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Onlineで日本語を教える|#15 面接対策レッスンでこんなことしてます

 こんにちは!オンラインで日本語を教えているこゆきと申します。
 今日初めて見つけてくださった方、いつも見てくださる方、本当にありがとうございます。 

 私は、わずかながらではあるものの、日本企業での就労経験や面接を受けた&実施した経験をもとに、これから面接を受ける方のための面接対策レッスンを行っています。プラットフォームによって、例えばitalkiなどはコースの目的を個別に設定できる場合がありますが、私の場合は他のプラットフォームがメインなので、自分のプロフィールにそれらのサポートが得意であることを明記しています。
 また、アジア圏の上級者の方の受講が多いことから、上級者向けレッスンを主に実施しているため「仕事で使う日本語」とか「ビジネス日本語」というキーワードを使って、自分のレッスンをアピールしており、これを見た方からのお問い合わせもあります。キャリアアップを目指す方は積極的に転職を見据えて活動されていますので、面接に関するレッスンリクエストもいただくようになりました。

 個人的にはこの「ビジネス日本語」という言葉は、プロの先生方が行なっている高度なレッスンとは定義が異なると考えているのですが、ちょうど良い用語が見つからず、そのまま使っています。

 さて、今日は面接を予定している学習者さんと、どんな準備や練習をしているのか、その一端を少しご紹介できればと思います。合格済みのテストのレベルと実際の会話スキルの乖離など、私も実際に学習者さんと接するまで知らないことばかりでした。そのような現状も少しお話しできればと思います。


1:私ができるかもしれないこと


 私が初めて企業の面接を受けたのは、世にいう氷河期時代のことでした。競争が一層激しさを増し、選ばれる方はもちろん、選ぶ方も相当慎重になっていたことだろうと思います。その頃はみんな必死でしたので、どうやって面接を「攻略」するか、について真偽を問わずさまざまな情報が飛び交っていました。幸運なことに面接までたどり着いた企業様からは、それぞれ内定をいただくこともできました。どうやら拾ってもらえた、という安堵感しかありませんでしたし、当時は自分の何がどう評価されたのかはまったくわからずじまいでした。

 その後、転職やプロモーションで、世間の状況が変わってからも何度か面接を受けることがありました。超氷河期の面接とは雰囲気も全く違っていたように感じましたが、聞かれること、求められることにあまり大きな違いは感じませんでした。

 個人的に私は人見知りで、対人的にややドライなところがあります。そのせいか、人前で話すことにそれほど抵抗がないタイプです。むしろ、知らない人の前で話すほうが楽です(そういう方いらっしゃいますよね…?)
 もちろん失敗が許されないとなれば緊張はしますし、余計なことを口走ってしまいそうになったりと、ボロはたくさん出ますが、聞かれたことに答える、という本当の目的から外れないように、ということは常に心がけていました。また一方で、自分が面接官の役割を果たすことも増えてくると、聞いたことに答えることができない学生さんの存在に気づくようになりました。もちろん、これだけが面接で問題になるわけではなく、総合的な観点から判断されるわけですが、質問に答えてもらうことで相手を知りたい、という目的が果たせないと、採用側は二の足を踏まざるを得ません。

 面接には一定レベルのテクニックとマナーが必要なわけですが、文化的な背景が異なる中でそれらを効率的に身につけ、実践で発揮するには第三者の支援が必要になります。自分で自らをかえりみて質疑応答の練習ができる人も、もしかしたらいらっしゃるかもしれませんが、なかなかそうはいきませんよね。

 私の場合、採用された企業で働く中で、自分が面接でどのように評価してもらえたのか、どのような人材だと面接官の目に映ったのか、などについて後から聞くチャンスも得ました。また、自分自身が面接官として、主に学生さんたちとお話する中で、この人と働きたい、この人は成長しそうだ、と思った時に何を見ていたのかも、少しずつ頭の中で整理されていました。

 自分が面接官としてどこを見ているか、どこに好印象を受けるか、それらを、客観視できるようにお伝えすることはできるのではないかな、と思ったことから、ご希望があればレッスンで対応するようになりました。

 実際のところ、あまり多く需要がなく、またマンツーマン日本語レッスンでの主流の内容ではないかもしれませんが、上級者への敬語レッスンとの共通点もあり、少し書いてみることにしました。

2:どんな方が受講する?

