ミーコ姫

クラニーせんせい(作家・倉阪鬼一郎)の秘書をしています。黒猫のぬいぐるみです。よろしくにゃ。
  • まぼろしの三詩集『ふるふると顫えながら開く黒い本』『だれのものでもない赤い点鬼簿』『何も描かれない白い地図帳』から。
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青い花瓶のある室内

その花瓶がいつからそこに置かれているのか、もう知る者はいない。  集合住宅の七階の久しくドアが開いていない室内に、青い花瓶が置かれている。うっすらと埃をかぶって…

迷宮

迷宮の扉が開くのは、百年に一度だと伝えられている。  あくまでも伝承だから、真偽のほどはわからない。そもそも、迷宮それ自体がどこにあるのか、黴臭い地図は何も伝え…

牧場

飼育されているのは、一匹の猿だ。なぜ牧場で猿が飼育されるようになったのか、経緯はひどくわかりにくい。ゆえに、だれも語ることができない。  風采の上がらない一匹の…

踏切

その踏切は開かずの踏切ではない。  開かずの踏切ならさして珍しくはない。警報機が頻繁に鳴り、列車が通る。昏倒しそうになるほど長いあいだ待たなければ、遮断機が上が…

氷山

氷山ではときおり薔薇が咲く。赤い薔薇が咲く。  増殖と分裂を繰り返す氷山は氷の塊だ。氷であり、氷でしかないそのつるつるした表面に、真っ赤な花弁が嘘のように浮かび…

干潟

干潟では大規模な開発事業が企画されている。目玉になるのは、大きなこけしを立てることだ。普通に大きいだけではいけない。見るものが卒倒するほどの大きさでなければ、わ…