3:35
ヴァン・モリソンのカバー。このリタ版は特に染みますね〜。アレンジも歌唱も楽曲の良さを引き出してます。
ギターは左の甘いトーンがボビー・ウーマック、右の乾いた音がS.スティルスでしょうか。終盤は女声コーラスも熱を帯びます。


④"The Happy Song" (Redding, Cropper) 3:50
この曲やB-①の選曲はスタックスに身を置いた義兄ブッカーTの進言だったかもしれません。自身も義妹のためにオルガンで好演。
スタックス・ソウルそのままといった感じのルーズなノリ、ホーンの味付けが南部っぽくて何ともカッコいいです。


⑤"Seven Bridges Road" (Young) 5:55
イーグルスもカバーした米国SSWの作品。
深めにリバーブをかけたアーシーな音像が深南部を連想させます。大仰なストリングスが入ってくると、リタも堂々と歌い上げてスケールあるゴスペルライクな世界に。
べンチャーズのジェリー・マギーがドブロ、エレクトリック・シタールで参加。本作のハイライトといった風格です。

Side-B
①"Born Under a Bad Sign" (T.Jones, Bell) 4:10

②"Ain't That Peculiar" (Robinson, Moore, Rogers, Tarplin) 4:02

③"I Always Called Them Mountains" (Benno)  3:47
ギタリストとしても参加のマーク・ベノ作。A-②と共にアコースティックで奏でるソフトメロディです。
代表作【雑魚】(71年)などスワンプ系SSWとして評価の高い彼は、この当時リタとは恋仲だったらしく、リタは彼の作品をよく取り上げています。

④"Mud Island" (Weiss, Unobsky)  4:28

⑤"I Believe in You" (Young) 3:10

本作はやはり心に染みるスワンプロックの名盤です。リタの真摯な歌声、周辺の仲間たちによるムダのない演奏、二つが溶け合った素晴らしい内容です。
キングレコードの邦題通り、文句無しのビューティフル・ミュージックだと思いますね。

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