 これまでに受講してくださった方のうち、受けることは決めているけどまだ応募していない、応募先企業が決まっていない、という方が半分以上でした。転職活動中だったり、日本のワーキングホリデービザの取得を目指す方などです。そのため、面接までに比較的時間の余裕のある方が多いです。

 一方、面接日が決まり、いよいよその日が迫ってきた、というところで慌ててご相談いただくケースもときどきあります。しかしとても残念なことに、このようなご相談に対応できないことがしばしばです。というのも、5回とか10回ならまだしも、20回のパッケージを買って、1週間(あるいはそれ以下)で集中対策をしたい、というようなお問い合わせがあるからです。余剰のレッスン枠や、教えるパワーに余裕のある先生方はきっと対応されるのだと思いますが、私には1週間未満の間に20時間の、新しいレッスン枠とその準備時間を生み出す余裕がありません。回数が多い場合は、カレンダーをにらめっこしても双方の予定が合わないことがあり、このような場合は体験レッスン前後にごめんなさいをするしかないこともありました。

 なお、私は就労に関する手続きについて専門的な知識がありませんので、それらについてアドバイスすることはできません。学習者さんたちは、エージェントを通して仕事を探しており、私は面接準備についてのみサポートしている状況です。

3:N1合格者の会話レベルとは


 受講時のレベルとしては、JLPT(日本語能力試験)N2またはN1合格済みの方です。
 このJLPTという試験についてはご存知の方もいらっしゃる通り、マークシート式の筆記試験と聴解テスト(リスニング問題)で構成されているため、作文・会話能力については直接的な評価が難しいものです。しかしながら、面接とそのために準備する書類は、作文・会話能力をフル稼働しなければいけませんから、合格レベルにある学習者に期待されるスキルに満たない場合、準備段階で少し苦戦することも多いです。

 私はオンラインレッスンをする前は、試験の内容などは知っていたものの、合格者の方の会話レベルなどを知るチャンスはありませんでした。

 初めて面接の練習をした学習者さんはN1に数年前に合格済み、大学は日本語専攻だったという方でした。日常で日本語を使う機会はほとんどなく、仕事で使ったこともないため、これから日本語力を活かしたいという転職動機でした。文章でやりとりしていた時は、学習者によくある誤用があるものの、やり取りはスムーズに思えましたが、いざ会話となるとかなり困難でした。ネイティブが簡単だと思うような言葉、例えば、「今、お仕事は何をしていますか?」というような文章でも「はい、そうです」と返ってきたりします。どうやら、お仕事をしていますか?と捉えたのだと思われます。つまり、全体を聞けているものの、大事なキーワードを聞き落としてしまうので、時々コミュニケーションにズレが生じたりします。また、「どう思いますか?」のようなオープンクエスチョンではほとんど答えることができない方もいます。
 また、聞き取れている場合も、質問に対して完成した文章で答える、ということが難しく、面接はかなり心配だったのですが、根気強く練習して受け答えも上手になり、希望した職種でお仕事が決まりました。来年春までの予定で今も日本で頑張っています。

 一方で、N2に合格済み、N1は不合格になってしまい、まだ再受験していません、という方の会話力は目を見張るものでした。普段日本語を使う機会がないことは同じなのですが、聞き取りもスムーズ、自然なフィラーや文末表現を用いて、余計な緊張をせずに会話を進めることができます。聞かれたことに答えることももちろんできます。この方は、独学で勉強し、ほとんどyoutubeや日本のドラマ視聴などで耳を鍛えてきたそうで、慣用表現なども適切に使用できるため、流暢さのレベルはかなり高いと感じました。
 なぜこの人がN1に合格できないのか不思議なくらいでした。お聞きしてみると文法項目で点数を落としてしまったようです。N1レベルの文法問題は、日常的な会話などでは耳にしないものもあるため、会話が得意なだけに(?)この方にとっては難しかったようです。実際に、書く方は苦手でいわゆる丁寧な文章を書くのにとても苦労されていました。

