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【Demons and Wizards】(1972) Uriah Heep ハードロックとアコースティックのファンタジー世界

70年代に人気のあったブリティッシュ・ハードロック・バンドといえば、レッド・ツェッペリン、ディープ・パープル、ブラック・サバスが代表に挙がりますが、その次あたりのポジションだったのがユーライア・ヒープ。

今ではすっかりB級ハードロックの雄のような扱いを受けているヒープですが、私は結構好きなんです。CDもかなり買い集めました。来日公演も観に行きました。

他の3バンドと比べれば音楽性がハッキリしなかったこと、カリスマ性がいま一つだった等など、決定力不足を言い出したらキリがないのですが、私自身は寧ろこのボヤケたグラデーションのようなところが好きでした。

ハードロック?プログレッシブ?ロックンロール?みたいな色合いが、アルバム毎、曲毎に変わっていく掴みどころの無さ!そしてオドロオドロしく見えて結構ポップな親しみやすさ!何とも嫌いになれないのですよね〜。

現在はギターのミック・ボックスが率いて屋号を守り抜いていますが、全盛期は何と言ってもボーカルのデビッド・バイロン在籍期。本作は彼らを代表するヒット作です。

本作邦題【悪魔と魔法使い】はユーライア・ヒープの4枚目の作品。ヒープが怪しげな悪魔主義なる方向性へ傾き、アコースティック楽器を大幅に導入した作品として知られています。

でもバンドの作風もガラッと変わり、随分とライトになったように感じますね。
ヒープは最初の3枚までは、大風呂敷を広げたダークでシャープなヘヴィ・ロックをやっていたと個人的に思うのですが、本作以降、少しずつポップでシンプルなロックンロールになっていったような気がします。スケールは小さくなりましたね。

とはいえ本作は曲が良い!ケン・ヘンズレーを中心にメンバーのオリジナルの出来が良く人気の高い作品だというのも納得です。

そして本作からのラインナップですね。
歴代でも最強のメンバーだったと思います。 

デビッド・バイロン(Vo)、ケン・ヘンズレー(Kb, G)、ミック・ボックス(G)、ゲイリー・セイン(B)、リー・カースレイク(Dr) の5人。

重いドラミングのカースレイク、ハモンド・オルガン鳴りまくり、時々ギターのヘンズレー、下手くそワウギターのボックス、そして超ハイトーンボーカルのバイロン!
これぞヒープですね!!

あと個人的に思うのは、この時期のベースのゲイリー・セインは良かった〜!
明確なリードプレイヤーがいないヒープにとって、副旋律を弾く彼のメロディックなベースプレイは、バンドに一番合っていたように思うんです。ルックスも男前でした。早逝しなければ…。

ハードロックとアコースティックの両面が味わえる本作は、悪魔主義とは言っても切迫したシリアスさとは無縁。ロジャー・ディーンが描いたジャケット同様に、何処かおとぎ話のようなファンタジックな世界観が満載で、私は大好きなアルバムです(^^)

米国マーキュリー・レコード初期盤 (SRM-1-630)
高音がクッキリとして輪郭ある音ですが、やや軽い感じです。やっぱりヒープはヘヴィじゃないと!
日本コロムビアの国内初回盤。1972年8月発売。
定価1900円  (YS-2737-BZ) 音はややこもってますが、ベースもハッキリ聴き取れて太い音です。


Side-A
①"The Wizard" (Clarke, Hensley) 2:59
②"Traveller in Time" (Box, Byron, Kerslake) 3:25
③"Easy Livin'" (Hensley)2:37
④"Poet's Justice" (Box, Hensley, Kerslake) 4:15
⑤"Circle of Hands" (Hensley)6:25

Side-B
①"Rainbow Demon" (Hensley)4:25
②"All My Life" (Box, Byron, Kerslake) 2:44
③"Paradise" (Hensley)5:10
④"The Spell" (Hensley) 7:32


A-①"The Wizard"
ケン・ヘンズレーが弾くアコースティックギターのアルペジオが美しい!前任ベーシストのマーク・クラークとヘンズレーの共作。
バイロンのハイトーンボイスは透き通って、メロディもキレイ♪ 演奏とコーラスが織りなすファンタジーな世界です。


A-③"Easy Livin'"
本作からのヒット曲、邦題「安息の日々」。「対自核」と並ぶ代表曲です。
マイナーコードで走るロックンロール。気色悪いコーラス。クセになります(笑)
大サビで入る鐘の音が悪魔主義っぽいかな?!


A-⑤"Circle of Hands"
「7月の朝」と並ぶ傑作バラード。私が本作で1番好きな曲です(^^)  この大仰さこそがユーライア・ヒープ!
ケン・ヘンズレーのクラシックな素養をゴスペルと合わせたような作品です。
ハモンド・オルガンの崇高な響き、バイロンの歌いっぷり、終盤のピアノの連打…この美しさの前にはただただひれ伏すのみです💦
ここでもゲイリー・セインのベースが良く動いており、ボトムを支えつつ歌メロに対する裏メロディを弾いて、演奏に膨らみを与えてます。


B-①"Rainbow Demon"
初期のヘヴィなサウンドを彷彿とさせます。ヘンズレーのハモンドがオドロオドロしく唸っており、これぞ悪魔という感じ?!


B-③"Paradise" ~④"The Spell"
アコースティックな世界からメドレー形式で繋がる12分超のドラマティック大作。
テンション・コードを使った浮遊感や組曲的なメロディ展開など、ヘンズレー渾身の力作と言えます。素晴らしい!
バイロンの歌にも熱が入り、様式美が伝わる感動的なフィナーレです。


本作はユーライア・ヒープの数ある作品の中でも勢いがあって、アイデアも冴えて楽曲もイイ。やはり代表作と言えますね!

余談ですが名古屋にヒープのコピーバンドが存在するのをご存知でしょうか?
その名も "高麗屋スープ" (笑)!
10年位前にネットで知ったのですが、フザけたバンド名に反して演奏は本格派!外国人ボーカルを率いた本気のコピーに感服です(^^)


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