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映画「すばらしき世界」で考える“人との付き合い方”

こんにちは。島田です。

最近、プロダクション関係者や番組スタッフなど、とにかく各所から「絶対に観たほうがいい!!」と薦められていたのが、役所広司さん主演の映画「すばらしき世界」。先日、ようやく観に行ってきました。皆さん、ご覧になりましたか?


この映画は、直木賞作家の故・佐木隆三さんのノンフィクション小説「身分帳」を読んだ西川美和監督がほれ込み、映像化を実現させたもの。殺人を犯し、刑期を終えた元ヤクザ・三上の人生を通して、人間のありかた、生き方を描いていくのですが、とにかく人の持つあらゆる感情に訴えてきます。観た直後よりも、数日かけて、じわじわと迫ってくるというか、余韻とはまた違うナニカが私の中をめぐっていました。というのも、このストーリーが私たちの日常に関係なさそうで関係のある、とてもリアルなものだから。


役所さん演じる三上は、殺人の刑期を終えて13年ぶりに出所したものの、世の中になじめず、追いつけず、でも、自分を押し殺してでも世間に順応しなければ生きていけず。苦労や葛藤を抱え、新たな人生を模索する三上を見ていると、“前科者との関わり”が実は身近にある社会問題なんだと気付かされます。なかなか表に出てこないけど、とても大事なことなんですよね。


脚本はもちろん素晴らしいのですが、それを活かし、さらに引き上げているのが役所さん。この映画では、改めて役所さんのすごさを堪能することができます。

役所さんといえば、映画「孤狼の血」(2018年)に暴力班捜査係の刑事役で主演。ヤクザよりもヤクザっぽい役どころで、内臓をえぐられるような芝居が本当にすばらしかったんです。いい意味で、観ていて本当に苦しかった。

その役所さんが「すばらしき世界」では元ヤクザを演じています。人を殺めた過去はもちろん許されるものではありません。が、三上にだって優しさもあれば正義感、人への恩義も当然ある。純粋でアツい男だからこそ、器用に生きられないんですね。ケンカっぱやく、すぐに手が出てしまい、人を半殺し状態にまでしているのに子供みたいに笑っているシーンは、本当に切なくなりました。そして、「もし三上みたいな人が近くにいたら?もしそれが家族だったら?」…そんなことも考えさせられます。


ちなみにこの映画、主人公は三上ですが、物語のキーパーソンは、三上に密着するドキュメンタリー番組のディレクター・津乃田です。この津乃田を演じる仲野太賀さんもまた、いいんです。当初は本当に何をやってもダメダメな情けない男だったのが、三上と接することで成長していきます。映画を観る私たちは、徐々に津乃田目線で物語に入り込んでいけるようになっています。

また、長澤まさみさん演じる津乃田の上司のプロデューサー・吉澤の言葉も、かつて番組で密着取材をしていた身としては「分かる!」の連続。テレビの裏表もとてもリアルに描かれています。


仲野さんや長澤さんだけではありません。三上の身元引受人を演じる橋爪功さんやその妻役の梶芽衣子さん、三上を万引き犯と間違えるもなにかと世話を焼くスーパーの店長役の六角精児さんの演技も、感情をゆさぶります。

三上のような人間は、おそらく、他人から見て見ぬふりをされ、距離を置かれがち。人との触れ合いが減ることはあっても、増えることはなかなかありません。劇中に出てくる三上にかかわる人たちも、最初こそ敬遠していましたが、三上と触れ合ううちに、親身になっていきます。すぐに短気を起こす三上だけに、「めんどくさい。関わりたくない。怖い」というのが本音の中、なんだかんだ、それぞれの形で三上に寄り添う姿が印象的です。


私は、「孤狼の血」を観ていたからこそ、「すばらしき世界」をリアリティーを持って観ることができました。同じ“ヤクザ系”でも、180度違うテイストですが、これから観に行かれる皆さんには、ぜひセットで観賞されることをオススメします!

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