4:最初にやること

 基本的に準備ですることは、日本で新卒の学生が企業面接を受ける場合のプロセスと大きく変わりませんが、レッスン受講者が社会人であることから、効率的に、またできるだけ短時間で、面接の「スキル」として獲得したい目的に合わせて簡略化したりショートカットしたりすることになります。具体的には、自分の強みや弱みを分析する自己分析のプロセスは、学生さんたちのようにじっくりと行うことはありません。しかしながら、このプロセスをおろそかにすることもできません。なぜなら、日本式?面接に対応したことがない方は、これらの根拠に基づいて一貫したぶれない自己アピールをする、という経験があまりないように思えるからです。

 そこで、簡易的ではあるものの、仕事に対する自分の考え方や、得意だと思うこと、苦手だと思うことなどを答えてもらう質問シートを用意しています。あるあるの質問ですが、なぜ日本語を勉強してきたのか、日本のどんなところに興味があるのか、などもここで整理します。さらに、日本で長く働くつもりなのか、なぜ日本がいいのか、など面接でも聞かれそうな項目についても、ご本人の考えや意向を知るためにここで聞くようにしています。いわゆる本音と建前を聞くこともありますが、それも嘘にならない答え方があると思うので、一緒に考えるようにしています。

 質問の数はそう多くありませんが、多くの学習者さんにとってすべての質問に必要十分に答えることは簡単ではありません。本当はできるだけ自力で日本語で書いてほしいですが、日本語の作文能力については、ここでいきなり底上げすることは難しく、またここでの本来の目的ではありません。母語でもいいから、自分の考えをまとめて書いてほしい、とお願いします。AI翻訳を使ったものを提出してくれる方もいますが、翻訳後の言葉が本来意図した通りであるか、自分で検証できないおそれがある場合は、母語のままで提出してもらっています。

 私はこれらの質問に対する答えを、面接やエントリーシートでも使えるフレーズとともにご本人にレッスン内でご紹介します。ご本人と話しながら、こういう意味・意図で書きましたか?と、ひとつひとつ確認しながら進めています。日本語運用力の問題だけでなく、いわゆる言語化のプロセスでうまく出しきれていない答えもたくさんありますので、けっこう粘り強く質問を繰り返して、ご自身の意向を聞き取るようにしています。
 英語・中国語で書かれていた場合、私なりに理解するために、あらかじめ全て読んで理解しておくようにしていますが、それを確かめなくてはいけません。双方で理解が共有できたら、それを伝えられる日本語のフレーズを知っている言葉で言ってみてもらったり、こちらから紹介したりしていきます。

 実のところ、この時点でそもそも質問に答えられていないなと気づくケースは多いです。なぜ日本語を勉強したのか、という質問に対し、例えば日本のアニメが好きだったから(日本語に興味を持ち、勉強したいと思いました)なら答えになっていますが、子供の頃日本のドラマを見たことがあります、と書いてあった場合は、聞かれていることに答える答え方を改めて理解してもらう必要があります。なぜ、と聞かれたら、基本的には、「〜からです」と答えるのだ、というパターンを知らないだけかもしれません。答えの中から聞きかった答えを取り出してもらう、というプロセスを相手に任せてしまうのではなく、まず正面から答えるほうが、面接での回答としては論理的で好印象になるはずです。

 普段はそれで日本語での普段のコミュニケーションで特に困ることもないのかもしれません。ネイティブの会話も然り、質問と答えがちぐはぐでも、それが面白いテンポのある会話に繋がることも多いです。
 しかし、面接では、聞いた側が期待する答え方、がどうしてもあって、そこから外れれば外れるほど、会社の中で普段のコミュニケーションがどの程度円滑であるか、についての企業側の期待や想像が悪くなってしまうように思うのです。もちろんこれは、日本語ネイティブに対する面接でも同じことです。

