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【Souvenirs】(1974) Dan Fogelberg 純朴な"1人CSN" 初ヒット作品

1970年代に登場した米国西海岸系のシンガーソングライターは沢山いますが、このダン・フォーゲルバーグも素敵な歌と演奏を聴かせてくれたミュージシャンの1人です。

日本ではTV−CMに使われた「ロンガー」や「懐かしき恋人の歌」で知られていますが、一般的な知名度では今一つかもしれません。

私はこの人の作る音楽の清々しさが好きです。心地よく耳に入ってくるんですよね。
マルチプレイヤーである御本人による美しいコーラスワーク、時にロック色強い演奏、そしてどこか切ないメロディ…まるでCS&N、イーグルスの良質な部分を抽出したような魅力があります。

特に初期の作品では “ひとりCSN” とも評されセンシティブで透き通るような感性を音楽にしたような佇まいに心惹かれるんですよね〜

後に大ヒットした【フェニックス】(79年)辺りが彼の代表作かと思いますが、まだ彼の初々しい姿が聴けるこの2ndアルバムを今回は推したいと思います。

ダン・フォーゲルバーグのデビューのきっかけは、地元イリノイで歌っていたところを、後にマネージャーとなるアーヴィング・エイゾフが声を掛けたことから始まるようです。

エイゾフは当初ダンを、新興まもないアサイラム・レコードに売り込んだそうですが上手くいかず、紆余曲折の後にコロムビア・レコードと契約。
ナッシュビルにて、ノーバート・パットナムをプロデューサーに、エリアコード615をバックにデビュー作【ホーム・フリー】(72年)を発表します。しかし内容の素晴らしさとは裏腹にセールスでは失敗に。

失意でロサンゼルスに戻った2人は再出発。エイゾフが西海岸の人脈をフル活用した豪華なメンバーを集め、プロデューサーにジョー・ウォルシュを迎えて製作したのが本作(邦題【アメリカの想い出】)です。

ゲストは多彩。レギュラーのドラマーにラス・カンケルを据え、ジョー・ウォルシュ、スティーヴン・スティルスらの人脈が参加。
コーラスにはグラハム・ナッシュ、イーグルスの面々も顔を出しています。
まだまだ田舎っぽいダンの傷つきやすい感性と瑞々しい西海岸サウンドが溶け合って、爽やかさだけど何処か切なさ漂う充実作です。

米国盤フルムーン・レコード (PE 33137)

さてこのフルムーン・レコードは、そもそもエイゾフがダンの為に米国エピック傘下に新設したレーベルだったようで、本作は記念すべき第1作目。当時エイゾフは相当彼の才能を見込んでいたようです。

後年、デビッド・フォスターの手腕で復活するシカゴもこのフルムーンからの再出発でした。(配給はワーナー)

ちなみにダン・フォーゲルバーグの中古レコードはとにかく安いです。米国盤でもほぼ500円以内で目にしますね。残念ながら今は人気が無いようです。

All tracks are written by Dan Fogelberg.

Side-A
① "Part of the Plan" 3:18
② "Illinois" 4:15
③ "Changing Horses" 2:36
④ "Better Change" 3:10
⑤ "Souvenirs" 4:33
⑥ "The Long Way" 3:50

Side-B
① "As the Raven Flies" 4:30
② "Song from Half Mountain" 2:55
③ "Morning Sky" 2:49
④ "(Someone's Been) Telling You Stories" 5:32
⑤ "There's a Place in the World for a Gambler" 5:42


A-① "Part of the Plan"
ダン初のヒット曲(全米31位)。
ドラムにラス・カンケル、スライドギターにジョー・ウォルシュ、ベースにジョー人脈のケニー・パッセラリ。
ラテンパーカッションにマナサスのジョー・ララ。コーラスにはグラハム・ナッシュという豪華な布陣。いかにも西海岸らしい小気味良い爽やかな歌と演奏です。

A-② "Illinois"
故郷イリノイへの想いを歌い上げるバラード。シンプルですがダイナミックな趣きがあって、米国の雄大な大自然を連想させます。
元マナサスのアル・パーキンスによるスティール・ギターとダンの切実なボーカルが郷愁を誘います。

A-④ "Better Change" 
アメリカが演りそうな感じの曲ですね。
私はこういう曲にノスタルジー感じてしまい、ついつい遠い目になってしまいます…。
ドラムとコーラスには何とイーグルスのドン・ヘンリーが参加。サビのCSN風コーラスハーモニーがイイですねぇ~胸を打ちます。

B-① "As the Raven Flies" 
こちらはニール・ヤングぽいメロディにも聞こえる少しハードな楽曲。
厚みのあるコーラスワークはダン本人によるもので、後半からはジョー・ウォルシュとダンによるギターソロの応酬。
当時のツアーで、フールズ・ゴールドをバックにしたライブ映像がありました!10分に及ぶ熱い演奏です〜。

B-④ "(Someone's Been) Telling You Stories"
一方こちらはスティーヴン・スティルスのソロの作風そっくりの一曲。スワンプ色とゴスペル風味が混ざりあった味わいで、スティルス好きな私は好きです。ダンも影響受けていたのでしょうね。コーラスでドン・ヘンリー&グレン・フライ参加。

B-⑤ "There's a Place in the World for a Gambler"
ラストは雄大なバラード。初期ダンのピュアな感性がそのまま写し出されています。
重層的なコーラスには深いエコーがかけられ、ちょっと教会的な神聖さで響きます。
アコギでアメリカのジェリー・ベックリィ参加。何とも感動的な余韻残るラストナンバーです。


アルバムはヒットしますが本作の発表後、ダン・フォーゲルバーグはロサンゼルスを後に故郷イリノイに帰ってしまいます。
きっと都会の喧騒より田舎暮らしの方が彼には合っていたのでしょう。

その後もコンスタントに作品を発表、大ヒットにも恵まれますが、私は彼の初期の作品に抗えない魅力を感じるんですよね。まだまだ田舎青年の純朴さが残っていて。
青臭いけどどこか懐かしく、古き良きウエストコーストロックの時代に連れて行ってくれるようで…遠い目になってしまうのです。。

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