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英国帰りのウエンツさんにも注目!なぜ?どこで!?“逆再生”で考えさせられる舞台

島田薫です。

4月から発令されていた緊急事態宣言は延長されましたが、5月中旬から条件付きで少しずつ舞台が幕を開けています。

ミュージカル界の巨星スティーブン・ソンドハイム氏の作詞・作曲で、初演から40周年を迎える「メリリー・ウィー・ロール・アロング」も、東京・新国立劇場で5月17日から上演が始まりました。

ショービジネスで成功を夢見る若者たちの友情と挫折を描いた作品で、平方元基(ひらかた・げんき)さん、ウエンツ瑛士さん、笹本玲奈さんが中心となり、昆夏美さん、今井清隆さん、朝夏まなとさんなど、ミュージカルでおなじみの顔ぶれがそろいました。


特徴的なのが、現在から始まり、過去20年間を逆再生していく展開。平方さん演じるフランクは、ブロードウェイの名もなき作曲家からハリウッドのプロデューサーへと転身し、世間的には大成功を収めますが、下積み時代から親しかったチャーリー(ウエンツ)とメアリー(笹本)との絆は失ってしまいます。そして、取り巻きだらけのパーティーで、「あの時の選択は正しかったのか?」「あの時違う行動をしていたら…」と、いくつもの人生の岐路に立ち返っていきます。

物語がどんどん過去に進んで行く手法は、観る側としては若干混乱もあります。過去の選択がどうなるかが先に出てくるので、“今”をよく見ておかないといけません。


逆再生の構成に苦労したのはキャストも同じだったようで、今年でミュージカルデビュー10周年となる平方さんは、逆再生のほかにも、難解な曲、リモート稽古と、今までのどの作品よりも大変だったと言います。ただ、舞台に立てばスタイルのよさは目を引くし、フランクの悩む様子が伝わってきます。

また、リモートで演出を手がけたのは、ウエンツさんが昨年まで留学していたウエストエンド(ロンドン)の演出家。ウエンツさんにとってはこれ以上ない最高のシチュエーションで、帰国後初のミュージカル出演となりました。成功して変わっていく親友への複雑な思いを、ウエンツさんならではの視線でリアルに演じています。

平方さん、ウエンツさんと同学年で、そろって初共演ながらすぐに打ち解けたという笹本さんも、冒頭からお酒に溺れた派手な登場で、現在がうまくいっていないことを一目で分からせてくれます。


「なぜこうなってしまったのか」
「どこで間違えたのか」

ほんの少しのボタンの掛け違いで、その時の判断で、未来は変わってしまいます。虚しさ、寂しさ、後悔、いろいろな感情が湧いてきて、果たして正しい選択とは何だったのか、自分の人生はこれで合っているのか、他に選択肢はなかったのかなど、さまざまなことを考えさせられる作品です。


※東京公演は5月31日まで。6月には愛知、大阪でも上演。


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