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公平な人事評価は、バットマンになって部下を評価することだ!

人事評価は、評価者自身の“主観”や“感情”が必ず入り込むものですし、評価を下すうえで、客観的かつ冷静に判断することは、不可能なだけでなく、必ずしも好ましいこととは限りません。しかし、あまりに感情に流されて判断を下すと、視野の狭い偏った結論を導き出し、あとになって後悔することも…

では、どうすればいいのでしょうか。それは、自分を“別の自分”に置き換えてみることなのです。


他人の視点を利用する

そもそも人は主観や感情を抜きに決断を下すことができないことは、https://note.com/kozan5/n/nc2b1cef8c3c4でも紹介したとおりです。ある研究では、人間が意思決定を下すときに、感情を基準にするケースは実に95%にものぼるそうです。

だからといって、感情に流されてその場を取り繕うような決定を下してしまい、あとで冷静になって考えたら「なんであんなことをしてしまったんだ」と、誤った判断を悔やんだこともあるのではないでしょうか。

感情的になると、視野が狭くなり、状況を大局的にとらえることが難しくなってしまうことがその原因です。そんなときに役に立つのが「他人の視点を利用する」という方法です。

「私」の代わりに「自分の名前」を使ってみる

2014年のエボラウイルス危機の際に、アメリカでも伝染するのではないかと怯えるアメリカ人は多くしました。合理的に考えればその可能性はとても低かったのですが、一度恐怖にとらわれてしまった人が、冷静に状況を把握することは容易なことではありません。

そこで、ミシガン大学の心理学教授のイーサン・クロスは、インターネット調査を通じてある研究を行いました。

彼は、エボラウイルスを心配しつつも、エボラがそのあとどれほど脅威になるかについて。「私」という言葉の代わりに「自分の名前」を使って考えるよう実験対象者に指示をしました。

つまり自分自身に語りかけるように考えろということです。これは自分との距離をとり、俯瞰して考えるきっかけになります。

すると、自分の名前を使って考えるように指示された人びとは、事実に基づき、心配するには及ばない理由を多く見つけました。より正確な現実認識が行なわれたのです。

自分自身を「私」という一人称ではなく、三人称(自分の名前)を使う、つまり「他人の視点」を利用することで、合理的な判断を下せるようになったのです。

バットマン効果

米国ハミルトンカレッジ心理学部のレイチェル・ホワイト助教らはさらに進めて、別の人物に自分を置き換えた場合の効果についても研究しています。

実験参加者の子どもたちを集め、コンピューターで退屈なタスクをこなすように指示をしました。このとき子どもたちは、次の3つのグループに分けられました。

グループ1:「私は一生懸命に取り組んでいるか?」と一人称で自問する

グループ2:「自分の名前で一生懸命取り組んでいるか?」と三人称で自問する

グループ3:勤勉なキャラクターであるバットマンをイメージさせ、「バットマンは一生懸命に働いているか?」とキャラクターで自問する

すると、一人称で自問する1つ目のグループの子どもたちのほとんどが休憩をとってタスクが進まなかった一方で、三人称で自問を行った2つ目のグループは、タスクに取り組む時間が長くなりました。そして、バットマンに自分を置き換えて集中できているかを自問した3つ目のグループは、結果として最も高いパフォーマンスを発揮したのです。

自分の内側に入って問いかけるよりも、自分と距離が離れた外側の視点から自分に問いかける方が、本来のやるべき目的を見失わずに最後までタスクに取り組む確率を上げました。さらにバットマンという模範的キャラクターに扮することで、自分がどんな人間なのかと、改めて自分自身のパワフルなアイデンティティを呼び起こし、力を発揮できたということです。

人事評価にも応用できる

人事評価を行う際も、このテクニックは使えます。「私」という個人で部下を評価をするのではなく、あくまで自分を「上司」という三人称でとらえ評価を下すのです。

すると個人的な視点ではなく、もっと大局観に立った視点から評価を下すことができるようになります。これが公平な評価にもつながります。

評価は主観的であり感情的なものではありますが、いったん自分との距離を置いて評価することで、より良い結果を導き出すことができるのです。


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