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とある島

 私の夫は、よく奇妙な夢を見る。

 睡眠中に見る「夢」は、日常生活で見聞きした情報を整理するために、過去の記憶などとつなぎ合わせて映像化したものだと言われている。誰もが経験したことがあるだろう。

 世間では夢にまつわる不思議な話が少なくない。
 正夢や予知夢のように、現実に起こることを予見する夢を見た経験を持つ人は、意外と周りにいるものだ。

 また、同じシチュエーションの夢を繰り返し見る、いわゆる継続夢にまつわる話もよく耳にする。夢をほとんど見ない筆者にとって、不思議な話に繋がりそうな継続夢を見られるのは、大変うらやましい。

そんな継続夢がテーマとなる経験談を、以下に記載する。

 夫は幼少時より、とある島で過ごす夢を繰り返し見る。なぜ島だと判断できるかというと、港と船着き場、そして灯台を何度も夢の中で目にしているからだ。幾度となく島で過ごすことで、簡単な地図が描ける程度には島の地理を把握している。

 島の中では、島に住んでいる住民たちに頼まれごとを言い渡される。
 釣りをしているおじさんに釣竿を見張っていてほしいと言いつけられたり、子連れの主婦に子どもと遊んでおいてほしいと頼まれたり、相手と内容は毎回異なるそうだ。

 島には前述したとおり港、船着き場、灯台があり、島の外から船に乗って観光客がやってくる様子が伺える。
 また、村長や医者、宿泊所を経営している主人など、役割が決まった人が存在している。
 小さな島にもかかわらず廃線路が島をぐるっと囲むように横たわっており、不自然なところで急に線路が切れているのだという。その他にも商店や飲食店が並ぶエリア、住宅が密集するエリアが確認できている。

 夫は人見知りではないが、あまり自己開示をせず、常に他人に気を遣う人間である。
 しかし、夢の中では島民たちと仲良く過ごしており、非常にリラックスしている。本来の自分の性格に反する行動をしていることに、かなりの違和感を抱くらしい。

 夢を見る頻度や条件に規則性はなく、年齢を重ねるにつれて島の夢を見る頻度は減っていった。
 現在は年に一度見るか見ないか、といったところである。最後に夢を見たのは一年半ほど前で、初めて島の雨の景色を目にした。これまで晴れている昼間の夢ばかりだったので、雨が降る島は印象的だったという。


 2021年2月、新型コロナウイルスの流行によりすっかりテレワークが定着し、私はインターネットラジオを聴きながら仕事をすることが習慣となっていた。

 若手作家のはやせやすひろ氏、岸本誠氏の両名から成るオカルトユニット、都市ボーイズが配信するラジオ番組「都市伝説 オカンとボクと、時々、イルミナティ」(通称 都市ミナティ)を視聴していた。その日は視聴者からの投稿を読み上げるコーナーがメインで、冒頭に以下のタイトルのメールが読まれた。

体調を壊すと必ず見る夢の島

 内容は、「幼いころから高熱が出て体調を崩すと見る、島の夢がある。夢の中ではいつもの島だと理解していて、起きたときははっきりと夢の内容を覚えている」というものだった。

 以前から夫の島の夢を聞いていた私は、その投稿に注意深く耳を傾けた。


・島の夢を見たときには明晰夢のように、「いつもの夢だ」と理解している

・島民に閉店セールに連れていかれる、暗い部屋の紐をひっぱるのに悪銭苦闘している、自転車で島を回る、屋台や雑貨屋さんを巡ってキラキラしたボタンを見ている、雨の日に泊まるところを探しながら雨宿りのため雑貨屋さんに入る、など毎回違うことをしている

・夢の中では一人ではなく、いつも島民と一緒に行動している

・島民は現実世界の知り合いではない

・投稿者は人見知りなのに、夢の中では島民と仲良く遊んでいる


 あまりの共通点の多さに鳥肌が立った。同じ島の夢を見ているのではないか、と感じた。夫にそのメールの内容を伝えたところ、あまりにも類似しているので、人類に共通している潜在意識のようなものではないか、とのことであった。

 たかが夢の話だが、継続的に見ており、知らない他人とこんなにも共通点のある夢を見ることがあるのだろうか。ちなみに、夫の出身地は都市部であり、育ってきた地域の原風景というわけでもない。

 定期的に見る島の夢。似た夢を見たことがある方は、ぜひご一報ください。