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六人の嘘つきな大学生/朝倉秋成

第7回は六人の嘘つきな大学生/朝倉秋成です!40万部超の発行部数、本屋大賞ノミネート等々の本作をレビューします。
※尚、予告後にネタバレがあります。


1.基本データとあらすじ

1-1.基本データ

1-2.あらすじ

成長著しいIT企業「スピラリンクス」が初めて行う新卒採用。

最終選考に残った六人の就活生に与えられた課題は、一カ月後までにチームを作り上げ、ディスカッションをするというものだった。全員で内定を得るため、波多野祥吾は五人の学生と交流を深めていくが、本番直前に課題の変更が通達される。それは、「六人の中から一人の内定者を決める」こと。

仲間だったはずの六人は、ひとつの席を奪い合うライバルになった。内定を賭けた議論が進む中、六通の封筒が発見される。個人名が書かれた封筒を空けると「●●は人殺し」だという告発文が入っていた。彼ら六人の嘘と罪とは。そして「犯人」の目的とは――。

amazonより

2.主観的評点と向き/不向き

2-1.主観的評点

主観的評点は以下の通りです。

2-2.向き/不向き

本作が向ている人
・殺人が起こらないミステリを読みたい人
・緻密に張られた伏線と回収を楽しみたい人

本作が向いていない人
・王道の本格ミステリしか読みたくない人
・現代の若者事情(~30代)に興味が無い人

3.ネタバレと感想

以下、核心の部分に触れておりますので未読の方はご注意ください。











3-1.犯人と動機

告発文を書いたのは九賀。動機は二次面接でスピラリンクスに落ちた優秀な友人への復讐から、"新卒採用"と言うシステムの欺瞞を暴きたかった。

波多野が残した捜査ファイルにより真相が判明。波多野の未成年飲酒暴露に用いられた写真が鮮明なスミノフでは無くピンボケのラガービールだった事から判明。

各々への告発文とその真相は以下の通り。
九賀:恋人を妊娠させ、中絶させた人殺し。
→中絶は合意の上での中絶。元恋人とは円満に別れており、その後も関係は良好。

袴田:高校の野球部の後輩がいじめを苦に自殺。
→自殺したのは、いじめをしていた本人。後輩達の嘆願により退部を免れる程、袴田は人望があった。

嶌:兄の相楽ハルキは歌手で薬物中毒。
→真相は兄がNY留学中に、本人の意図に反して睡眠中に薬物を無理矢理摂取させられた為。現在は克服。

矢代:キャバクラで働いている。
→興味の範囲が広く学業他の活動で多忙な為、費用を捻出する為時給の良いキャバクラで働いていた。

森久保:オーナー商法の詐欺に関与。
→関わったのはバイトで関わった2日間のみ。本人は詐欺とは分からず、2日目には大学に詐欺を告発。

3-2.ネタバレ感想

前評判通りの傑作でした。就職活動を実際に経験した身からすると、確かにあの時期はある種の熱病に感染しがちな時期なのだと思います。

"意識高い"と揶揄されながらも駆動せずには居られなくする不思議な高揚感が有ります(30歳越えて、妻子も居てナチュラルに"意識高い"やれていれば立派な社会人だと思う)。

そんな社会人になる直前の"最後の思春期"を前半の推進力にしているのが、普通のミステリと異なる点ですね。

後半の謎解き、伏線回収はお見事です。嶌の脚を庇い合う為の動作、嶌兄の相楽ハルキのさりげない登場のさせ方等、ラストで繋がって来ます。"人は相手を一面的にしか見ない"と言うメッセージも良いです。

敢えて言うと、"就活の欺瞞をこの場を通して明らかにしたい"は動機としてちょっと弱い印象も持ちました。

4.まとめ(ネタバレ無し)

以上が六人の嘘つきな大学生/朝倉秋成の感想でした。いかがでしたでしょうか。興味を持たれた方は、是非ご一読ください。

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