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尾道から

旅の友

考える前に中国人二人組に日本語で話しかけていた。
男性がすぐに「はい、観光です」と日本語で返事をした。

お互い夜にしか営業していない古本屋さんに行くことが分かったが、営業時間になるまで少し時間があったので色々な話をした。
二人は留学生でとても頭が良かった。

こっちが一方的に日本語を使うより英語の方がコミュニケーションをとりやすそうだったので、英語で話すことにした。
すぐに二人と打ち解けて、古本屋の前に一緒に温泉に寄ってから行くことにした。

温泉でも自分たちの国の事や将来のことなどについて話した。
まさか初めて会った人と裸で語り合うとは思いもしなかった。

男湯を出るとすぐに女性も女湯から出てきた。
牛乳を飲んだか訊くと飲んだと答えたので、「ちゃんと手は腰に手をあてた?」というと「もちろん!」と笑顔で腰に手をあてて見せた。
「素晴らしい、それが日本の伝統的なスタイルだよ!」と感心した。

小雨の中、ぽかぽかの身体で和気あいあいとしながら古本屋へ向かった。
二人とも本や映画が好きらしく、女性の方は森見登美彦が大好きという事だった。

古本屋に着くと店内は外の小雨の音までも聞こえる位とても静かだった。
夜に訪れる古本屋さんはとても雰囲気があり、内心は穏やかではいられないくらい興奮した。

それぞれにその古本屋を楽しみ、お買い物をした。
店を出る時店主さんと少し話して、これから四国を周る事を伝えると「なタ書さん(高松にある完全予約制の古本屋)に行ったら藤井さんにこれ渡してください」とショップカードを渡された。こういう頼まれごと好きです。

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古本屋からの帰り道、留学生二人にプレゼントを渡した。

女性の方は『森見登美彦の京都ぐるぐる案内』という本。この子は京都の大学に留学していたのでこれ以上ぴったりのものはないだろう。
男性の方には水木しげるの本を。なんとなく好きになってくれるんじゃないかと思った。
二人とも喜んでくれてよかった。

次の日の午前中は一緒に千光寺や猫の細道などを観光し、前日に本屋で仕入れていた地元民ならではのオススメグルメを食べに行った。

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僕は午後から向島という尾道から一番?近い島にある私設図書館を訪ねたかったので、昼食後少しぶらついた後に連絡先を交換して留学生と別れた。
日本の事を少しでもより好きになってくれたらいいな、と思いながら向島へ向かう船に乗った。

向島から

向島に着き、歩いて私設図書館へ向かった。
この私設図書館は高松の古本屋「なタ書」さんで教えていただいた場所で、広島の方に行った時には必ず寄ろうと決めていた。

目的の私設図書館「さんさん舎」さんに着くとスタッフらしき女性と小学生であろう男の子がいた。

元々商店街の中にあった小さな化粧品屋さんだった物件にあるこの図書館。本を並べている棚も昔の化粧品棚をそのまま使用しており、それが可愛く、レトロな雰囲気を醸し出している。

スタッフの方とお話したところ、どうやらこの日はオーナーさんはお休みらしい。
ここに来た経緯を訊かれたのでなタ書の店主さんに教えていただいたことを話すと、オーナーさんにその旨の連絡を入れておきますと言ってくれた。

しばらく中を見学していると返信があったようで、僕が直接連絡を取っていい運びとなり、せっかくなので連絡させていただいた。
するとすぐに電話がかかってきたので外に出て電話をとった。

「私これから福山で友達と会うんですけど一緒に来ます?」
「え!?お友達と会うのに僕が行ってもいいんでしょうか?」
「大丈夫だと思いますよ。友達も旅好きな方なので」
「じゃあ、せっかくなので福山まで行きます」

という流れで本当に大丈夫なのだろうかと一抹の不安を抱えながら福山に行くことに。
幸いこの日泊まる宿は決めていなかったので、愛媛に渡ろうという自分の中だけでの予定を容易く変更する事ができた。

まさか、福山へ

旅をする時に関わらず、こういう予想外の展開がとても楽しい。
(位置関係がパッとしない方のために説明すると、福山はかなり岡山県寄りの広島県。つまり、僕は広島から尾道、福山と日に日に発ったばかりの岡山県に近付いて行ったという事である)

さて、福山まで行くと言ったが電車で行くには一度尾道まで船で戻って、それから電車を乗り継いでいかなければならない。少し時間がかかりそうだな、などと考えながら私設図書館の中に戻り取り次いでいただいたスタッフの方に事の運びを説明した。

すると「私今日15時で交代なので、福山まで車で送りましょうか?」と提案してくれた。この時すでにあと15分ほどで15時になろうとしていた。
一度は遠慮したものの、運転好きなのでと言ってくれたのでお願いすることに。

こうして、予想外の場所へ予想外の方法で予想外の速さで行くことになった。
福山への道中でスタッフの方と息子さん(小学生の男の子と女性スタッフさんは親子だった)と色んな話をした。

息子さんはゲームが好きで、私設図書館にいる時もずっとゲームをしていた。そして、ゲームをする事が好きなだけでなく、ゲーム会社の政治的な背景などまで熟知しており、たくさん興味深い話を教えてくれた。
物事を順序良く分かりやすいように説明してくれたので、とても頭のいい子だろうと思った。

そんな楽しく嬉しい助けもあり想定したよりも早く福山に到着。

早速オーナーさんに電話をすると「近くに○○が見えますか?そこに着いたらまた連絡ください」と言われ、その通りの場所に行き再び連絡すると「そこから○○が見える方に進んで、そこを右に曲がってください」という具合に誘拐犯との身代金のやり取りかのような、待ち合わせには斬新な方法でオーナーさんの元へ辿り着くことができた。

つづく

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