こっとんちゃ

霊感1ミリもないひとが、実話怪談を書いているnoteです。

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  • 夢の話

    少し不思議な夢の話を残しています。

  • 実話怪談

    どこかの誰かが体験した不思議な体験、実話怪談をまとめました。

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共感覚

 共感覚という現象をご存じだろうか。文字や数字に色が付いて見えたり、音を聞くと色や形、感触を覚えたりする知覚現象である。通常の視覚や聴覚といった感覚に加えて、別の感覚が無意識に引き起こされる。  圭太さんは何らかの音を耳にすると、それに色、形、肌触りを感じる共感覚の持ち主である。物心ついた頃から音楽や人の声が鮮やかに感じられていた。実際に視界に映るというよりも、脳内で映像が再生される感覚らしい。  特に人間の音声や足音には非常に敏感で、普通の人であれば感知できないような距

    • とある島

       私の夫は、よく奇妙な夢を見る。  睡眠中に見る「夢」は、日常生活で見聞きした情報を整理するために、過去の記憶などとつなぎ合わせて映像化したものだと言われている。誰もが経験したことがあるだろう。  世間では夢にまつわる不思議な話が少なくない。  正夢や予知夢のように、現実に起こることを予見する夢を見た経験を持つ人は、意外と周りにいるものだ。  また、同じシチュエーションの夢を繰り返し見る、いわゆる継続夢にまつわる話もよく耳にする。夢をほとんど見ない筆者にとって、不思議な

      • 夜の巡回

         伊織さんは大学卒業後に、看護師として働き始めた。勤めているのは大学病院の整形外科である。三交代制のシフト勤務で、夜勤も月に数回こなしていた。  夜勤では、病室の見回り業務がルーティンに組み込まれていた。消灯後に病室を巡回し、患者さんがちゃんと眠れているか、変わった様子がないかを確認する作業である。  その日の夜勤人員は伊織さんと先輩の女性看護師、花田さんの二人だった。定刻になったため、伊織さんは「見回りに行ってきます」と花田さんに声をかけ、ナースステーションをあとにした

        • マニラの黒い影

           現在三十代の優人(ゆうと)さんが二十代前半の頃に、短期の語学留学でフィリピンのマニラに半年ほど滞在していた。  その間暮らしていた家は、アジア各国からの留学生が集う集合住宅だった。住人のほとんどが二人一部屋でルームシェアをしていて、優人さんも年齢の近い日本人男性と同じ部屋で生活していた。  その日、ルームメイトは外出しており、優人さんは部屋で机に向かって本を読んでいた。読書に没頭している間に日が落ちて薄暗くなってきたため、一旦席を離れて部屋の明かりをつけた。読みかけの本に

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          隣人

           大学卒業が間近に迫った三月上旬の昼下がり、恭介さんは、下宿をしているアパートでのんびりと過ごしていた。  長く過ごしたこの部屋も今月末で引っ越しか――と四年間の出来事に思いを馳せる。  築年数は古く、ほかの住人の生活音が聞こえることもあるが、最上階の突き当りとなる角部屋で、周辺環境にも問題はなく、気に入っている部屋だった。  ふと隣の部屋から硬いものを叩く音が響いてきた。金槌で釘を打っているのだろう。隣に住んでいるのは、おそらく一人暮らしの男性である。  恭介さんが入