【The Flying Burrito Bros】(1971) リック・ロバーツを迎えた新生FBBの名作
カントリーロックの始祖とも言われるグラム・パーソンズが、ザ・バーズ脱退後にクリス・ヒルマンと結成したのがフライング・ブリトゥ・ブラザーズ(以下FBB)でした。
たった2枚のアルバムでグラムは脱退しますが(実際はクビだったそうです)、バンドはその後も継続しました。
新しいフロントマンを迎えて作られたこの3rdアルバム。これがなかなか良いのです〜。FBBといえば1stが名盤として有名ですが、本作も立派なカントリーロックの名作といえる素晴らしい作品です。
グラム・パーソンズの後任に選ばれたのが、後にファイヤーフォールを組んで成功するリック・ロバーツです。本作のメンバーは、
リック・ロバーツ(Vo, Gt)
クリス・ヒルマン(Vo, B)
スニーキー・ピート(pedal steel guitar)
バーニー・レドン(Vo, Gt, banjo)
マイケル・クラーク (Dr)
当時のリックは無名の新人。グラムの後釜に選ばれた経緯は不明ですが、バンドはともかくリードボーカルと曲作りをこなせる人物を探していたらしい。取り急ぎのチョイスとはいえ、結果的にこれがラッキーだったことは本作を聴いてもらえば分かると思います。
クリス・ヒルマンとの共作も含めて本作でリック・ロバーツが手掛けたのは7曲。
リックの曲には適度なポップさと甘みがあって、それまでのFBBにはなかった端正な作風を送り込んでいます。後にソロ、ファイヤーフォールで見せる卓越したソングライティングの片鱗を窺わせていますね。
また本作は演奏面もなかなかです。マルチプレイヤーのバーニー・レドンが、エレキ、アコギ、バンジョーと大活躍。スニーキー・ピートのペダルスティールとのコンビでアレンジ力もUP。オーソドックスなカントリーロックに的を絞ったサウンドに仕上げています。
グラム・パーソンズの頃とはひと味違った、歌もの要素も入った確かなプレイによるカントリーロック。充実した作品だと思います。
〜曲紹介〜
Side-A
①"White Line Fever" 3:16
②"Colorado" 4:52
本作きっての名曲です。作者はリック・ロバーツ。甘く切ないけどスケール感あるメロディが秀逸。大サビまで用意したリックの自信作だったでしょう。
ピアノの音色、懐かしく響くスティールギターの旋律……甘美な世界にどっぷり浸ってしまいます。この霞がかった音像も私は大好きですね〜。まさに音の桃源郷!リンダ・ロンシュタットが後にカバーしています。
③"Hand to Mouth" 3:44
④"Tried So Hard" 3:08
元ザ・バーズのジーン・クラークの作品。ジーンもザ・バーズ脱退後はカントリーロックに傾倒しました。グラム・パーソンズが抜けた後のFBBのライブに参加するなど、クリスやマイケルとの旧友は続いていたようです。
FBB版は本作セッションより先駆けて録音。確かにザ・バーズが演奏しても似合いそうな爽やかなカントリーロックです。歌はクリスでしょうか。ベースも唸ってます。
⑤"Just Can't Be" 4:58
Side-B
①"To Ramona" 3:40
②"Four Days of Rain" 3:39
リック単独作。メロディ、アレンジ共にまろやかな甘さが漂うフォークロック調の一曲。リックの歌声で聞き手はレイドバック気分。アメリカの田舎を旅しながら聴いてみたいです。後の彼のソロアルバムの世界に繋がっていく作風といえます。
③"Can't You Hear Me Calling" 2:23
リック&クリスの共作。クリスがボーカルを取るR&R。ベースもブンブン鳴ってます。
ラフな歌声の傍らで、バーニー・レドンはロッキンなリードギターを決めまくり。彼の存在は本作アレンジ面での肝だったでしょう。
④"All Alone" 3:33
⑤"Why Are You Crying" 3:02
リックによる歌とギター、バーニーのバンジョーで奏でられるラスト曲。リックの素朴な持ち味をブルーグラス風に料理してみた、といった感じですが何気に美味です。アーシーだけど爽やかな風が吹き抜けていくよう。楽しそうな雰囲気が伝わってきます。
本作発表後、バーニー・レドンはイーグルス結成のため脱退。FBBはメンバーチェンジしてツアーに出ますが、間もなく解散します。
リック・ロバーツはソロに転向、クリス・ヒルマンはアル・パーキンスと共にマナサスに参加、とそれぞれが一段上のステージへと駒を進めます。
それぞれの才能が一度きりの通過点で集まった本作は、なかなかに貴重な記録だったと言えそうです。
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