 この段階で、聞かれたことに、期待されたフォーマットで返す,と言うことを繰り返し認識してもらうようにしています。面接では抽象的な質問もありますが、基本的な事項を尋ねるのに、いわゆる5W1Hタイプの疑問詞を使った質問が多くあります。なぜと聞かれたら、〜からです、何と聞かれたら、〜です、という、パターンに馴染んでもらうようにしています。

 これは別のテーマなので今回の主旨ではないのですが、さまざまな文化的背景を持った人たちが一緒に働く場合には、必ず双方の歩み寄りが必要で、一方だけが妥協したり、あるいは良くない言い方ですが無理やり同化させられるようなことはあってはならないことだと考えています。
 面接であれば、採用する企業の側も相手の状況や言語運用レベルに配慮して、適切にスキルを判断する努力をしなければいけないと思います。しかしながら、実際のところ、受けごたえのスムーズさに欠ける場合は、属人的なコミュニケーションスキルが劣るという評価さえされかねません。評価の入り口にすら立たせてもらえない可能性もあると思うのです。本来は、それが言語運用能力によって発現が阻害されただけで、人としてのコミュニケーションスキルに問題がない場合でも、うまくやっていけない人、と判断されてしまうと、どんなに業務上のスキルや人間性の魅力があっても採用に至ることは難しくなるのではないかと思います。

5:自己紹介は難しい

 面接の最初に必ずある自己紹介。名前や簡単なバックグラウンドを話し、最後によろしくお願いいたします、で終わるのが定番です。

 簡単に思えるかもしれませんが、これを何もアドバイスなしにできる人は多くありません。何もヒントを与えずにやってみてもらうと、会話がスムーズな上級者の場合で、よくあるのは次のようなパターンです。

私の名前は***(聞き取れない速さ)です。
◯◯出身です。
???大学出身です。
どうぞよろしくお願いします。

 全体のフォーマットは比較的まとまっており、言葉遣いも適切ですが、いくつか問題があります。 
 せっかく名乗っているのに,自分の名前を言うスピードが速すぎるので、外国人名がすぐにピンとくる方以外には、ほとんど聞き取れません。普段母語で名乗る時よりは遅いのかもしれませんが,中国語の名前の場合、かろうじて苗字が聞き取れる程度です。
 日本人との会話に慣れている方は、相手が聞き取りやすいように,もう少しゆっくり名乗ることが多いように思いますが、ほとんどの方がかなり速いスピードでフルネームを言い切ってしまうので、私も復唱すらできません。

 さらに、最終学歴など、学校名をおっしゃってくださることがあるのですが、これも残念ながらこちらに予備知識がないことが問題ではあるものの、学校名などは聞き取れません。ご本人の名前と違って、出身校の名前は聞き取れなくても面接に支障はないかもしれませんが、早口で外国語の発音で何か言ったからわからなかった、みたいになっては第一印象がもったいないと思います。
 台湾などでは大学の日本語学科卒という経歴の方がいらっしゃるので、とても良いアピール材料になるのですが、これも聞き取ってもらえないと、書類に書いてあるとはいえ訴求力にかける結果となってしまいます。それなら言い方を変えたり工夫した方がよさそうです。

アドバイス1:名前はゆっくり名乗ること

 面接官が外国語の名前に慣れているとは限りませんし、慣れていても母語で話すように発音されたら、日本語耳では受容できないでしょう。

 もちろん私は、お名前を日本人のために日本語らしく発音するようにとは言いません。カタカナ発音にする必要もないと思っています。音もセットで自分の名前だと思うからです。ただ、相手が聞き取りやすくなるための工夫は必要だと思います。
 中には、日本人との会話や仕事の機会が多く、カタカナ発音の名前で呼んでもらうことに慣れている方もいますし、それが希望ならそのままで良いと思います。そういう方は、チンとかコウとか、日本語耳にわかりやすい音でゆっくり言ってもらうようにします。そうでない場合は、母語の発音のままでいいから、ゆっくり、ファミリーネームの後でポーズを置いて話すようにお伝えします。中国語の名前の場合は、これだけでも日本人に馴染みのある陳とか張といったお名前が聞き取りやすくなるように思います。

