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終わりよければ

今日は雨が降ったり、曇ったり、また降ったり、
そして午後は明るくなって晴れてきました。

「昔、イギリスは一日の中に四季があるって聞いたんだけど、
この頃は日本だってそうだよね。」
「朝晩は ちょっと肌寒いけど、日差しがある日中は
やっぱり暑いよね。」
「まだ八月だもんね。」
「このまま秋になっていくのかなぁ。」
「日暮れは本当に早くなったよねー。」

こざるカフェは、もうすぐ おやつの時間です。

「あれ? 」
パソコンを見ていた こざるちゃんが
素っ頓狂な声を出します。

「どうしたの?」
「昨日、ぼくが 急いでポストに投函しにいったら
郵便屋さんが行っちゃった後で、がっかりして…
でも そのまま投函したレターパックなんだけど….。」

昨日の夕方、こざるちゃんは、りこちゃんの古くからの友達の
里山の りこちゃん宛の手紙を お菓子と一緒にレターパックに入れて
急いでポストに入れに行きました。

「ぼく、コンビニの中のポストが、一番、集荷が遅い時間だからって
入れに行ったんだけど、そしたら集荷時間が変更になっていて、
もうとっくに集荷し終わっていたんだ。」

集荷時間は、こざるちゃんが着く20分前に変更になっていました。

「ぼく、がっかりしたんだけど、でも翌朝の10時過ぎに
また集荷してくれるから、それでいいやって入れてきたんだ。」

里山の りこちゃんは、里山に住んでいて、
りこちゃんと同じ名前の 古くからの友人です。
その 里山の りこちゃんは、8月に入ってすぐに暑中見舞いの絵葉書を
送ってくれました。

「りこちゃんも、ぼく達も大喜びで、すぐに返事を書こうって言ってたんだけど、
どんどん日にちが経っちゃって….」
「それで、一日でも早く着くようにって、やっと昨日、用意して、
それで出しに行ったんだ。」

りこちゃんと こざる達は、どの便箋に書こうか、
何か 少しお菓子も一緒に送ろうか、などと言っているうちに、
もう8月も終わりに近づいてきて、
それで、昨日、えいやっ!と用意して、ポストに出しに行ったのでした。

「それで、今、どの辺りに郵便物がいるのかなぁって追跡して見てみたら、
昨日、ポストから回収しているんだよ。」
「え! そうなんだー。予定時刻の20分よりも更に遅れて集荷しに来たんだね。」
「うん、そうみたい。今、里山の りこちゃんちに配達中だよ。」
「よかったねー。一日でも早くっていう ぼく達の願いが
通じたみたいだね。」
皆、うんうん頷きます。

「昨日、りこちゃんに、ポストの集荷時間が変更になっていて、
急いで入れに行ったんだけど、間に合わなかったって言ったんだ。」
「うん、りこちゃんは何て?」
「『また明日、集荷してくれるから大丈夫。』って言って、
『そんなの大した問題じゃないよ。』って。」

江戸っ子りこちゃんは、高齢となった今では、
ちゃきちゃき早口で喋ることは、そうそうありません。

「りこちゃん、前だったら、きっとこう言ったと思うよ。
『そんなことは どうでもいいよ。
明日になれば集荷されて、明後日になれば届くんだから、
大した問題じゃない。
それよりも、急いで走って転んだり、事故にあったり、
そっちのが注意しないといけないよ』。」

皆、うんうん頷きます。

「りこちゃん、自分の方が高齢で危なくても、
いつも ぼく達に、階段で転ばないように気をつけて、
とか言うよね。」
「うん、自分の方が転ばないように気をつけないといけないのにね。」

りこちゃんにとっては、いくつになっても こざる達はこざるのままなのです。

「あー、でも今日届くんだー、よかったー。」
こざるちゃんは嬉しそうです。

「終わりよければ全てよし、だね。」
皆、笑顔で うんうん頷きます。
この言葉も、りこちゃんの お気に入りの言葉です。

「りこちゃんに、もうすぐ届くよーって言って来る」
こざるちゃんが鼻歌を歌いながら、
りこちゃんの部屋へ向かいます。

「りこちゃーん、里山の りこちゃんに出した手紙、
もうすぐ届くよー! 終わりよければ全てよしだよ!」

こざるカフェは、今日も ゆっくりゆっくり
のんびり 穏やかに時間が流れていきます。

読んで下さって、どうもありがとうございます。
それにしても、ポストの集荷時間の幅は、
かなり大きいんですね。
よい毎日でありますように (^_^)

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