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【Sandy】(1972) Sandy Denny 英国フォークの歌姫のソロ最高傑作

私の掛け替えのない大切な1枚、元フェアポート・コンヴェンションのリードボーカル、サンディ・デニーの2ndアルバムです。
サンディ・デニー、その歌声が最もロックファンに馴染みがあるのはレッド・ツェッペリン【Ⅳ】収録の "The Battle of Evermore" でしょう。あのロバート・プラントとデュエットしている女性です。

20代の頃、彼女のこのアルバムをCDで初めて聴いた時のこと……友人が運転する夕暮れ時の車の中でした。1曲目 "It'll Take a Long Time" が流れてきた途端に惹き込まれてしまいました。世の中にこんな豊潤な音楽があるのかと心底感動した一瞬でした。以来私のフェイバリットです。
本作はサンディがフェアポートを離れてソロとしてのキャリアを確立した大切な作品。
自身の書き上げた珠玉の楽曲が並んだキャリアを代表する傑作です。

英国フォークの歌姫、と謳われたサンディ・デニー。有名なフェアポート・コンヴェンションには3枚の作品を録音して1969年に脱退しており、その後はフォークロックグループのフォザリンゲイを結成。1971年からソロ活動へと転じています。

私、彼女の声が好きなんです。翳りのある声質、でもシッカリとした芯の強さが伝わってきて、歌うときに僅かに震わせる独特の節回し……きっと歌う為に生まれてきたんだろうと思わせる説得力ある声です。

トラッドフォークの範疇で語られるシンガーですが、晩年にはエルトン・ジョン "Candle in the Wind"を取り上げたり、発掘された未発表曲にリトル・フィートのカバーがあるなど意外に柔軟な人だったようです。ボブ・ディランが大好きで、自作の曲を歌いながらも、狭いフォークの枠に囚われず、活躍の場を広げていくことを望んだ生涯だったように思います。

そんな彼女の最高傑作と呼び声高いのが本作。プロデュースはフォザリンゲイのメンバーでもあった当時の恋人トレヴァー・ルーカス(後に結婚)。
まず文句なしに曲が素晴らしいですね。そして、新たに米国テイストなアレンジも取り込んだライトな肌触り。彼女の英国然とした持ち味と絶妙にマッチしてます。自らの名を冠した本作は、ソロ歌手として米国進出への意欲もみせた自信作だったと思いますね。


(アナログレコード探訪)

我が家のサンディ

大好きなアルバムなので、LPを中古屋で見掛けると不憫に思い、「私が引き取らねば」との責任感からつい買い集めてしまいました💦
勿論、財布と相談の上ですが…。遥々、九州は福岡まで一人旅で見つけた一枚もあります。本作、ジャケットも素敵ですよね。


〜英米でのサンディの捉え方!?〜

英国アイランド・レコードの初期盤 MAT1/1
米国A&Mレコードの初期盤

英国盤はこれまで何枚か聴いてみましたが、録音自体があまり良くなかったように思えます。サンディの声もバンドの音も高音域が伸びますが、心なしか上ずったような音。
対して米国盤は低音が座って、アーシーな風味が出ており本作の雰囲気と合ってるかも。音域バランスも取れていて聴きやすい。

英国ではポピュラーに売っていこう、米国では単なるフォーク歌手、というような捉え方だったのかもしれません。ちょっとした音の差ですが、英米での売り出し方の違いなのかな、と想像するのも面白いものです。

ジャケット内側がまた美しい!


〜曲紹介〜

Side-A
①"It'll Take a Long Time" 5:13
サンディの代表曲の一つ。盟友リチャード・トンプソンもギターで参加。フォークロック風の穏やかな演奏が実に素敵。歌に寄り添うようなペダル・スティールギターの演奏は、Flying Burrito Brothersのスニーキー・ピート。情感豊かに曲を彩ります。エフェクトの音色が風のように吹き抜けて、そこはかとなく米国の香りを漂わせます。


②"Sweet Rosemary" 2:29
英国フォークにカントリー色を織り込んだ小品。サンディのビブラートを効かせた巧みな歌唱はやはり英国調ですね。


③"For Nobody to Hear" 4:14
驚きの問題作。ファンキーで粘りのあるリズムセクションに乗って歌う新境地。ブラスアレンジは何とニューオリンズの巨匠アラン・トゥーサン!やはり本作は米国マーケットを意識していたのでしょう。しかし個人的にはちょっと無理があったようにも…。


④"Tomorrow Is a Long Time" 3:56

⑤"The Quiet Joys of Brotherhood" 4:28
無伴奏でサンディが独唱、幾重にもコーラスを重ねた英国トラッドのカバーです。
霧深い森の彼方から聞こえてきそうな荘厳な響き。本人によればブルガリアコーラス隊を意識したとのこと。終盤はフェアポートのデイヴ・スワォブリックがフィドルソロを被せます。得も言われぬ異国情緒ですね〜。


Side-B
①"Listen, Listen" 3:58
かつてなく明るい旋律が印象的なサンディの才能溢れる名曲。これが心癒やされます。
マンドリンと優美なストリングスをバックに包容力のある歌声。トラッドで鍛えた独特なこぶし回しが、牧歌的な曲に気品を与えています。


②"The Lady" 4:01
これもサンディの卓越した一曲です。
ピアノ弾き語りと華麗なストリングスアレンジが共演するちょっとクラシカルな佇まい。フォーク歌手からの脱皮を思わせます。凛とした美しさの中にも厳しさが宿る歌声……聴き入ってしまいます。B面は全部良いデスね。

③"Bushes and Briars" 3:53

④"It Suits Me Well" 5:05

⑤"The Music Weaver" 3:19

サンディ・デニーは1978年4月21日、友人宅の階段からの転落事故が原因で帰らぬ人となります。享年31。
英国フォークの素晴らしさを教えてくれた、私にとって一目惚れ(一聴惚れ?)のような本作。ジョニ・ミッチェル【逃避行】と並んで、時折しんみりと一人っきりで聴いていたいセラピーのような1枚です。


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