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かつて生きていた人の曲を聴く

最近は音楽を聴くとすれば疲れない、チルな音楽がメインになってしまった。たまにロックを聴くぞ!と思っても2000年以前のものばかりで、まさに僕にとっての中年男性(※もはや老齢になるが)が押し並べて聴くサザンや浜省のごとくである。

最近はSOUNDGARDENのsuper unknownをよく聴いている。面白いアルバムだ。

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このアルバムがリリースされた90年代初期というのはロックサウンドの革命期で、グランジの勃興、パンクロックの復権、ハードコアやミクチャーといったハードなサウンドが文字通り世界を席巻して、現在進行系のロック・サウンドの礎になったバンドが筍のように乱立していた楽しい時代だった。

当時はハードロックやメタルがダサいものとされて冷笑の対象になっていたんだけど、今の耳や価値観でPearl JamやAlice in Chainsを聴くと、ちゃんとそっち系の影響も見える。曲はグランジ的ではあるんだけど、ボーカルやリフの印象がそう思わせるんだな、と改めて発見がある(Alice in Chainsのthem bonesなんかはギターソロパートでギュインギュイン言わせてる上に尺も長いのだ)。

その点、SOUNDGARDENのsuper unknownは底が知れない。2019年にもなって今更super unknownのレビューをするのはどうなの?とは思うが、さすがSonic Youthと並んでNIRVANAの成功への花道を均した実力バンドらしい、オリジンで個性的な楽曲が並んでいる。2019年に聴いても遜色のないザラザラとした音色が心地良い。

僕は特に『My wave』が好きで、中学生時分から聴いてるが飽きることはなく、聴くたびに「かっけえ〜!」という語彙に乏しい言葉が口から飛び出るのだ。まるで中学生だ。

コード進行がヘンテコというか、何だこりゃみたいな進行にシャープなメロディとクリス・コーネルのソウルフルなボーカルが乗る。
このクリス・コーネル、男前な上にボイスも渋くセクシーで、腕と脳がバラバラに動く系のギタープレイヤーでもあり、複雑なフレーズを弾きながらアグレッシブに歌えるアビリティの持ち主だったのだが、52歳で亡くなった。突発的な自殺だそうだ。

みんな気軽に死んでいく

僕が最初にファンになったのはカート・コバーンで、NIRVANAに熱を上げてる最中に死んだ。前述したクリス・コーネルも、シャノン・フーンも、スコット・ウェイランドも、チェスター・ベニントンも、レイン・ステイリーも、みんな死んだ。もういない。漫画『トクサツガガガ』で、主人公が推しに言えることといえば「元気でいてください…ぐらいしかない」というような事を言っていたが、まさにそうである。

ただ、もう居なくて惜しいとか悲しい…とは不思議と思わない。彼らは死ぬべくして死んだんじゃないだろうか、と思う。彼らは死んだ。それだけだ。音は残っているから、僕は今も彼らの残した音を聞く。僕と音楽の心地よい距離感はこれでいい。無粋にならないあたりが最適だと思っている。

余談:シャノン・フーン

ブラインド・メロンのボーカル。土臭いサウンドと、おまえ絶対ハッピーになる粉をスッスッスッしてるだろ!みたいなフワフワしたボーカルが印象的。ハッピーパウダーでトンだ挙げ句に天国まで行ってしまった。CHANGEって曲がメチャクチャ好き。カラッカラに乾いたド渋なフォーキーサウンドに『夢を見続けなよ、夢を見れなくなった時が死ぬ時だから』というハッピリー・シンギングとは裏腹な、ジェネレーションXらしい仄暗い歌詞がとても良い。

スコット・ウェイランド/チェスター・ベニントン

両人ともストーン・テンプル・パイロッツのボーカル。スコットはドラッグのやりすぎで知らないうちにバンドをクビになり、バンド相手に訴訟とか起こしてたりしたし、オーバードーズで死んだ。とはいえバンドのアイコン的存在でストテンといえば彼だった。今思えばロッカーやパンクスっぽい生き様の人だったように思う。

そして何故か後釜のボーカルに押しも圧されぬリンキン・パークのチェスター・ベニントンが収まって、似合わないティアドロップのサングラスを掛けてフニャフニャ踊りながら歌っていた。僕の仲間内では…これがまぁ大不評で、スコットを追いかけるのはやめろ!踊るな!と居酒屋で怒っていた。2017年に自殺。

ストテン、色々災難やな…と思ってたら新しいボーカル迎えて、2018年に新曲も出してて感心した。コレがまたカッコよくて、新しいボーカルもいい。スコットを匂わせる色気のある、芯のあるボイスがバンドイメージを崩さずにマッチしている。生き残ったベテラン・オルタナバンドとして、ぜひとも頑張ってほしい。


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