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叱ることでミスが無くなる!?

 人に何かを教える時にどうやって教えればいいのか、最適な方法はあるのかと考えたことはあるだろうか。最適な方法があればみんなの頭が良くなって、ミスも少なくなり、超効率的人間を製造することができる。

 残念ながらそんな空想話は今日では実現していない。ということは最適な方法は見つかっていないと考えられる。叱って教える、褒めて教える、興味があることを教える、マニュアル通りに教える、背中を見て学べなど様々だ。

 教えている側からすれば、自分の中での最適解だと思うかもしれないが、それが必ずしも正解ではない。かと言って正解なんてない。まさに矛盾である。そんな矛盾が生じてしまう原因は、人間の勘違いにある。

 これからはダニエル・カーネマンの『ファスト&スロー』を参考に話していこうと思う。この本は我々の意志による行動と直感による行動にはどのような関係があるのか、またそれらはどのような作用が働いているのかを心理学的実験から解明していくものだ。

 叱ってミスを指摘したほうが相手の飲み込みが早いと感じた人はまた次に教える時にも叱って教えるということを繰り返してしまう。成功事例があるとどうしてもその経験を元に行動してしまう。かえって褒めて教えたほうが相手が理解してくれると感じてしまった人もまた、次の人には褒めて教えようとする。

 しかしこれらは教え方がどうであれ、結果はあまり変わらない。これらには「平均への回帰」が関わってくる。平均への回帰というのは要するにどんなに大きな成功や失敗があっても最終的には平均に留まるということだ。怒られたから次はミスしないとか、褒められたから次も成功させるとかっていう話はモチベーションの話であって、次の結果につながるという因果関係は成立しない。そこの部分を勘違いしてしまうからこそ自信を持つようになってしまう。

 でもその勘違いがなければ多様性のある人を生み出すことはできないと思う。怒りっぽい人も優しい人も楽観的な人も悲観的な人もみんな自分が生まれ育った環境を自分なりに評価して今に活かしている。

 本はいつも刺激を与えてくれる。ただ生きているだけでは到底たどり着けないところまで連れて行ってくれる。だから面白い。

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