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【映画/本】正欲

何の前知識もなくNetflixで映画を見て、内容と正欲という漢字(性じゃなくて正)がぴったりだと思った。
映画と小説の両方見た人は映画の方がマイルドで、小説は突き刺さる感じと
感想を述べていた方がいたので、もっと詳しく知りたいと思い小説を読んでみた。

映画はイメージを膨らましやすく、水しぶきの映像や水のバリエーションが豊富で、それを視覚でイメージできるので良かったけど
小説はがっつり内面に向き合っていて、私は特に大学生の諸橋大也と
神戸八重子が大也の家の前の道路で話す言い合いが良かった。
あなたをわかりたい、一緒に、繋がり、など相手が何を抱えているか見えずに寄り添うなんていう言葉を使うところとか、よくあるし 私が勝手に感じている「絆」や「あなたは1人じゃない」という響きへの違和感によく似た感じだった。少し偽善的な感じ。
普通、マイノリティー、多様性など人は安心のために線を引きたがるのかな。こっち側なら大丈夫というふうに。本当に世間は多数決でできている。

桐生夏月と佐々木佳道は同じ水フェチ同士、一緒に生活し個人を尊重しつつ
お互いが共に生きていく心強さを感じ、やっぱり繋がりを求めてしまうんだな、理解してくれる人は必要なんだな、と思った。
菜月の「どうしよう」「私もう、ひとりで生きてた時間に戻れない」という
セリフにあるように うわべだけの寄り添いというのではなくて、嗜好を否定されず存在を認めてくれるような人とは繋がりを自然に求めてしまうものなのかも。
それほどマイノリティーの中にも入り込めない嗜好をもっているということは孤独だと思う。

明日死にたくないと思えなかった人たちが出会い、恋愛感情はないけど
同士として手を組み、いなくならないからと言えるまでの物語。
いろいろと深く考えさせられる小説でした。
「読む前の自分には戻れない」という本の帯に書かれた言葉。
何も意識しなかった、見ようとしなかった自分には
確かに戻れないかも。



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