Jo Jo Gunne4作品 〜アサイラム・レコードの異端ハードロックバンド
アサイラム・レコードといえばイーグルス、ジャクソン・ブラウン、リンダ・ロンシュタット、J.D.サウザー……1970年代に米国西海岸の音楽シーンを牽引したレコード会社です。青い空、白い雲、爽やかな風、といったウエストコーストロックのイメージを世間に植え付けましたが、レーベルにはちょっとした変わり種も所属しました。
珍しくハードロック寄りのバンドとして売り出されたのが、このジョ・ジョ・ガン。
ややマニアックながらポップな魅力もあってユニークなバンドです。今回は日本ではCD発売がスルーされてしまう不遇なジョ・ジョ・ガンの作品を取り上げたいと思います〜。
ジョ・ジョ・ガンは、1960年代からロサンゼルスで活動するSpiritというサイケデリック系のバンドに在籍したジェイ・ファーガソン、マーク・アンデスが中心となって1971年に結成された4人組です。
翌年の72年にはアサイラムの創業者デヴィッド・ゲフィンに声を掛けられレコードデビュー。4枚の作品を残しました。ちなみにアサイラム創設時のリリース作品を見てみると、
SD 5050 ジュディ・シル1st
SD 5051 ジャクソン・ブラウン1st
SD 5052 デヴィッド・ブルー【Stories】
SD 5053 ジョ・ジョ・ガン1st
SD 5054 イーグルス1st
SD 5055 J.D.サウザー1st
といったラインナップ。のっけから目の眩むような名作揃いですが、そんな中、ジョ・ジョ・ガンもレーベル立ち上げの重要バンドだったことが分かります。やり手のデヴィッド・ゲフィンゆえに、新進気鋭のミュージシャンならば売り込もうと、様々なタイプを引き込む戦略だったのかもしれません。
【Jo Jo Gunne】(1972)
デビュー作。結成時のメンバーは、ジェイ・ファーガソン(keyboard, vocal)、マーク・アンデス(bass)、マークの弟マシュー・アンデス(guitar)、カーリー・スミス(drums)の4人。
ここからシングル"Run Run Run"がヒット(全米27位)と幸先の良いスタートを切ります。
バンド名はチャック・ベリーの曲名が由来。ハードロック一本というより、持ち前のロックンロールを信条とした風情。でもアサイラムでは異質なヘヴィさです。コーラスワークを多用する辺りが西海岸らしい。
プロデュース補佐にトム・ダウド。スカスカな音ですが、荒削りでも可能性を秘めた好盤です。全米57位。
まずは唯一のヒット曲"Run Run Run"。カリフォルニアらしい能天気な曲ですね〜。
【Bite Down Hard】(1973)
ベーシストがマーク・アンデスからジミー・ランドールに交代した2nd。バンドはここからハードでテンポの早いサウンドへと路線変更。ブリティッシュ風味を織り込んだ英米折衷な音が特徴です。プロデュースは同じ頃ジョー・ウォルシュを手掛けていたビル・シムジク。ボーカルのジェイ・ファーガソンの書くポップな作風が活かされた、ハードポップな音に的を絞った良盤です。コーラスワークも抜群。個人的に1番好きです。全米75位。
キャッチーな魅力が満点のオープニングナンバー"Ready Freddy"。
スペーシーなモーグ・シンセサイザーが新鮮な"Roll Over Me"。アコギの使い方など静と動のアレンジはビル・シムジクのアイデアでしょうか。この方向性で進んでくれたら良かったのに…。
【Jumpin' the Gunne】(1973)
今ならコンプライアンスで引っ掛かりそうなジャケットの3枚目。プロデュースは同じくビル・シムジク。ツーバスを駆使した手数の多いドラムを全面に出して更にハードロッキンに。反面、ポップ度が減退して個性のない音になってしまったのが残念です…。本作限りでマシュー・アンデス(guitar)が脱退。哀しいかな全米169位。
このバンドのハードサウンドの要はドラマーでしょう。J.ガイルズ・バンドを激しくしたような一直線のロックンロールナンバー"I Wanna Love You"!
【"So...Where's the Show?"】(1974)
ジョン・ステイヒーリー(guitar)を迎えた最終作。音はブ厚く華やかになったけど、初期の野暮ったさは失くなりました。これが彼等の最終結論。同時代を意識したハードサウンドで有終の美といった所です。
恐らくこの頃にはアサイラムからも見捨てられて、大したプロモーションもなかったのでしょう。セールスは最悪の全米198位。
裏ジャケットの陽気そうな4人。発展的解消だと信じマス。
ハードエッジでドラマティックな"where is the show?"。悪くはないけど変わったなぁ…
ジョ・ジョ・ガンは1975年に解散。この中で出世頭となったのが1stで抜けたマーク・アンデス。彼はファイアフォール、ハートと米国ロックの表舞台を歩いていきます。
異常にヘヴィなドラミングのカーリー・スミスは、何と現在ボストンの正式メンバー!
そしてリードボーカルのジェイ・ファーガソンは、ジョー・ウォルシュ人脈とも関わりながらソロへと転向。2ndアルバム【Thunder Island】(77年)のタイトル曲が念願の大ヒット(全米9位)。リゾート感溢れる王道の西海岸ポップスで遂にホームランを放ったのでした。良かったなぁ(泣) 私は夏に必ず聴きたくなるフェイバリット・ソングです〜。
西海岸ロックシーンのユニークな存在だったジョ・ジョ・ガン。大して売れた訳でもないのに私は親しみの湧くバンドなんです。
アサイラムって「避難所」という意味らしいですね。本来の意味からすれば、裏街道を突っ走った彼等のような異端児が居たことは、実にアサイラムらしかったのかもしれません。