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【Everybody Knows This Is Nowhere】(1969) Neil Young with Crazy Horse ロック道猛進の2ndアルバム

数年前の出来事です。東京・渋谷にある中古レコード店で、私がニール・ヤングの本作を手に試聴の順番待ちをしていると、先客に本作を纏めて3枚も聴いている男性がおりました。

変わった人だなぁと眺めながら順番を待ち、やがて私も試聴を終えたのですが、男性は私に気付いていたようで、待ち構えていたようにズカズカと歩み寄ってこられたのです。
しまった!気に障ったかなと怯えていると、男性は唐突に

「このアルバムで1番音が良いマトリックスってご存知ですか?」


と尋ねてきたのです…。

安心するやら、狼狽するやら(笑) 訳が分からなくなりましたが、話を聞けばこの男性はニール・ヤングの大ファンとのこと。
彼によれば、ヤングという人は昔からレコード音質に相当うるさい人で、市場に出た盤でも納得しないと直ぐボツにして、新しいラッカー盤を何度も切らせていたというのです。

そこでコアなファンにとっては、ヤングが認めた盤とは果たしてどのマトリックス番号なのか?これを探すのが難関難問なのです、ということらしいのです。

そんな事を聞かれて知るハズないのですが、私の性格上それはそれで面白い話だなぁとも感心し、しばし彼とはレコードの事などを立ち話。見ず知らずとはいえ、なかなか楽しく刺激的なひと時でした(笑)

最後は選んだ1枚を買って、軽い会釈で彼は先に店を出ていかれましたが、今でも本作というとこの方を思い出します。色々な人が居ますね〜。

さて、そんなコアなファンにも支えられる本作はニール・ヤングの2ndアルバムです。バッファロー・スプリングフィールド解散後、いち早くソロに転じた彼が、1969年5月に発表したクレイジー・ホースと初共演のロックしまくりのカッコイイ1枚です(^^)


(アナログレコード探訪)

〜日本初回盤・邦題【いちご白書】は2ヶ月で廃盤〜

米国リプリーズ・レコード (RS 6349)
このTAN1色レーベルは1970~74年のプレス。
マトリックス 1F/1K

本作は米国リプリーズ発売。初回盤は2色刷りの "2 tone"と呼ばれるレーベルです。
私のは1色のみの"TAN" と言われるセカンドレーベル盤。でも充分音は良く出ております。

日本初回盤を調べたところ、パイオニアではなく日本ビクターから出てたんですね。
邦題【いちご白書】(SJET-8277)というタイトルで米国より1年半遅れの1970年11月に発売されています。当時の同名映画がヤングやCSN&Yの曲を挿入歌として使っており、急遽決まった便乗発売だったと思われます。
よくこのタイトル付けましたね〜。

画像を拝借させて頂きましたm(_ _)m

しかし翌年1971年1月にワーナーブラザーズパイオニアが発足すると版権が移り、ビクター盤は2ヶ月ほどで廃盤の憂き目に。どおりで中古盤で見ない訳です。
その後パイオニアより71年7月に【ニール・ヤング】(P-8121R)と共に、本作(P-8122R)は連番で登場しています。
私は未聴ですが【アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ】などヤングのワーナー8000番台はそこそこ音が良かったので、再発ながら悪くはないと思います。

ちなみにニール・ヤングの日本盤は【今宵その夜】(75年)以降、米国から送られてくるスタンパーによるプレスとなり、音質は米国盤同等と格段に良くなります。私の知る限り【ズマ】(76年)【アメリカン・スターズン・バーズ】(77年)は米国スタンパー仕様です。
これ間違いなくニール・ヤング本人の指示でしょうね。冒頭のエピソードで、ヤングはレコード音質にうるさいという話はあながち嘘ではないと思います。

クレイジー・ホースの面々とプロデューサーの
デビッド・ブリッグス
この見開きジャケにはバッファロー時代の写真も


Side-A
①"Cinnamon Girl" – 2:58
②"Everybody Knows This Is Nowhere" – 2:26
③"Round & Round (It Won't Be Long)" – 5:49
④"Down by the River" – 9:13

Side-B
①"The Losing End (When You're On)" – 4:03
②"Running Dry (Requiem for the Rockets)" – 5:30
③"Cowgirl in the Sand" – 10:03

A-①"Cinnamon Girl"
2本の歪んだギターを立てたハードなサウンドがカッコいい!クレイジー・ホースとの共演はヤングの魂に火をつけたのでしょう。
左がダニー・ウィットン、右がヤングでしょうか。ヤングのソロはたった1音をずっと鳴らし続けるシンプルなもの。テクニック云々じゃない所にこの方のロック道を感じます。


A-③"Round & Round (It Won't Be Long)"
トリップしたような浮遊感が魅力のフォーキーな1曲。3声ハーモニーが儚いサウンドと溶け合って何とも寂しげな雰囲気。いかにも60年代末らしくて私は好きです。


B-①"The Losing End (When You're On)"
ヤングのポップな一面が伺えるカントリー風ナンバー。重苦しさある本作の中で、表題曲A-②と並んでいいアクセントとなってます。


B-③"Cowgirl in the Sand"
A-④と並んでライブでも人気の長尺ロックナンバー。こちらも代表曲ですね。
得意のマイナーコードに4人だけの決して上手くはない演奏ですが、混沌とした底知れぬエネルギーが伝わってきます。
最後はフェイドアウトしてしまい、まだまだ聴いていたいのに欲求不満のエンディングなんですよね〜。


1960年代の熱気がヒシヒシと伝わってくる本作は、その後のニール・ヤングのスタイルが形成された名作ですね。この人の悲壮感にも似た切迫した熱量には、やはりシビレてしまいます(^^)
本作発表直後にヤングはCS&Nに合流。グループ、ソロ共にますます飛躍していきます。

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