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南米競馬をツウぶって語れるワード『パンパ(Pampa)』

 ごくたまに「南米の競馬を知りたいんですけど、何を勉強したらいいですか?」と訊かれることがあります。もちろんレースを見ることが入口になるんですけど、ちょっとツウぶりたいなら『パンパ(Pampa)』を知っておくといいかなぁと思います。

 パンパという言葉をご存じでしょうか? もしかしたら、学生時代に地理を専攻していた方なら聞いたことがあるかもしれません。

 パンパとは「アルゼンチンの大部分、ウルグアイ全域、ブラジル南部に広がる樹木が少ない草原地帯」のことです。王立スペイン語アカデミー(スペイン語の広辞苑的な機関)によると、もともとはケチュア語で「平原」を意味する言葉だそうです。

だいたいこの辺。Wikipedia の図を借りました。

 パンパの面積は 120万km² になります。これがどのくらいの数字かと言うと、日本の国土 37万8000km² の約3倍、北海道の面積 8万3450km² の約14倍になります。にもかかわらず、パンパ内に住む人口は日本の半分(5000万人くらい)しかいません。

 平らな草原であることに加えて、パンパにはラ・プラタ川という大きな川が流れ、雨も少なくありません。つまり、肥沃な土地ということです。南米大陸がスペインに侵略されてからの細かい開発の歴史は省きますが、パンパは南米最大の穀倉地帯として発展してきました。小麦やトウモロコシの栽培が有名です。

 また、パンパは放牧地としても活用されています。アルゼンチンとウルグアイは世界トップクラスの牛肉大国です。最近では日本にもウルグアイ産牛肉が輸入されています。いつかウルグアイビーフだけで焼肉をするのが僕のささやかな夢です笑

 広大で肥沃な牧草地であるため、馬産が盛んになるのも自然な流れです。サラブレッドの生産地として有名なアルゼンチンのブエノスアイレス州、ブラジルのヒオ・グランヂ・ド・スル州はパンパの範囲内に含まれます。主な生産牧場はパンパ内に拠点を置いています。

 南米の施設ってなんかボロっちいイメージを受けますが、サラブレッドの生産牧場は決してそんなことありません。日本の牧場とは比べものにならないほど広大な牧草地を所有し、立派な施設が建っています。ノーザンファームは240ヘクタール、社台ファームは290ヘクタールですが、アルゼンチンのラ・パシオン牧場は800ヘクタール、フィルマメント牧場は1000ヘクタールの土地でサラブレッド生産を行なっています。

ラ・パシオン牧場の航空写真。

 この馬産天国を外国の生産者が見逃すはずありません。たとえば、パンパに属する地域であるシエラ・デ・ロス・パドレスには、南アフリカの生産牧場 Wilgerbosdrift が拠点を持っています。アメリカで所有していたダブスター(Dabster)などを種牡馬として使い、世界中から繁殖牝馬をここに集めてサラブレッドを生産しています。

 なぜ南米は馬産が盛んなのか? その答えの1つがパンパです。広大で肥沃な草原地帯は馬の飼育に適しています。南米で一流のサラブレッドが誕生するのは、地球からの恩恵を受けられるからというわけです。


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木下 昂也(Koya Kinoshita)

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