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恩返し

 舌切り雀というお話がある。雀の舌を切ったお婆さんは、酷い目にあい、雀を助けたお爺さんは幸せになる話しだ。

 残念ながら、鳥に人間状の舌を持つ鳥は、日本では鳩だけだ。鳩の舌に見える物も鳩ミルクを出す乳首状の物が咽頭部分にあると言うだけだ。

 残念ながら鳩の話しでも今日はない。本日の主役は、スズメだ。

 野鳥は、基本、元気に人間など気にせず飛んでいるし、私たち人間も彼らを気にしない。だけど、なんだかフッと気になって見てみると、面白いことだけでなく、悲しいことにも気がつく。

 冬のスズメは、特に弱肉強食がはっきりする。エサを見つけられないスズメは、羽が膨らんで太っている様に見えて羽がバサバサなのだ。なんでそんなことを知っているかは、昔スズメを助けたことがあるからだ。

 ここからは、思い出話しになるので興味ない方は、読まなくて良いです。

 小学生の頃、住んでいた団地の4階の自宅は、放鳥して逃げたインコが、よく迷い込んでくる家だった。我が家は、初代のモモイロインコ以外みんな迷い鳥たちだった。SNSの無い時代、鳥が逃げたらまず見つからない。インコは一晩で結構な距離を飛んでくるのに、迷い鳥の張り紙は、近所にしか貼らないから、全く生きていることに気がつかない。見つけた方も近所にしか迷い鳥の張り紙を貼らないから、童謡のヤギさんお手紙状態だ。みなさん、放鳥時は、窓を閉めて、バードリードなど安全策を講じて、絶対逃がさないようにしてください。話しがそれたが、話しをスズメに戻す。そんなよく迷い鳥が突っ込んでくる家に、その冬はスズメが突っ込んできた。

 季節は、真冬だった。灯油ストーブの空気の入れ替えで、窓を開けると冷たい風がぴゅーっ
と入ってきた瞬間に何か茶色物も吹っ飛んできた。飛んできたと言うより空から落下してきた感じだ。墜落してきた物の正体はすぐにわかった。正体は、スズメだった。家の居間の中央のコタツにフンを撒き散らし飛び上がるが直ぐに落下、フンを撒き散らし飛び立つまた落下の繰り返し、4〜5回した後、スズメが、カーテンに当たり落ちて動けないスズメを、そっと母が救出した。

 捕まえてみると、このスズメすごく太っている様に見える、だけど、羽根に全く艶がないバサバサですごく太ったスズメは、全く元気がなく飛び立つのでなく、羽根が広がってきた、これは死にそうだとわかったので、死んだインコの残りのエサをやったら、バクバク食べた。毎日、毎日、スズメは、全く懐くことなくフンをしてエサをバクバク食べたら、スズメは、スリムなスズメになっていた。

 どうも、巣立ちしたばかりの若いスズメでエサが見つけられず、さまよっているうちに、だんだん痩せて寒さをしのぐ為に、身体を膨らませて空気の層をまとっていただけだった。だから、羽根がバサバサだった原因は、栄養失調だったからだ。

 確かに、鳥は飛ぶ生き物だから、恐ろしく軽い。重い鳥はそういない。鳥の元気は、羽根の艶でわかることをその時知った。

 スズメを救出してから、季節は春になっていた。すっかり元気になって、ケージの掃除も拒否しなくなって(拒否行動はケージの下を外す時思いっきり手を突いてくる、これが痛い。)私に慣れた頃、別れは突然やってきた。

 母が手のりにしようと提案した。確かにスズメの武蔵みたいに肩乗りスズメは夢だ。(スズメの武蔵は、その頃見た動物映画)素敵だろうなと夢は膨らむ。一度ケージから出してみようと言うことになった。出してみた、飛んだ飛んだ、窓の隙間からフンだけ残して空に旅立った。あっと言う間もない出来事で、涙は全く出なかった。

 その頃の私は、野鳥を触っても、飼ってもいけないことを知らなかった。危うく犯罪者にならないですんだ。スズメが、飛んで行った夜にNHKのメジロの特集で知った。

 スズメの恩返しを期待したが、未だにまだない。

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