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都会と生活間の狭間で見えた風景

最近、祐天寺に引っ越しをした。
祐天寺といえば中目黒から歩いていけることくらいの情報しか、知らないわたしは、本当は学芸大学に住みたかったけど、なかなか良い物件がなくて泣く泣く祐天寺の家に住むことになった。

間取りはワンルーム。平米数は36平米と一人暮らしのわたしには広すぎるくらいのゆったりとした間取りだ。

前に住んでいた家もそうだ。コロナ禍になってから在宅ワークとなり、家にいる時間が増えたので、家くらいは気持ちにゆとりを持たせたいと思って少し高めの家賃を払うことに決めた。

手に入れた生活はとにかく便利だ。
Uber Eatsは元々使わないけど、ネットスーパーもあるし、CoCo壱もケンタッキーもマクドナルドも、大好きならーめん花月もある。

さらには、十四代が置いてある酒屋さんや、キックボクシング、キラキラしたお花屋さん、いつか憧れたお洒落なビストロまで。

生活感の溢れる風景から、雑紙を切り取ったようなお洒落な風景まで、祐天寺は様々な顔を持っていることに気付かされた。

今や、SNSで話題になりすぎて消費されるお店が、多くなった学芸大学とはまた違った表情を見せてくれる。

内見した時に不動産屋さんが言っていたことを思い出した。

『学芸大学に住んでる人はずっと学大がいいっていうし、祐天寺に住んでる人はずっと祐天寺がいいっていうんですよね』

たしかにこれは住んでみないとわからない絶妙なバランスと魅力なのかもしれない。


話は変わって、せっかく引っ越したので人生で初めてキックボクシングというものに挑戦してみた。

コロナ禍になってから、大きなネットの繋がるテレビを買ってしまったので、エクササイズは、ほぼそこから流れるyoutubeを頼りにしていた。

しかし、新しい街に来たからには新しい友達が欲しい。ということで新しく何かを始めたいと思った矢先、細くて綺麗な女性ってなぜかキックボクシングに行ってるなあと思いついた。

新居に引っ越してから次の日に早速キックボクシングを予約した。

しかしながら、ここで一つ問題がある。
わたしの家のガスは金曜日(3日後)まだ使えないのである。

これまで毎日湯船に浸かっていたわたしはキックボクシングの狭いシャワールームでは大抵満足ができなかった。

探してみると近くに銭湯があることを知った。
今は便利な時代になった。

一度インターネットの世界入ってしまえば大抵の欲しい情報は全部手に入れることができる。

わたしが訪問したのは、大黒湯という昭和28年に創業された老舗の銭湯だった。

時間は20時をすぎていたのでちょうど人で賑わう時間帯だったのかもしれない。

映画やPVでよくみたあの世界が広がっていた。

中に入ると番頭のおじさんがテレビを見ながら値段も言わずにお金だけを貰う手を差し伸べてくる。
とっさにキョロキョロと周りを見渡すと480円と書かれた張り紙を見つけた。


中に入るとまさにタイムスリップしたような空間が広がっていた。

映画で見た風景って本当にあったんだと少し感動した。ドライヤーはなくていつかどこかで見た座るタイプのドライヤーがあった。

引用:https://note.com/chitch_create/n/nc462085db90c


中に入ると木桶の音が心地よく響く。
古い銭湯ならではの水圧の弱いシャワー、ほのかに香る牛乳石鹸の匂い、壁に描かれた富士山の立派な絵画。

これはきっといつかみた昭和の銭湯そのままだった。

おそらく何十年もこの地に住んでいるのだろうと思えるお婆さんや、なぜここにいるのかがわからない綺麗なお姉さん。すれ違う人たちの顔を見るたびにその人の人生を予想するのがちょっと楽しい。

そういえば、最近SPAという近代的な施設にばかり行っていたので、当たり前に水圧の強いシャワーを使うこと、当たり前に高級ドライヤーが設置されていることが当然となっていた。


しかし、そのような便利な施設にはない味わいが銭湯にはあった。

今の時代に流されずゆったりと何十年も変わらない時間のリズムを感じることができて、わたしはとても幸せな気持ちになった。

昔のものを使うことによって今の便利さに感謝できることなんてなかなかないので、不便から便利を学ぶのが一番わかりやすいということを体感した。


帰り道、大きな坂を登った。行きは下りなのだが、その坂の上から渋谷の街並みが見える。

祐天寺といえば渋谷から激近だと思っていたが、一歩入れば住宅街。静かに佇んだ住宅街からは煌々と光る渋谷のビル街が見えた。若者のパワーと近代的なライトに照らされる一体。一方で暗く静かに佇む祐天寺の住宅街。

このコントラストがどこか懐かしかった。

わたしが住んでいた街にすごく似ているからだ。
都会も生活感もどちらも持ち合わせている街ほど住みやすい街はないと思う。

ああ、引っ越してきてよかったなー。

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