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読書の思い出

 森村誠一氏が亡くなったそうだ。森村誠一氏の「人間の証明」を思い出そうとすると、連動して思い出す思い出と本がある。その本は五味川純平氏の「人間の條件」といういわゆる戦争三部作と言われる作品だ。

 高校生の頃私は、文芸部の友達と図書室に入り浸っていた。毎回、毎回、何を読むか友達や司書さんを交えて図書準備室で話していた。その日もご多分にもれず話し込み、誰かが「森村誠一の人間の証明を今度読もうと思う」と言うと、司書さんが「あれを本当に理解しようと思うなら、人間の條件を先に読んだ方が良い」と進めてきた。

 「面白いの?」と聞いたら「面白くないけど、何があったのかよくわかる」とだけ言っていつもの優しい顔からは想像できないきつい表情になった。

 結局、読むと言っていた友達は、森村誠一氏の「人間の証明」は読まなかった。私は、司書さんのきつい表情が気になって、五味川純平氏の「人間の條件」を読んでみた。正直、胸が悪くなった。主人公に全く感情移入できないし、起こった事実(戦争)はもっと酷かったことを考えたら、しばらく、祖父の顔もなんとなく正面から見られなかった。本を読んで、なんとも言えない気持ちになりその後に読んだ森村誠一氏の「人間の証明」もなんともサスペンスだけに片付けられない気分になった。

 高校生にして初めて単純な読後感だけでない読書が存在することを知った。そして、司書さんのきつい表情が、厳しい表現だったと理解できた夏だった。

 「人間の條件」は、言い回しも昔の物で、難解ですが、気になる方は読んでみてはいかがでしょうか。映画もあります。

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