見出し画像

デジカメUIデザイナーとして本当にやりたかったこと

いつか実現したいと個人的にデジカメUIの研究を続けていますが、そろそろ自分でやれるチャンスが無くなってきていると感じるのでnoteに書くことで供養をしたいと思います。また誰かが実現してくれたら良いと思いこの記事を書くことにしました。

思い返せば1996年にはデジカメとの関わりが始まり、それ以来単なるカメラ作りではなく、もっと大きなシステムや文化について考えてきました。その一部は実現することができ現在のデジカメの中に息づいていますが、十分にやり切れなかったり意図しない方向に進んでいる部分もあり、その点では心残りがあります。

特に2007年前後のデジカメ10周年に向けてやりたいことをデザインしていたのいですが、その頃にはデジカメバブルのイケイケモードになっていたため価格別ラインナップにカラバリという商売が話題の中心となっておりましので、写真文化の中のデジカメの意味について語り合う状況は失われてしまっていました。

そんな時代に流されて気が付けば20周年も超えて、いつまでデジカメビジネスができるのか分からないカメラ業界の状況ですが、やってみたいメーカーがありましたら連絡ください。


①作画を楽しめるカメラ

最近のスマホは、条件の悪い環境でもそれなりの画像に仕上がりにしてくれます。ユーザーが撮影で調整することはほとんど無く、後から加工することで好みの作画をおこないます。

それに対してデジカメでは幅の広い表現ができるように撮影時から、レンズなどの機材から撮影設定までユーザーが自由に選択できるようにしています。シャッターを切った瞬間に完成している写真を目指すことで、後からの加工では撮れない写真を得ることができます。

その自由度から失敗してしまうこともありますが、それも含めて撮影体験の一部として試行錯誤を楽しみ、そこから納得できる作品ができ成功の喜びが味わえるカメラを作りたかったのです。

撮影結果が特別であることはさほど重要ではなく、自分が撮った作品と感じられる主体感をユーザーインターフェイスによって得られる体験設計を、モードアーキテクチャーから表面的な操作作法に至るまでデザインしていました。


②ユーザーによるフォトレシピの発信

作画をした写真をシェアするだけでなく「作画の方法(フォトレシピ)」をアウトプットとしてシェアすることで二倍楽しめるようにしたいと考えていました。

カメラで設定できることは限られています。普通に撮影できるパラメータの組み合わせはそれほど多くはありません。つまり撮影設定としてだけみると広がりの無いものになってしまいます。

私が考えていたフォトレシピは、実際はポエムの様なもので「あなたが悲しいと言ったからマイナス補正した」というように、ある設定に場面や気持ちを結び付けてフォトレシピを作りシェアすることで、それに共感してくれる人に使ってもらう関係にしたかったのです。

フォトレシピは他の人が利用することで更に写真が生み出されるので、写真のシェアよりも展開性が強いものになります。デジタル時代のメタデータ/ログデータ活用をビックデータ方向で使うのではなく、感情的なコンテキストとして活用していきたいと考えていました。


③写真の繋がりによるSNS

同じフォトレシピで撮影された写真をアカウントとしてチャットなどができるSNSを考えていました。何かを発言したければフォトレシピを使って写真を撮らなければなりません。もちろんその写真が発言者の「顔」になりますので凄い写真の方が発言力が増します。1枚の写真で長期間会話を楽しむこともできますが、写真なので次から次へと撮影して入れ替えていくこともできます。従来のSNSが抱えていた人物アカウント同士の関係性のストレスから解放され、写真の良し悪しがアカウントの魅力となります。

フォトレシピは一種のソーシャルグループとして機能します。それを使って撮影することでメンバーとなれます。もちろんフォトレシピをベースに設定を変えて撮影することができます。

設定を変えたものから「派生レシピ」を作ることができ、その派生レシピによってグループの中にさらにグループが作られます。グループの大きさは撮影された写真の枚数できまるので、子レシピ、孫レシピの方が人気がある場合もあります。

このようにツリー構造状にソーシャルグラフが広がっていくことで、ヒーローレシピやヒーローフォトが生まれてきます。(構造上ヒーロー人物アカウントは可視化されません)

いいねやフォローの代わりに「写真を撮ってもらう」ことで、写真を撮る機会を増やしていきたいというアイデアです。


後はタイミング

デジカメが登場し直ぐに写メールなどの大きな波がきて、その後もスマホの登場が続き登場から20年にしてデジカメの存在価値が大きく問われ続けています。現在のところレンズなどの光学技術や大きな撮像素子が生み出す画質を活かした作画表現で差別化していくしか無いようです。

ただ最終的な画質というだけでは、スマホ環境での閲覧で大きな差別化をすることは難しくなってきていますので、体験としての作画操作とそれをコンテンツ化するフォトレシピによって、同じ写真でも特別な撮影体験に変えていくことが必要だと考えています。

10年以上も前のアイデアですが2020年代だからこそアイデアが価値を持ち実現する可能性があるとも思っています。いつか日の目を見ることを楽しみに待ちたいと思っております。(合掌🙏)


ということです、今年もあと1ヶ月でCP+(2/27〜3/1)となりました。しっかりこれまでのデジカメ人生を振り返って、これからの2020年代の写真体験がどんな風に展開していくのかSDカードを準備して楽しみに待ちましょう!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?