見出し画像

アザラシの赤ちゃん

「わー、かわいいねー。」
「赤ちゃんなんだ!」
「でも確かに おじさん顔してるよ!」
皆、うんうん頷きます。

りこちゃんと こざる達はテレビを見ながら、おやつの時間です。
今日は、水ようかんを食べています。

「鳥羽水族館の赤ちゃんアザラシが、"おじさん顔"だって有名になったんだよ!」
「今年、2020年の2月22日に生まれて、2が5個だから、"ニコ"って名前なんだよ。」

ニコは、バイカルアザラシです。
お母さんアザラシの母乳が出なかったため、鳥羽水族館で初めての人口哺育で育ちました。

「それで一般公開を始めたら、SNSで"おじさん顔"だーって話題になって、人気者なんだよ。」
「ほんと、堂々としている感じだよ。」
「でも仕草とか、様子は赤ちゃんぽいよね。」
「"おじさん顔"なところがまた かわいいなぁ。」
「かわいいねー。」
水族館が大好きな りこちゃん、こざる達、にこにこ嬉しそうに見ています。

「動物の赤ちゃんって、ちゃんと赤ちゃんっぽいよね。」
「動きとかぎこちないし、いつもお母さんとか、飼育員さんにところに寄っていくよね。」
「アザラシだったら、泳ぎ方を教えてもらうんじゃないかな?」
「え? 習うの? 元々、泳ぎがうまいんじゃないの?」

バイカルアザラシはわかりませんが、
以前、竪琴アザラシだっか、ゴマフアザラシだったか、野生のアザラシの番組を見た時に、
赤ちゃんは泳ぐことができず、お母さんに泳ぎ方を教わっていました。

「お母さんアザラシがスパルタで、赤ちゃんを海に突き落として、赤ちゃんは必死でバタバタ泳いでいたんだよ。」
「そうなんだ!」
「生まれて数日間は、お母さんが餌を持ってきてくれるけれど、ずっと一緒にいるわけではないから、
ちゃんと泳いで敵から身を守ったり、餌も自力でとりらないとならないんだよ。」
「お母さんが、おんぶしたり、抱っこしたりするわけにいかないもんね。」

確か、お母さんと一緒にいるのは数週間だったと思います。
その間に子供がちゃんと1人で生きていかれるように全てを教えるだけ教えて、
叩き込むだけ叩き込んで、そして去って行きます。

「ある日、赤ちゃんアザラシが鳴いてお母さんを呼んでも呼んでも、もうお母さんは現れなくて…」
皆、悲しい気持ちになります。

チーン、こざるちゃんが鼻をかみます。

「それで赤ちゃんアザラシは自力で生きていくんだよ。」

自然界は とてつもなく厳しいのです。

「自然界は厳しいけれど、でもお母さんの愛を感じるなぁ。」
皆、うんうん頷きます。

「お茶のお代わり淹れるねー。」
「豆菓子、あったかな?」

こざるちゃんが、りこちゃんの古いレコードに針を落とします。
レコードの規則的な雑音が聴こえて、そして曲が始まります。

「『トロイメライ』だね。」

こざるカフェは、今日も ゆっくりゆっくり
のんびり 穏やかに時間が流れていきます。

読んで下さって、どうもありがとうございます。
写真のロビ(ピングーに出てきます)は友情?出演です。
よい毎日でありますように (^_^)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?