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ニュースウオッチ9⑧遺族会の申立て却下

⑦「取材依頼の罠」からの続き/


申立ては却下されていた

前回からだいぶ間隔が開いてしまいましたが、その間に新事実が発覚しました。BPOの放送人権委員会(以下:人権委)が遺族会の申立てを退け、この件を審理しなかったというのです。遺族会代表の鵜川和久さんが2月23日にTwitterで報告しています。

かたやBPOの放送倫理検証委員会(以下:倫理委)では、早くから審議の俎上に載りました。昨年末には記者会見を開いて、「放送倫理上問題あり」との判断を公表しています。

この時も人権委からは音沙汰なし。年明けにリリースがあるかと思ったけど、無音でした。さすがに遅すぎる、遺族会が申立てを取り下げて民事訴訟に切り替えたのかも?と推測していましたが……申立て却下とは意外でした。しかも申立てから半年以上経っている。実際には審理したんじゃないのかな?と勘ぐってしまいます。


人権委で審理されないのはなぜ?

「NHKは十分に要件を満たした」との回答が、人権委から遺族会にあったそうです。BPOのいう「要件」(注1)とはいったい何でしょうか?この問題に詳しい弁護士の楊井人文さんは、次のように指摘しています。

BPOにしてみれば、「謝罪放送を何度もしたのだから、これくらいで許してやれよ」ということなのでしょう。でもあれは謝罪ではなく単なる言い訳です。ひたすら自己弁護と正当化に走っている。ご遺族の方々をより深く傷つけたのではないでしょうか。私のような外野も含め、納得できる人がいるのかと、疑問に思います。

過去にBPO案件化した事案で、倫理委と人権委の両方で委員会決定が出されたものもあります。今回そうならなかったのはなぜなのか? 謝罪放送によってみそぎが済んでいるという以外にも、重要な理由がありそうです。

この件はコロナワクチンの被害にまつわることなので、BPOも深堀りできないのかもしれません。どこかから圧力がかかった、とまで言ってしまうと陰謀論めいてきますけどね。具体的な圧力がなくても、「空気」と称されるような同調圧力は存在しています。それがコロナ禍には強く作用していました。今なおコロナ関連の問題をめぐって、業界内の自主規制や「忖度」がないとは言えません。


真相は藪の中に

昨年12月に出した倫理委の決定「放送倫理上問題あり」が、BPOの最終決定となりました。事の真相は明らかにされないままです。おそらく人権委は、これ以上NHKを追求しても無駄だと考えたのでしょうね。倫理委の時と同じく、不合理な言い訳や嘘で押し切られるだけだと。審理してもはかばかしい結果が得られないのなら、「申立てを却下して審理しなかった」とする方がましという判断なのかもしれない。

倫理委で追及しきれなかった部分が人権委の審理で明らかになれば……と、わたし少しは期待していたんです。なのに、BPOでの扱いはこれにて打ち切り。真相は藪の中になってしまいました。倫理委の報告書によれば、関係者の証言にいくつか食い違いが見られたとのことですが、その矛盾も解き明かされていません。


今後の動きはどうなる?

そんなわけで、NW9のコロナ関連報道問題は、うやむやのまま幕引きになりそうな気配です。これではNHKの思うつぼですね。

遺族会は番組の撮り直しを求めていましたが、それも果たされていません。昨年5月の放送から10か月近く経過し、問題の風化が懸念されます。ただ、コロナワクチンの副反応については、少しずつ報道されるようになってきました。その流れに乗ってNW9問題も広く知られ、議論されるようになるとよいのですが……。

遺族会にはNHKから謝罪があったそうですが、鵜川氏のツイートを見る限り、とうてい納得がいかないご様子。いまだNHKによる正しい報道がなされていないのですから、当然です。

BPOではいちど取り上げた事例を再び取り上げることはないので(人権委の委員会運営規則第5条の9)、これ以上掛け合ってもムダ。となると、司法の場に移っていくことも考えられます。名誉棄損で民事訴訟を起こすことは可能なはず(ただし3年以内)。その場合も、倫理委と人権委の双方で委員会決定が出ていれば、裁判でよりいっそう有利に働いたことでしょう。

NW9問題はまだ終わっていない。このシリーズもしばらく続きます。


【注1】人権委の委員会運営規則には、申立てを審理の対象としない場合が定められています。NW9の事例は以下の項目に該当すると考えられます。

(1)申立てに係る放送の内容、権利侵害の程度および実質的な被害回復の状況に鑑みて、審理の対象とすることが相当でないと認められる場合

運営規則第5条の2 ※強調筆者

つまり、4度の謝罪放送によって被害回復の要件が満たされている、と判断されたわけです。こんな前例作ったらまずいですよ。説明責任を果たさないまま、「とりあえず謝れば済む」ってことになってしまう。


【注2】
上記の審理除外要件について、補足記事を書きました。👇

【注3】BPOの倫理委は「放送倫理上問題がある」場合は「審議」、内容の一部に虚偽がある」ときは「審理」の語を用います。人権委では「審理」のみを使います。
設立の経緯が異なるため、委員会ごとに用語を使い分けているらしい(複数の組織が吸収合併した結果、現在のBPOができた)。詳しくは公式サイトをご参照ください↓



⑨証言の食い違いへ続く

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