怪奇都々逸

 夜の墓場に ふと迷いこめば
 やがて手が出る 首が出る

 夜の鏡に 映るまぼろし
 化けてさまよう 俺の顔

 俺の背中を 映してみれば
 いつの間にやら 人面疽

 破顔一笑 気をつけろ
 鼻が崩れて 骨が飛ぶ

 底無し井戸を 覗いてみれば
 殺めたおまえの 声がする

 そっと置かれた 死人の指が
 今日も冷たい 右の肩

 あたりいちめん 串刺し屍体
 ことに十字架 晒し首

 旅館のおかみが お出迎え
 とうの昔に 惨殺された

 悪魔祈祷書 ここにもあるぞ
 ふと唱えれば 絞まる首

 邪神召喚 呪文を唱え
 見渡すかぎり 目なし首

 断崖絶壁 うしろを見れば
 闇に鈴なり 人の顔

 忘れましたね お恨みします
 絞り出すよに 響く声

 ある朝カーテン 開けてみたれば
 なんと終末 砂の山

 うしろを見るな 絶対見るな
 赤い老婆が 追ってくる

 夢のモスクを たずねてみれば
 天井いちめん 俺の顔

 砂の男を 歌うでないぞ
 おまえの体も 砂になる

 合わせ鏡を 覗いてみれば
 うひゃひゃうひゃひゃと 声がする

 錆びた鉄橋 その裏側に
 終末告げる 謎の文字

 神社のすきまを 覗き見すれば
 向こうに見える 神の目が

 夢の終わりは 果てしがなくて
 いつまで続く 邪神の名

 血糊飛ぶ飛ぶ はらわた裂ける
 首は回るよ 万華鏡

 あたりいちめん 血の海地獄
 そうか俺の手 チェーンソー

 人造人間 いよいよ完成
 首が出る出る 目が開く

 狂ってしまえば 怖いものなし
 四方八方 俺だらけ

 すべての血管 引きずり出して
 手当たり次第 鞭打ち刑

 真っ赤な空で ふと思い出す
 今日は終末 終わりの日

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