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【Brothers and Sisters】(1973) The Allman Brothers Band 失意から復活したグループ最大のヒット作

私が初めて聴いたオールマン・ブラザーズ・バンドのアルバムが本作でした。まだサザンロックというジャンルも理解していない頃だったのですが、これがとても聴きやすかったんです。
当時の私の一番のお気に入りがインストゥルメンタルの "Jessica"。トロピカルな音に身も心もウットリ。私はサザンロックとは南国のロックだとばかり思っていました…💦

オールマンズの長い歴史の中でも本作は少しポップな作り。歌モノらしい感覚にも溢れていて、爽やかな土臭さのサザンロックです。

本作のリリース時のラインナップは、
グレッグ・オールマン(vocal, organ)
ディッキー・ベッツ(vocal, lead guitar, dobro)ジェイモア(drums)
ブッチ・トラックス(drums)
チャック・リーヴェル(piano)
ラマー・ウィリアムス(bass)

前作【Eat a Peach】録音中にデュアン・オールマン(lead guitar)を亡くしたバンドは、新メンバーにチャック・リーヴェルを迎えて本作の製作に入りますが、録音序盤にベリー・オークレー(bass)を同じくオートバイ事故で亡くすという悲劇に見舞われます。急遽、後釜にラマー・ウィリアムスが加入。本作は最悪な状況の中でレコーディングされたアルバムでした…。

しかし内容はというと真逆。それまでのオールマンズと比べるとライトなテイストで、カントリーフレイバー広がる非常に心地良いサウンドです。デュアン亡き後、ディッキー・ベッツがバンドを主導するようになり、彼本来の陽気で明るい持ち味が押し出されたアルバムと言えますね。

収録7曲中4曲がディッキーによるもの。グレッグ・オールマンは同時期に並行してソロアルバムを手掛けていたこともあり、本作はディッキーを中心に録音されています。
アルバムは初の全米チャートNo.1となり、シングル "Ramblin' Man" も大ヒット(全米2位)。
新メンバーを迎えて、度重なる不幸から立ち上がろうとするバンドが勢いで乗り切ったアルバムです。


(アナログレコード探訪)
〜キャプリコーンは音が悪い〜

米国キャプリコーンレコードの初回盤(マーブル柄)

私は本作はCD音源で聴くことがほとんどです。というのもアナログ盤の音が悪すぎるのです。米国初回盤は勿論のこと、試しに日本初回盤のワーナー・パイオニア8000番台も聴いてみましたが同じ。抜けが最悪でモコモコしています。
キャプリコーン作品って、どうも全体に音が酷い印象があります。私見では1975年位から突如音が良くなってます。ロックに音質など求めなかった時代、サザン系は特にはそんな考えが主流だったのかなぁ。偏見??

表ジャケはブッチ・トラックスの息子ヴェイラー。今をときめくギタリスト、デレク・トラックスはこの子の従兄弟になるんですね。
裏は亡きベリー・オークリーの娘ブリタニー。


〜曲紹介〜

Side-A
①"Wasted Words" 4:20
グレッグ作品。当時のライブでも1曲目でした。ディッキーはデュアン譲りのスライドギターを披露。本人曰くプレッシャーだったそうですが、なかなか堂に入ったプレイです。新加入チャックのピアノが泥臭いオールマンズに爽やかさを添えているのが分かります。


②"Ramblin' Man" 4:48
オールマンズ最大のヒット曲。ディッキー自ら歌うカントリーテイスト溢れるポップなナンバーです。ゲストにレス・デューデックがギターで参加。ここまで2曲はベリー・オークレー生前の録音となります。
映像は72年11月のライブ。何とベリー・オークレーが亡くなる数日前のステージです。つまり本作発表前。まだ新曲のためかディッキーにやや硬さが見られますね。


③"Come and Go Blues" 4:54
本作へ2曲を提供しているグレッグですが、この曲が素晴らしい。サザンソウル風な持ち味とポップセンスがうまくブレンドされた彼の傑作の1つだと思います。
演奏はここから新生オールマンズ。ラマーはリズムキープに近い堅実な演奏、一方でチャックのピアノはイントロ、リードと印象的なプレイを聴かせます。当時20才のチャックが本作で担った潤滑油のような役割は大きいですね。


④"Jelly Jelly" 5:46
昔はグレッグ作とあったこちらのスローブルース、近年はジャズ畑らしき方2人のクレジットに変わっています。大人の事情!?
同じ系統でもデュアンが居た頃とは違って、カラッとした仕上がり。おそらく新メンバー肩慣らしのジャムセッションだったと察します。オルガン、ピアノ、ギターと回すリラックスしたプレイが新鮮。グレッグには気怠く歌うブルースが似合ってます。

Side-B
①"Southbound" 5:11

②"Jessica" 7:31
ディッキーが娘の名前を取って作ったというインスト曲。アコースティックギターに再びレス・デューデックが参加。
ここでもリズムにリードに大活躍なのがチャック・リーヴェル。彼のピアノが入ると曲に膨らみが出ますね。ソロがまた素晴らしい。ディッキーと堂々と渡り合っています。しかし最後はディッキーの長いソロ。美味しい所は持っていきます(笑)。
日本のクイズ番組で副賞はハワイ旅行!みたいなアナウンスの後ろで使われてたこの曲。イージーリスニングヒットという意味でもオールマンズを有名にした曲ですね。

③"Pony Boy" 5:51


この年にワトキンズ・グレンでのコンサートでグレイトフル・デッド、ザ・バンドと60万人もの観衆の前で演奏したオールマン・ブラザーズ・バンドは人気、実力とも絶頂期にありました。
しかしグレッグはドラッグ癖が問題化して徐々に孤立。3年後には解散。本作は逆境の中でバンドが結束をみせた奇跡的な1枚だったような気がします。

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