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【そして誰もいなくなった】映画やドラマ、舞台化もされた犯人当てミステリをあらすじつきで解説!(予告後ネタバレ)

第13回はそして誰もいなくなった/アガサ・クリスティです!超有名作の本作ですがレビューします。

※尚、予告後にネタバレがあります。


1.基本データとあらすじ

1-1.基本データ

1-2.あらすじ

その孤島に招き寄せられたのは、たがいに面識もない、職業や年齢もさまざまな十人の男女だった。

だが、招待主の姿は島にはなく、やがて夕食の席上、彼らの過去の犯罪を暴き立てる謎の声が……。

そして無気味な童謡の歌詞通りに、彼らが一人ずつ殺されてゆく! 強烈なサスペンスに彩られた最高傑作! 新訳決定版! 

Amazonより

2.主観的評点と向き/不向き

2-1.主観的評点

主観的評点は以下の通りです。

2-2.向き/不向き

向いている人
・あっと驚くどんでん返し/意外な結末のミステリを楽しみたい人
・取り敢えずミステリの定番作品を読んでおきたい人

向いていない人
・特に無し

3.ネタバレと感想

以下、核心の部分に触れておりますので未読の方はご注意ください。











3-1.犯人と動機

犯人は、ウォーグレイヴ判事。動機は正義感に燃えるウォーグレイヴが無罪となった容疑者達にリンチを加えたかったから。芸術的な殺人者となる夢を判事として活動する傍らその衝動が抑えきれなくなった為。

ターゲットを選定し、兵隊島を買い取る。9人のターゲットそれぞれに誘い文句をUN owen(=Unknown、名無し)名義にて差し出す。

島内にて殺害を決行。共犯はアームストロング医師。途中、銃殺されたような描写があるが死んだフリをしていた。陰から残りの招待客を殺害。ラストには、最後の一人となったヴェラ・クレイソーンの首吊りを見届けた後、自殺。小瓶にメッセージをしたため、それを拾った漁師により真相が判明する。

3-2.ネタバレ感想(全体)

十角館の殺人を読んだ後だったので、その関連性のある本書を読んでみました。本書を読んだのはミステリ読み始めの頃だったので衝撃度は相当なものでした(思わず、ジュニアミステリ、早川文庫版、ドラマ版で3回見てしまった程)。

登場人物が10人いるので、その把握に少しもたつく部分があるのですが、そこ以外は正規訳の早川文庫版でも割とスラスラ読み進められる印象です。

十角館の殺人で"全員死んで残った一人も自殺する"、と聞いていたのでヴェラが死んだ時点で物語は終わったのかと思っていましたが、十角館の殺人同様、小瓶に投げ捨てられたネタバレでもう1回真相が語られる造りでした。

3-3.ネタバレ感想(判事の死について)

ミステリにおけるフェアプレーのルールについて、"地の文では真実を書かなければならない"と言うものが有るそうです。

本作では、犯人のウォーグレイブ判事は死んだフリをしているのですが、どんな書き方がされているのか検証してみました。

アームストロングはグニャリと力の抜けた手をとって脈をみた。そして三人のほうに顔を上げた。
まるで感情のこもらない、ぼんやりとした声で医者は言った。
「撃たれているよ…」
「なんだって−あのピストルか!」とブロアが言った。
医者は、やはり気の抜けた声で言った。
「頭を撃ち抜かれている。即死だ。」

第13章P.290より

アームストロング医者は自ら嘘をついていると言う自覚の元にこの発言をしています。また、もう少し前の、判事の体の描写にも、明確な"死"と言う言葉は現れません。

共犯者の口から、判事の死を言わせる事で、読者を騙す、と言うフェアプレーに則っている事が分かります。

ただ、一方で次のような地の文での記述も有ります。

ウォーグレイブ判事の遺骸は部屋に運ばれて、ベッドに横たえられた。

14章292P

ウォーグレイブ判事は実際には生きているのだから、遺骸と言う言葉はフェアプレーに反するのでは無いのか?

これに理由をつけるとすると、「登場人物達の間で死亡認定されたのだから、その認識をそのまま踏襲した」と言う説明をつける感じでしょうか。

"何も言葉を発しなくなった判事の肉体は〜"だと突然、持って回った言い回しになり、読者にミスリードがバレる可能性がある。なので、この表現にしたのかもしれません。

ミスリードの難しい所です。

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