アドバイス2:◯◯と呼んでください、と明確に伝える

 面接官が名前を聞き取ってくれても、言いにくい、またはどう呼んでいいのわからないケースはあると思うので、面接中に使って欲しい呼び名や英語名などがある場合は、これもゆっくり話すようにお伝えします。
 先述の通り、カタカナ発音の名字を使う方や、英語名または日本語のニックネームを使う方、また中国語のお名前の場合、漢字の一部を日本語読みにする方も多いです。「文(ぶん)と呼んでください」とか、「翔(しょう)と呼んでください」(いずれも仮名)というような感じです。
 呼びかけやすくなると、面接官の方も話しを進めやすくなるのかなと思います。

アドバイス3:関連バックグラウンドを少し追加する

 日本語学習者の多くは基本的な自己紹介パターンはよくご存知です。「よろしくお願いします」を知らない人はいません。しかし、学校や友達に会うシーンを想定したものと、面接では事情が異なります。今から仕事の話しをしようとしている状況で、出身地と名前だけ、というのもやや情報不足です。
 今回の応募に関係のあるバックグラウンドを少し付け加える、というのをアドバイスしています。

 例えば、聞き取ってもらえないかもしれない学校名を言うよりも、◯◯社でエンジニアとして勤務経験がある、というような背景を話すほうが、より面接の場に適した自己紹介になると思います。また、実際に日本語ネイティブが面接で自己紹介する場面では、ここで面接の機会を与えてもらったことへのお礼をお伝えすることもあるでしょう。本人の実際の会話レベルと大きく乖離のある、無理に背伸びした言葉を使う必要はないのですが、面接における第一印象は、勝因の一つと言っても過言ではありません。無理なく、本人が理解して使えるフレーズを紹介し、自己紹介をレベルアップできるようにアドバイスしています。

 たとえば、先述の自己紹介にアドバイスを行うと、次のようなものになります。

 私の名前は、◯  ◯◯ です。(ゆっくり発音)
 コウ と呼んでください。
 これまでプログラマーとして5年間、◯◯社で勤務してまいりました。
 本日はお忙しい中、貴重なお時間をいただき、ありがとうございます。
 どうぞよろしくお願いいたします。

6:  質問に答える、でもその前に

 想定される質問に答える練習はもちろん、面接対策の肝ではあるのですが、そもそも冒頭の自己紹介を始める時を含め、すべての質問に答える時の重要なポイントが「返事」なのではないかと思っています。

 私が企業で面接官を初めてやった時のことです。
 こちらの質問に答えてもらう時に相手から「はい」があるのとないのとでは、かなり印象が変わることに気づきました。

 まず自己紹介をお願いできますか?と言った時に、「はい」と言ってから話す方と、こちらの質問が終わるかどうかのタイミングで空を見上げてえ〜っと、と言ったりする方がいました。質問に答えてくれているのは同じなのですが、いったん受けとめてから話してくれる方が、きちんと聞いてくれている、向き合ってくれていると感じて好印象でした。そのため、受講してくださる学習者さんたちにも、答える前に「はい」と言うようにアドバイスしています。これも、馴染みのない習慣なので最初は毎回忘れて、えーと、とか、あー、とかフィラーを質問に被せてきてしまう方がいますが、何度か練習してできるようになると、格段に回答の印象が良くなって、アドバイスしておきながら自分でびっくりすることもあります😅

7:質問に答えて最終仕上げ


  応募先が決まっていれば、一緒に企業サイトを見て、求められる人物像と自分の共通点を探してもらうなどの作業をすることがあります。また、サイトの採用ページや企業理念の紹介で繰り返し使用されるキーワードを見つけ出し、自己アピールとリンクする点について一緒に考えたりすることもあります。

 最後にこれらを回答に盛り込めるよう、面接にありそうな質問への答え方を練習しています。聞かれたことに答える練習の最終仕上げです。
 さらに、答えられない質問への答え方や、質問の意味がわからなかったり聞き取れなかったりした場合の、トラブルシューティングも行います。これも何もヒントを出さない場合は、へ?、とか、は?とか言ってしまったり、ただ「わかりません」とだけ言って終わってしまうケースがあるので、もしもの場合に備えておかなくていけません。
 申し訳ございませんが、もう一度おっしゃっていただけますか?などのフレーズも文法知識としてはすでに知っていますが、スムーズに口から出すにはかなり難しいので、実際に言えるようになるまで練習したりもします。

