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デザイン経営を「体験価値経営」と言い換えてみる

モノ作りの会社はずっと製品開発をしてきて、それをそのまま「デザイン」と言い換えているだけなのではないかと思い始めています。つまり言葉だけのデザイン経営になってしまっている可能性があるということです。

デザインという言葉が、立場によってさまざまな意味に捉えられることはよく知られており都合が良い面もありますが、デザイン経営についてはもっと適切な表現を考えみる必要があると思います。

「体験価値経営」と言い換えるのはどうでしょうか?

デザイン経営においては、機能価値を生み出すだけでは十分ではなく、それが人の活動の中で豊かな体験価値を生み出すところまでやらなければ、従来のモノ作りや機能改善の製品作りと同じになってしまいます。

開発前のコンセプト検証フェーズ(PoC)では、技術検証だけではく、体験価値を検証しておかなければ、モノが開発できたとしても商品として人の役に立つことができません。

特に、ロボティクスやIoTといったテクノロジーによってイノベーションをおこしていきたいと考えているのであれば、機能が人の活動にどのような価値を生み出すのかを考えていかなければなりません。

CXO(チーフ・エクスペリエンス・オフィサー)を置く会社が少しづつ増えていますが、このことからもデザイン経営の本質は体験価値を高めることにあることが分かります。

プロトタイピングがキープロセスになる

設計が開始され試作品ができてくれば体験価値を検証しやすくなりますが、その段階では体験価値を見直すことはできなくなってしまいます。そのため体験価値を結果目標ではなくデザイン対象にするのであれば、設計開始前に検証する必要があります。

では設計前にどのようにして体験価値を検証すれば良いのでしょうか? 残念ながらその手法やプロセスはまだ確立していません。

設計開始前の段階が重視されるようになってきており、PoC(概念検証)フェーズと言われています。従来のメーカーでは設計前は、基本技術の研究や基本機構の部分設計がおこなわれていましたが、いずれも技術検証が中心となっていました。PoCではもっと大きな全体の価値=概念を対象にした活動していかなければならなくなりました。

モデルベース開発、ドキュメント管理をこれまで以上の精度で作成するだけでなく、それをプロトタイピングして体験検証をおこなうことでPoCを理想の活動に近づけていくことができます。

ワードやパワーポイントで書くポエム、エクセルで書くもっともらしい数字、部分機構レベルの機能検証だけでは、多くの企業同士が手を結んで進めるオープンイノベーションを動かしていくことはできません。

モデルベースでおこなわれるコンピュータシミュレーション、完全に構造的で追跡可能なドキュメント管理で想定内の物事をしっかりと扱いながら、さらにプロトタイピングによって想定外、不確定な物事に対しても検証・評価をしていくことで、効率的で手戻りの無いスムーズな開発と、計画的なアップデートを繰り返していくことができるようになるはずです。

人間や利用環境を含めたシステムでは、想定外のことが多く発生します。それらを適切に扱い想定内にしていくことでリスクを減らすことができます。プロトタイピング技術は体験価値経営にとって従来の機能試作ではない、体験価値を検証するプロセスとして非常に重要になってくるはずです。

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