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絡まり合う多世界を紐解く。「人類学サロン」始動!

この度、かねてからメンバーとして参画している「あいだラボ」にて、「人類学サロン」をスタートすることとなりました。「絡まり合う多世界」をテーマに、ドイツ、デンマーク、日本の大学院で人類学を学ぶナビゲーターとともに、世界の複雑性や多元性と向き合っていくセッションを企画しています。


私自身も、以前のnoteに書いたように、社会課題に触れるたびに人間/自然、自己/他者…のような二元的な視点を強く感じてきました。

しかし、実際にフィールドワークを通して現地へ行ったり、その土地で生活する人たちと話してみたりすると、そうした二元的なものの見方を越えた、多元的な世界が広がっていると感じることがあります。すなわち、同じ社会現象でも、どの立場で、どの角度から見るかによってその見え方が変わってくる感覚です。それは、「正しさ」という線引きを越えた非常に多層なものでもあります。

マルチスピーシーズ人類学と“人間以上”という視点

私も文化人類学を通して今まで想像したことのなかった世界に触れていますが、その学びを自分だけにとどめず、関心のある人たちと議論してみたいという気持ちがありました。

そこで、今月から人類学をともに考え学びあうサロンをスタートすることになりました。4月28日に開催される初回のセッションでは、マルチスピーシーズ人類学と、"More than Human" という概念を考えます。


これまで世界各地の人々の生活・文化に焦点を当て研究を展開してきた人類学。そして近年、「人間」以外の存在に目を向け、多種との関係からいかに「人間」という存在が立ち現れてくるかを記述していく試みとして、「マルチスピーシーズ民俗誌」が注目されています。

今回のセッションでは、紹介文にもあるように、人類学の系譜や国内外の取り組みを手がかりに、過去数十年間のマルチスピーシーズ民族誌の基礎や課題に光を当てることで、「more-than-human(人間以上)」の諸世界を理解するための視点やキーワードを再考します。

多としての存在とマルチモーダル人類学

続く、5月に開催される第2回のセッションでは、「多としての存在とマルチモーダル人類学」を探究します。

「人間以上」の世界を探求する上で、私たちはどのような方法を持ち得るのだろうか。人間の言語は通じず、声も聞こえず、生きるリズムも異なれば、時にそれらは目に見えない。マルチモーダル人類学は、テクストとしての民族誌を超えて、感覚と身体を多元的な世界に巻き込んでいく、新たな民族誌の可能性を模索しています。本セッションでは、マルチモーダル人類学に関する国内外の実験的取り組みを参照しながら、それぞれのフィールドワークにどのように応用していくかを探ります。

人類学サロンvol.2より

第2回のナビゲーターの牛丸さんは映像人類学の領域で研究されています。日本の大学院だと、映像の手法を用いた人類学について学ぶ機会が少ないので、私自身もとても楽しみなセッションです!

蚕糸業から考える科学技術と精神の変容

そして、私は6月23日(木)の第3回目のセッションを担当します。テーマは、もちろん「シルク」です笑 

大量生産・消費をくりかえす現代のものづくりは、これまでどのように移り変わってきたのか。従事していた生産者たちの間にはどのような意識の変化があったのか。これらの問いは、私自身ファッション業界の環境・労働問題に触れる中で出てきた疑問です。その中で、シルク……すなわち「蚕糸業」を見ていくと、大量生産を可能にした工場制手工業や、教育を通した近代労働精神の歴史が見えてきます。

そして、近年注目される「エシカルファッション」のように、今後のものづくりにおける「倫理」とは、一体何なのか。特に蚕糸業では、蚕の殺生を通して生糸を作り出す工程があるため、「ヴィーガニズム」や「動物愛護」といった文脈から捉えた際に、その倫理観を指摘されることがあります。今後もう一歩踏み込んでいきたいと思っているのは、そもそもどうしてそういった人間—生物間の倫理観が生まれたかという歴史的背景です。

…というように、3回目のセッションでは、科学技術というハード面と、生産者の精神というソフト面の2軸で話を展開していく予定です。詳しくは、また日程が近くなってきたら言語化したいと思います。

人類学的思考から、現代社会を捉える

多元的に物事を見ていくという視点は、この複雑に絡まった社会を捉える上でとても重要だと考えています。それぞれの考えや価値観に一つの「正解」がないからこそ、まずは様々なバックグラウンドを持つ人たちとのディスカッションを通して自分の社会に対する「まなざし」を磨く機会を作っていく。そして、今後サロンの中で実践型のフィールドワークもやりたいな、と計画しています。

告知が遅くなってすみません!ぜひ興味がある方は、こちらから詳細を見ていただけたらと思います。

ともに人類学の学びを深めていけることを楽しみにしています!