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自分はどう生きるか - シュプランガーの価値観6タイプ

ドイツの哲学者シュプランガーは、人間が生きる上で大切にする価値観を6つの志向に分類しました。彼は人間の複雑な心をこれらの志向に分解して理解することを通して、人間同士、さらには集団同士の相互理解を目指そうとしたようです。この本が出版されたのは1926年と100年近く前ですが、現代においても参考になる部分が大いにあると思います。この記事では、それぞれの価値観を紹介していきます。


1.理論的な志向性 (The Theoretic Attitude)
真実と客観的な知識を追求する志向性。事実に基づいた理解を重視し、事象を論理的、分析的な視点から捉えることに情熱を注ぐ。

  • 特徴: 事実に基づく客観的な分析を好む。知的好奇心が強く、新しい情報や理論に対して敏感。研究やデータの探求を通じて、世界をより深く理解しようとする。

  • 日常生活: 日常では、事実と論理に基づいて決定を下す。知識を深めるために読書や学問的なディスカッションに時間を費やし、複雑な問題を解決することに興味を持つ。

  • 高い人の特徴:

    • 知識に対する深い興味と情熱

    • 客観的で論理的な思考

    • 学問的な探求や知的議論を楽しむ

    • 研究や分析に長けている

    • 新しいアイデアや理論に興味を持つ

  • 低い人の特徴:

    • 学問的な探求に対する興味が薄い

    • 理論的な議論よりも実践的な活動を好む

    • 抽象的な思考に興味がない

    • 知的な話題に関心が低い


2.経済的な志向性 (The Economic Attitude)
効率性、実用性、そして最大の利益を求める志向性。物質的な価値やリソースの最適化に重点を置き、投資のリターンを重要視する。

  • 主な特徴: 資源の効果的な管理と時間の最適化に重点を置く。実用的で目標指向、常に最大の利益を求めて行動する。

  • 日常生活: 日常的には、資産の管理や財政計画に関心を持ち、実用性の高い活動や購入を好む。無駄を嫌い、すべての行動で最大のリターンを目指す。

  • 高い人の特徴:

    • 効率と実用性を重視する

    • 投資やリソースの管理に興味がある

    • 金銭的な価値や利益を重要視する

    • 実用的な解決策を好む

  • 低い人の特徴:

    • 物質的な利益に対して興味が低い

    • 金銭的な価値よりも他の価値(美学、理論、社会的など)を重視

    • 金銭的なリスクを取ることに慎重


3.美的な志向性 (The Aesthetic Attitude):
美しさと芸術性に深い関心を持つ志向性。美学的な経験や感覚的な喜びを重視し、創造的な表現と美的な調和に価値を見出す。

  • 主な特徴: 芸術、デザイン、音楽など、美的な表現に対して深い敏感さを持つ。創造的で感性豊か、新しい美的体験を追求する。

  • 日常生活: 日常的には、環境の美化や芸術作品の鑑賞に時間を費やす。美的な趣味や活動に積極的に関わり、創造的なプロジェクトに情熱を傾ける。

  • 高い人の特徴:

    • 芸術や美に対する深い関心

    • 創造性と表現力が豊か

    • 美的な経験や感覚的な喜びを重視

    • 美しいものや芸術作品に感動しやすい

  • 低い人の特徴:

    • 美学や芸術に対する関心が低い

    • 機能や実用性を美しさよりも重要視する

    • 芸術的な表現に対して無関心


4.社会的な志向性 (The Social Attitude):
者への思いやりと協力を重視する志向性。人間関係と共同体の福祉に価値を見出し、共感と奉仕の精神を持つ。

  • 主な特徴: 人々の幸福や福祉に対して深い関心を持つ。共感的で思いやりがあり、他者を支援し助けることに喜びを感じる。協力的で、より良い共同体の構築に努める。

  • 日常生活: 日常では、人々との関係を深め、支援が必要な人々に手を差し伸べる。ボランティア活動や社会貢献プロジェクトに熱心に参加し、共感と理解を通じて人々の生活を改善しようとする。

  • 高い人の特徴:

    • 他人への配慮と共感が深い

    • 社会貢献やボランティアに熱心

    • 人々の幸福や福祉に関心がある

    • 協力的で人間関係を大切にする

  • 低い人の特徴:

    • 社会的な活動や人々への奉仕に対して関心が低い

    • 個人主義的で自己中心的な傾向

    • 他人の問題に無関心


5.政治的な志向性 (The Political Attitude):
権力や支配に対する関心が高い志向性。影響力を行使し、目標を達成するための戦略的なアプローチを取る。

  • 主な特徴: リーダーシップと権威に対する自信がある。競争心が強く、目標達成のために積極的に行動する。戦略的であり、影響力を拡大するための方法を探求する。

  • 日常生活: 日常的には、キャリアや社会的地位の向上を目指し、影響力を持つ立場に就くことを目標とする。競争的な環境での成功を追求し、他者を導くためのリーダーシップスキルを発揮する。

  • 高い人の特徴:

    • 権力や影響力に対する関心が高い

    • リーダーシップを取ることに自信がある

    • 競争的で目標達成に向けて積極的

    • 戦略的思考を持つ

  • 低い人の特徴:

    • 権力や地位に対する関心が低い

    • 競争よりも協力を好む

    • 他人に影響を与えることに消極的


6.宗教的な志向性 (The Religious Attitude):
精神的な探求と宇宙や人生の深い意味を求める志向性。高い道徳的、宗教的な価値観に基づいて行動し、内省的な生活を重視する。

  • 主な特徴: 精神的な探求に深い関心を持ち、内面の平和や高次の意識を追求する。道徳的な価値観を持ち、人生や宇宙の意味を深く考える。

  • 日常生活: 日常では、精神的な実践や瞑想に時間を費やし、信仰や宗教的な儀式に参加する。生活のすべての側面において、道徳的な原則に基づいて行動し、精神的な充実を追求する。

  • 高い人の特徴:

    • 高い道徳的、宗教的な価値観を持つ

    • 内省的で精神的な探求に熱心

    • 人生や宇宙の意味について深く考える

    • 信仰やスピリチュアリティに重きを置く

  • 低い人の特徴:

    • 宗教的、精神的な事柄に対して関心が低い

    • 現実的で物質的な価値観を持つ

    • 霊的な探求に対して無関心または懐疑的


これらの志向性(価値観)は、大なり小なり誰しもが複数持っていて、その大小が行動に影響を与えています。例えば、経済と政治の両方の志向性を持っている人は、目標達成のために、影響力や権力を行使して効率的に成果を上げようとします。一方、経済の志向性を持っているものの、政治の志向性が低い人は、自己のリソース配分に集中するかもしれません。

これら価値観の同居は、時に心のなかで競合して葛藤を生む場合があります。価値観同士が対立してしまうと、一貫した行動が取れなかったり、ストレスが溜まってしまうでしょう。

逆に、もしも異なる価値観同士をうまく共存させる事ができた場合は、精神的な成長に繋がり、より成熟したパーソナリティを獲得できるとされています。

みなさんも、自分の価値観がどの志向性から構成されているか考えてみて、自らのパーソナリティのメタ認知にも役立ててみて下さい。


参考文献
Spranger Eduard, Types Of Men The Psychology And Ethics Of Personality
https://archive.org/details/in.ernet.dli.2015.122134/page/n5/mode/2up

Human Performance Technology, In a Nutshell: 6 Attitudes
https://blog.hptbydts.com/in-a-nutshell-6-attitudes


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