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【Electric Warrior(電気の武者)】(1971) T.Rex アンダーグラウンドの香り振り撒くマーク・ボランの傑作

洋楽のロッククラシックを聴き始めた中学時代、私にとってこのT.レックスはホントに燦然と輝く存在でした。

初めて聴いたのが中2の秋。一緒に洋楽探訪していた親友の家で聴いた「ゲット・イット・オン」でした。
ステレオから流れてくる低音のギターリフの響き!何とも艶かしくて聴き入りました。 親友宅の居間の間取りと共に記憶に残っています。

今思い出してもマーク・ボランの分かり易いカリスマ性とシンプルでキャッチーなヒット曲は、後追い世代の私にもビンビンと訴えかけ、ヴィンテージロックの入門編としては最適でした。
タイトルも【電気の武者】なんてソソりますよね!

1980年代後半、私の出身の名古屋には「円盤屋」というレコード専門店があり、覚王山駅のお店で意を決して【電気の武者】の新品輸入盤LPを購入!良く聴きました〜。

部屋にはボランのポスターを貼り、伝記本を読み込み、どうしてもレスポールのギターが欲しくなって安物まがい品を買ってコピーもしました 笑
古い洋楽の深い森に入り込んだばかりの私には、マーク・ボランは憧れのスターでした。

T.レックスの作品としては【スライダー】(72年)と並んで、グラムロックを代表する人気作が本作【電気の武者】です。

・米国盤レコード

米国リプリーズ・レコード発売のUS盤です。

漆黒の中に浮かび上がる黄金色のボランとマーシャルのアンプ!最高のジャケットですね〜。デザインはヒプノシス。

裏ジャケは曲名、クレジット、歌詞。

見開きジャケットを広げるとボランと相棒のミッキー・フィンが映るモノクロ写真。
スター気取りなポーズが既にキマってます。

音がこれまた素晴らしい!初期盤という事もあって、US盤らしい迫力ある太い音でした。ズンズンきます!

・日本盤レコード

こちらポリドールレコード発売の日本盤。1972年5月発売、定価2000円、シングルジャケット。再発盤だと最近知りました。

調べたところ日本初回盤は東芝らしいです。
直後に、T.レックスの英国原盤のフライ・レコードがキューブ・レコードへと再編したそうで、日本での版権もポリドールに移行したものと思われます。

気に入ってたのですが、US盤の音を聴いたら聴けなくなり、今は箪笥の肥やしです。学生時代に買った盤は手放してしまいました。

A-①「Mambo Sun」
イントロから弾けるビートにゾクゾクきます。ボランの感情を抑えた低い歌声がジワジワと聴き手を煽ってきます。トニー・ヴィスコンティによるコーラスとストリングスのアレンジが独特なムードを醸して、これぞT.レックスの世界観を作り上げています。
TV番組出演時の映像。酷い口パクですね。


A-②「Cosmic Dancer」
本作で目立つのがティラノサウルス・レックス時代を彷彿とさせるアコースティックギター主体の曲です。中でもこれはボランのメランコリックなメロディが冴えた名曲かと思います。ボランの曲って一筆書きの単調なメロディの反復が多いと思うのですが、そこはプロデューサーのヴィスコンティの手腕が光ります。ストリングス、コーラス、テープの逆回転と趣向を凝らしたアレンジを施し、ボランの歌世界に彩りを添えています。


A-③「Jeepster」
全英2位のヒットシングル。ボランお得意のブギービートにミッキー・フィンのボンゴも乗ったキャッチーなナンバー。このチープな音がイイんですよね。ロックしてます。
ビートクラブのスタジオライブ映像から。


A-⑤「Lean Woman Blues」
珍しくブルースっぽい演奏を聴かせます。当時のT.レックスはバンド編成になって間もない頃。スタジオでの一発録りでしょうか、ボランの掛け声からゆる〜く気怠い演奏がスタート。決して巧い演奏ではないですがいい味!生身のロックバンドとしての魅力が伝わる好トラックですね。


B-①「Get It On」
T.レックスを代表する全英No.1ヒット。米国では同時期にチェイスの同名ヒット曲があった為にタイトルは「Bang a Gong」に変更。それでも全米10位のヒットを記録しました。
抑揚のない曲調は爆発するようでしないダイナマイトのよう。聴く側を焦らしてるみたいで、ボランのイキそうでイケない溜息がイヤラしい〜笑。 いや官能的。チープなギターにホーン、ストリングス、コーラスが顔を出して妖しく迫ります。
サックスにイアン・マクドナルド、キーボードにリック・ウェイクマンが盛り立てる、文句無しにノッてしまう名曲です。


B-⑥「Rip Off」
唐突なボランのシャウトと性急な演奏にビックリ!この時代にしてはかなり尖ったロックナンバーなのでは?!
昔ラジオで音楽評論家の渋谷陽一氏が、マーク・ボランはこの時代からラップをやってるとこの曲を褒めていました。確かに歌は少しラップ調ですね。ある意味パンクな演奏にホーン、ストリングスも絡んできてアヴァンギャルドな流れに。結構フリーキーです。
やっぱりロンドンの音だなぁと思いますね。T.レックスはやっぱりカッコいい〜!


まだマーク・ボランがグラムスターに振り切る前の、ロンドンのアンダーグラウンドにいた頃のカルトな生々しさが本作には残っていますね。
その妖気こそが当時のロンドンの空気なのかもしれません。ジャケット同様に魅惑を振り撒くブリティッシュ・ロックの名盤ですね。

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