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2021MY映画BEST10

僕は映画が好きで。年間50回は映画館で見ることをノルマとし、できれば新作を50本見たいなぁと思っています。

2021年は劇場で55回、新作を50本見ることができまして。その中から10本を選んだポストをfacebookに書いたところ、ステキな友人から「takakuさんのコメント読むとその映画をすごく見たくなります。雑誌でコラムなど書いてみては…」というどうかしてるくらいの褒めをくださいまして。せっかくなのでこちらにまとめておこうと思います。これを読んだあなたも、映画を見に行きたくなりますように。

2021MY映画BEST10


ベストは「サマーフィルムにのって」。僕もそうですけど、映画好きな人って「いわゆるチャラい映画(恋愛ドラマの映画化とか)」をバカにする傾向がありますけど、その映画も誰かを励ましたり誰かの支えになっていたりするわけですよね。あっちゃダメな映画なんて1本もないよなということを、コロナ禍に苦しむ世界の映画界の中で、洋画がなかなか入ってこない状況でも、そういう映画たちが日本中の映画館を支えた様を見た僕らは認識するべきなわけで。それを映画を通して感じることができるのがこの作品です。
とても不思議な設定の青春SFですが、何か大好きなもの・大事なものがある人の心に刺さって残り続ける、そんな作品です。
出演陣も「ネクスト伊藤沙莉」最右翼の伊藤万理華さんと、今後大注目の河合優実さん(「佐々木インマイマイン」「由宇子の天秤」と来て、来年は「ちょっと思い出しただけ」と「愛なのに」が控える)の共演が見れるという、今後の邦画を見ていく上で重要な一本だと思います。

残りの9本は順不同です。

「すばらしき世界」
最後までサマーフィルムとどちらをベストにしようか迷いました。今年の主演男優賞はダントツでこの作品の役所広司さん。殺人で収監され、出所した人間のリアリティをこれでもかと表現する「演技の鬼神」。前科者の社会復帰(の難しさ)という大きなテーマについて考えさせられることはもちろん、報じる側の悩みや悪意のない偏見や差別、それをこれ見よがしでなくそこに当たり前にあるものとして描いていく西川美和監督の手腕に脱帽です。公務員的にはケースワーカー役の北村有起哉さんの素晴らしさも必見ですし、別ポスト(facebook)で書きましたがTVディレクター役の長澤まさみさんのスタイリングの素晴らしさなど、語りつくせない魅力あふれる作品です。

「マーメイドインパリ」
人魚姫の物語を現代のパリを舞台にしたラブストーリーに。ラブコメの定番と普遍的なストーリーを最高の美術と衣装で表現する、新と古が共存する作品。こういうポップさ、かわいらしさの作品を年に何回か見たいなと思わせてくれます。

「ミナリ」
主要キャストほぼ韓国人による韓国語メインのハリウッド映画にして、アカデミー作品賞候補作。本当に大切なもののことを、そのことには決して直接触れることなく描く、つまりとても映画的な作品。一見すると家族とその絆を描いているように見えて、その実は「赦しの物語」。とても(本質的に)宗教的な人間賛歌であり、邦画の素晴らしさに圧倒された2021年においても絶対にbestから外すことなどできない特別な一本。

「ベイビーわるきゅーれ」
衝撃という意味では間違いなくNo.1。高校を卒業したばかりの10代女子殺し屋コンビによる、ほのぼの日常と天職としての殺し、そして「普通の」社会へ適合することの難しさをバランスよくコミカルに描きだし、作品としてはカルト映画の枠を大きく超えたホームラン。一日限りのシネコン上映が即日完売することも納得の、このジャンルにおける金字塔。2021年はベイビーわるきゅーれが上映された年として記憶されてもいいとさえ思う(本当はもう一つあるのだけど、それは後述)。スタントウーマンとして活躍(ジョン・ウィック4にも出演予定)する伊澤彩織と、とてつもない演技ポテンシャルを有する高石あかり、この主演二人は絶対に覚えておいて損はない。

