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好きな百人一首

 最近、百人一首熱が冷めない孤月です。

 みなさんは好きな百人一首ありますか?
 私は、百人一首の中でも、恋の歌が一番好きなのですが……やはりこれは恋愛小説しかと言って良いほど恋愛小説を多く書いているからでしょうか……

 さて、本題ですが、私の好きな百人一首は

しのぶれど 色に出にけり 我が恋は 物や思ふと 人の問ふまで

です。えっと作者は平兼盛さんです。

この歌の意味はですね、

隠れて恋をしていたけれども、その恋心が滲み出てしまったのか、「恋煩いをしているのですか?」と人に聞かれてしまった。

でした。わかる! と思われた方がいると思います!

「絶対、私が〇〇くんのことを好きなのがバレていないはずだ! と思っていた矢先、
「え? 絶対あんた、好きな人おるやろ?」(誰が好きかも見当がついている様子)で聞かれたことはありませんか?

ついでに申し上げますと、この孤月もそうです。

この歌って、なんだが、今の恋とも繋がりがあって共感しまくってしまいますよね!

 この歌イメージで、本当にあったかはわかりませんが、少しお話を考えてみました! たまに、平安時代の物や、衣装の用語があるかも知れませんが、まあ、そんなもんがあるんだなという感覚で見てください! もし、是非ともその用語の意味が知りたいという方はコメント欄でご質問ください!

「どうしたのか、中将」
「は、帝。失礼いたしました。少々考え事を」
「そうか、そなたの浮いた噂は聞くことはないが、なにか、悩むことでもあるのか」
「帝にお聞かせするほど大層なことはありません」
「ところで、そなたの姉が、そなたに会いたいと言っておった故、会いに行くとよい」
「ありがとうございます」

 姉がいる麗景殿へ、向かう。姉は女御として、入内していた。
「女御様に、私が来たと伝えてくれないか?」
 手前にいた女房に声をかける。
「はい、中将様」
女房は何やら頬を染めて、奥へ下がっていった。しばらくすると
「中将様、中へどうぞ」
 と言われ、廂に上がった。
「女御様、そろそろ、秋になりますが、体調はいかがですか?」
「ええ、大丈夫ですよ。それよりも、あなたの好きな青の珍しい玉飾りのついた扇があるの、花茜、取ってきて」
 女房が、姉に手渡し、姉が御簾越しに渡してきた。
「ありがとうございます」
「そんな堅苦しくしなくていいのに。そう言えばだけど、何か良い縁談はないのかしら?」
「そ、そんな。私はまだ……そんな、縁談など」
「そう? そう言えばだけれども、帝が左大臣の娘はどうかと、聞いてきてね。どうかしら? 悪い噂も聞かないし、容姿端麗で穏やかで賢いそうよ」
 女御は御簾越しでもわかるほど、ワクワクした顔をする。
「そうなのですね」
 なんとかこの場を切り抜けようと、言葉を無難につなげる。
「誰か意中の方でもいるの?」
「え?!」
「図星のようね! 誰なの?」

「女御様、藤壺の女御がご挨拶にと」
 ドキリとした。思わず顔が熱くなる。
「あら、そう。それではまた今度ね。何か良い縁談がないか帝に聞いておくわ」
「はい」
 自分が何を答えているのかもわからないまま、麗景殿を出る。すると、目の前に藤壺の女御のご一行がいるのに気が付いた。慌てて、礼をする。
「あら、中将殿、麗景殿の女御様とお話ししていたのですか?」
 鈴のように凛としていて優しい声がする。
「はい」
「そう、麗景殿の女御様がいつもあなたのお話をしてくださります。本当に仲がよろしいのね」
「唯一の姉ですから」
 中将はそっと視線を上げた。
 藤壺の女御は顔を扇で隠していたが、それでもその麗しさが裾からこぼれ出るようだった。
 濡れ羽色の髪、扇を持つ、白魚のような手、上品で、藤色を使った襲。
「そろそろ、女御様、ご挨拶に向かわなくては」
「そうね。中将殿、話せて楽しかったわ」
「私もでございます。それでは失礼します」

 その場を離れてから、少しだけ振り返る。女御の後姿を目に収めると、首を静かに振って、後宮を出た。

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