 みなさんよくご存知の通りですが、面接の最後にはかならず何か質問はありますか?と聞かれますよね。これも練習しておく方がいいなと思います。本当に聞きたいことがあって、その場で自力で日本語を使って聞くこともあると思いますが、そうでない場合も、何も質問はありません、より、きちんと企業や仕事に関心を持っていることを示すためにも、何か聞いた方がいいのではと思うのです。職場環境のことや自分が配属されるかもしれない部署に他にも外国人が活躍しているのか、など、実際の関心ごとにあわせて、質問の準備をしておくようにしています。

 また、最近ではオンライン面接が多いので、話す時の目線や、ごちゃごちゃした背景が映らないように気を付けることなど、マナーの観点からのアドバイスもお伝えしています。
 さらに、面接が終わってレッスンチケットが残っている場合などは、仕事が始まってからの自己紹介や研修などを受ける場面での会話練習をすることもあります。
 例えば、急な発熱で休まなくてはいけない時、などのタスクを設定して練習したり、知らない表現を勉強したりもします。これも上級者であっても、敬語できちんと要件を伝えるというのは難しいようで、苦心される方が多いです。ただ、もしも本当にそうなった時、なんと言えばいいか知っている、それが失礼でないことを知っていて安心して話せる、という状況がご本人を助けることがあればいいなと思います。

8:まとめ


 学習者さんたちと練習していていつも思うのは、知らないだけでできないわけではない、ということです。だったら知らないままで損をするのはもったいないと思います。それぞれの方の運用力にあわせて、あともう少しできそう、というぎりぎりまで、より良い評価につながる振る舞いや答え方をお伝えしたいなと思っています。

 最近受講くださったケースでは、5月と6月に、それぞれワーキングホリデーで来日した方がいらっしゃいます。面接対策・研修中の会話練習の後、レッスンチケットを使い切り、いったんレッスンはお休みになっています。もちろん再受講いただければ嬉しいですが、そうでなくても私が新しい環境で挑戦する学習者さんを応援する気持ちには変わりありません。

 先日久しぶりに、プラットフォームのアプリを通じて元気ですかメッセージを送ってみました。レッスンをやっていないので見ないかもしれないと思ったのですが、おふたりともお返事をくださいました。
 仕事では問題ありません、と書いてあってほっとしました。生活で困っていることはないかと気になっていたのですが、食事も大丈夫、夜は疲れて毎日たくさん寝ています🤣、と笑顔の絵文字と一緒に書いてあってほっと胸を撫で下ろしました。同僚の方との雑談が一番難しいです、と書いてありましたが、関係性は良好のようで、相談できる人もいるとのことでしたので、今のところ楽しく過ごせているようです。
 年齢的には違うのですが、お母さんの気持ちで心配していたので笑、本当に安心しました。


 日本や日本企業で働くことが、これからの将来において、外国に住む学習者さんたちにとって夢や利益をもたらすものなのかどうか、実際のところ私にはわかりません。それでも今現在では、そうしたいと夢を持つ方がいらっしゃいます。
 今後の見通しはわからないのですが、受講中の学習者さんの成長がとてもわかりやすく、こちらもモチベーションをもらえるレッスンのひとつです。
 一般的でないレッスンのご紹介になってしまいましたが、そんなのもあるんだな、と思っていただけたらと書いてみました。

 長くなりましたが最後まで読んでくださって、ありがとうございます!
今これから始める、または今も迷いながら進んでいるみなさんと、小さなつながりが持てると嬉しいです。ご経験豊富な先生方におかれましては、どうか温かい目で見守ってくださると幸いです。

 それでは、また🫡
過去記事はマガジンにまとめました📚


その他、つれづれ遊びですので、ご興味があればぜひご覧いただけると嬉しいです。









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