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ferm LIVING Stories vol.25 Isis-Colombe の家

今回ご紹介するのは、Isis-Colombe Combréas のストーリー。


ここ数年、日本の大手書店では海外からのカルチャー雑誌の数々が
置かれるようになってきましたよね。
そんな中、感度の高い人々から熱い支持を受けているのが、フランスの『MiLK Magazine』。


今回の主人公 Isis は、このマガジンの創始者なのです。家族と住むパリのご自宅を訪れ、彼女の持つストーリーに耳を傾けてみましょう。

〜 Isis のおうち 〜


Isis-Colombe Combréas は、パリ14区、モンパルナス地区の境目に
居を構えている。


『MilK Magazine』の創始者は写真家であり、2003年にともに『MilK Magazine』をつくりあげた夫の Karel Balas と二人の16歳の娘 Hiroko、そしてハンサムなペルシャ猫の Jack とともに、この180平方メートルの大きなアパルトマンに住んでいる。

Isis-Colombe Combréas / MilK Magazine 創始者


(Isis)

私たちがここに住んで、17年になります。
最近上の子の Aliocha が、工学の勉強のために家から引っ越していきましたが、ここは私たち家族の家なのです。
この建物は他にはないほど非常に美しく、1930年代に建てられたものです。
セーヌ川左岸に住み、1区で仕事をするので、歩いたり電動自転車によく乗ったりしますね。セーヌ川を渡り古い地区を歩くことは、私にとって常に素晴らしい経験です。


Isis の住まいは3フロアにまたがっており、古典と現代とが実に上手く融合したデザインだ。高い天井、幅広のパネル、オリジナルの天井のレリーフなどが戦前のパリの古典的建築様式を呼び起こす。

ピューターブルーの樹脂が床材のすべてを覆い、新たに追加された金属製の梁が部屋全体に広がりすべてに繋がりをもたせている。

一見すると、彼女のことをパリジェンヌだと思うかもしれないが、
Isis は生まれも育ちもスペインの島、イビザ島である。
文学と映画を学ぶために、若かりし頃にパリにやってきたのだ。


(Isis)
私は芸術家の両親の元、とても強烈なカウンターカルチャーの中で育ちました。1970年代ですね。私たちは小さなヒッピーコミュニティーの中に住んでいました。


アーティストたちに囲まれて成長した Isis。その創造性は彼女の DNA の一部であると言えるだろう。
しかし、彼女がデザインに興味を持つきっかけとなったのは、両親だけではない。


(Isis)
私と10歳しか違わない叔父は、90年代初頭に YSL(イブ・サンローラン)で働いていました。彼は自分のデザイン観の多くを私に伝えてくれました。
その時代の美学というものが、私は今でも好きなんです。

Isis は学業を終えると出版アシスタントとして働き、その後はテレビの司会者として様々な子供番組で活躍した。
13年間、彼女は表方として、そして裏方として制作や司会を務めてきた。


Isis がその後、2003年に『MiLK』との旅を始めたのは、彼女の織りなす数多くの才能と経験があったからだ。


文学の教養、子ども向けエンターテイメントの経験、出版社で過ごした時間、そして特に、母としての体験だ。

彼女の目標?


それは、子どもの頃の世界への現代的な旅に誘うこと。
もしくは、簡単に言ってしまえば、「家族生活の芸術を描くこと」なのだ。

現在出版されている『MilK Magazine』には、サスティナブルな子供服や子供用のインテリア、家族に優しい旅行先などの最新情報を掲載するだけではなく、ハンディキャップを持つ子の子育てや老若男女のためのマインドフルネス、子供の認知発達に及ぼすテクノロジーの影響など、現代の家族が直面する非常に重大な疑問を追求した記事が満載だ。


『MilK Magazine』は季刊誌としてフランス語版と英語版で出版されており、
現在では更にデザインに特化した『MilK Décoration』を日本語、韓国語、そして中国語でも出版している。


Isis は現在、『MilK』の管理編集者兼編集長および、6年前に始めた
クリエイティブコンサルティング会社「FOVEA」のディレクターを務めている。そんな仕事ぶりにも関わらず、彼女は謙虚だ。


彼女は控えめにこう言う。



(Isis)
ユニークで刺激的な雑誌を作りたいと思っています。
『MiLK』では美しくてサスティナブルなものに興味があります。
フランスのような伝統を重んじる国では、新たなライフスタイルを紹介することが決して簡単ではないのですけどね。

新しい何かに挑戦する Isis の勇気は、彼女の住まいにも確実に反映されている。

彼女の趣味であるたくさんの陶磁器コレクションには、80年代のミラノに現れたイタリアのデザイン集団 Memphis Movement のアーティストたちの作品もある。
ミッドセンチュリー・モダニズムのミニマリズムを明らかに拒絶。
その代わりにアーティストたちは生命力ある色と幾何学的な模様を取り入れ、アール・デコ、ポップアート、そしてキッチュが顔を合わせた。


この反逆的な精神の血脈が Isis の家に流れていると感じられる。
特に家全体に存在する黒い金属製の梁とパンチングメタルの壁は、1930年代オリジナルの漆喰のレリーフとの強烈な対比を生み出している。

(Isis)
金属製の梁は空間を再配分し、1930年代の元々の間取りを変えるのに機能的な役目を果たしています。
さらに、これは予想していなかったことなのですが、空間にモダンな要素ももたらしてくれました。私はブルータリズムとビンテージの要素が、モダンデザインに混じり合うさまがとても好きなのです。


この梁は、6年前にイタリアの建築事務所UdA(現 MARCANTE-TESTA)がデザインし取り付けたものだ。
金属パイプとパンチングメタルによるユニークなラックシステムをベースに、
開放的な共有スペースを作り出すことを可能にした。
まさに、家族の生活には理想的である。

また、元々の間取りに不足していた、新しくて機能性のある空間をも可能にしている。

そうしてできた空間の一つが、マスターバスルームだ。
ベッドルームとはカラーガラスとパンチングメタルで仕切られているだけである。

ここでは金属製の梁の直線的なラインと、同じく金属製でクリーム色の渦巻きとがコントラストをなしている。Isis は遊び心でタオル掛けとして使用している。ここに、このユニークなパリのアパルトマンの魅力があるのだ。
大胆で美しいデザインの要素に満ちているが、それらは全て、軽やかさと喜びの感覚で動いている。


住まいの調和を作るものとは何かと Isis に尋ねたとき、彼女の答えはシンプルだった。

「家族の思い出、旅先で出会った品。
そして、愛猫のほのぼのとした存在ですよ」


***


いかがでしたでしょうか?


私自身、『MiLK Magazine』のファン。
まさか彼女がこの連載に登場し、彼女自身のストーリーを聞ける日が来るなんて!……と、一人感動しております。


ただもちろん、最初は彼女の家の素晴らしいインテリアに目がいきますが、
読み進めていくうちに、ふと、この「人」こそが、住まいを「我が家」足らしめるものなのだと気がつきます。


人柄に触れることのできる Isis のおうち。


今の我が家に不満があるわけではないけれど、何か不足していると感じていた私にとっては、大きな発見となるインタビューでした。




それでは、次回もお楽しみに♪

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