「偶然と想像」
前述のとおり「2021年はベイビーわるきゅーれが上映された年」。そして2021年のもう一つは「濱口竜介監督の作品が2本上映された年」だ。その一本「ドライブマイカー」はアカデミー国際長編映画賞ノミネートほぼ確実、受賞も最有力と言っていい状況であり、ひょっとすると主要部門にも手が届くかもしれない(パラサイトからの流れも当然ある)。ただ、僕としては圧倒的にもう一本の方、この「偶然と想像」という短編集の素晴らしさにやられまくりました。誰にでも起こり得る物語をこんなにも色鮮やかに鮮烈に描き出せることこそが「才能」と呼ばれるべきものだと思うし、濱口竜介監督は紛れもない天才だと思うし、これから何本も彼の作品をリアルタイムで見れるだなんて…この時代を生きていてよかったとさえ思う。そしてもちろん彼の最高傑作はこれからだ。

「街の上で」
2021年を「邦画豊作の年」と決定づけた、「まだ名前が付いてない感情を表現する名手」今泉力哉監督の傑作。僕の青春の街でもある下北沢を舞台に描かれるのは、恋が始まるずいぶん前の「あれ?」って感じの違和感のようなもの。物語の素晴らしさのためにキャラクターを無惨に扱うというよくある手に対して、まるで「たまにはいいでしょ?」とでも言いたげに、ドラマティックと言う名の残酷描写をことごとく避けていくことで増していくばかりのキャラクターへの愛。2021年屈指の「またあいつらに会いたい映画」であり、中田青渚演じる城定イハは2021年ベストガール確定。

「American Utopia」
NYブロードウェーで実施されたデビッド・バーン(Talking Heads)のミュージカルを映画化したこの作品。一言で言うなら「2021年最も映画館で見る意味がある映画」。劇場などで何かを見る機会が著しく減った僕らにとって、この作品が見せつけてくる「観客がいる意味」のような映像と音は、これからの僕らの未来か、もしくはノスタルジックな過去か。かつて「植民地的」とも揶揄されたTalking Headsの曲やパフォーマンスが、21世紀の新たな解決策のようにも見えてくる不思議さ。しかもそれを監督するのが黒人映画監督の雄スパイク・リー。考えればいくらでも考えられる作品でもあり、ただただ楽しいミュージカルとして楽しむことも可能、つまり最高。

「Swallow」
2021年の幕開けを告げた快作。異食症(食べ物ではないものを飲み込みたい症状を抑えられない病)にかかった、一見なんの不自由もなく見えるセレブ妻の主人公が、妊娠をきっかけに心身共に異常をきたし始める様子を極端に美しい映像で映し続けるホラー作品。とは言え、グロ描写のようなものはほとんどなく、むしろそういった作品を装った、本質的にはとても哲学的なテーマを潜める、マイノリティの生きにくさとそこからの解放を描く掛け値なしの傑作。「映画はすべてのシーンがポストカードとして成立すべき」と思う自分にとって、2021年最もそれにふさわしい映画でもありました。美しいと危うさは比例する。

「花束みたいな恋をした」
2021年の映画を語る上でやはりこの作品は外せない。誰かと(基本オンラインで)話した時間としては間違いなくダントツNo.1。とにかく感想をシェアしたくなりすぎてしまう、ある意味危険な一作。あえて一つポイントを絞れば、菅田将暉演じる麦くんがサブカル面からどんどん遠ざかる様子を、多くの人が「なんでだよ…麦くん…」と嘆いているようですが、僕的に麦くんは「大学生の一時だけサブカルにハマったマン」で、おそらく体育会系なマッチョな価値観が元々あって彼はそこに帰っていっただけという理解です。きっとあの仕事も(もちろんつらさもあるだろうけど)彼は結局楽しんでいたんだと思うし、決して彼の人生が就職によって不幸になったわけじゃないと思うんですよね。という、見ていない人には全く伝わらないコメントで本当すいません。もしまだ見てなくてこれから見る人、うらやましいなぁ。ぜひあなたの感想を聞かせてください。花束は長持ちしないけど、刹那の美しさを見せる。

以上です。

これ作りながら花恋の予告編見てしまったんですけど…ヤバいっすね。

また心の中に麦と絹が帰って来ちゃう…


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