見出し画像

2022年 京都の旅〜新町商店街のおさんぽ美術館〜

 僕の周りで現状に満足をしていない人が増えている気がする。現在所属している社会において何かしら物足りなさがあり、その空白を埋めるために私的時間を費やす人。僕がカッコええなと思う人ほど、そうやって生きてる証を探している気がする。理由を聞いたことはないが、僕に思い当たることとしては、なんか、知らんうちに少数派になってしまってる居心地の悪さというのか、たとえば京都市はこの十年ほどの間に、未来に遺してほしい建物が撤去されたり、海外の富裕層向けの超高級ホテルが乱立したり、どこの大都市にもあるような施設ができたりしていて、僕はそれをまったく望んでいないんですけど、そっちの方向を喜ぶ人が多いのか、もしくは、そっちの方向を喜ぶ人のなかにとてつもなく権力のある人がいるのか。なんにせよ、僕の望みなんてキンタマの裏筋の産毛ほどの価値もなく、切り捨てられてしまうわけでして。こんな風にして、僕の所属する社会において、あらゆる角度から爪弾きにされる機会が増え、そうなると、日常がつまらなくなり、何か、別の場所でおもいきり羽をのばして自我を解き放ちたくなるものなのではないか。

 と、いうわけで、最近、周辺が面白くない僕は、面白いことに触れたくて旅をすることにした。旅といってもお金がかかるから遠くには行けないが、別に遠くへ行かずとも近場を自転車で巡るだけでも面白いことを拾い集めることくらいはできるもので。僕が注目したのは京都新聞の地域面。カッコつけてばかりのラジオでは見向きもされない地域情報に、実は面白さが隠れているんじゃないかという仮説を立て、その仮説を検証してみることを趣味にすることにした。

 本日、新しい趣味の1回目として出かけたのは新町商店街の「おさんぽ美術館」。昨日の京都新聞地域面で紹介されていた催しだ。地域住民と商店街の関係を深めるべく、商店街沿いの洛北幼稚園の子どもたちが人やキャラクターなどをカラフルに描いた50点ほどの作品を25店舗に展示しているらしい。

 うろ覚えの記憶で新町商店街へ向かう。確か、全国のスピッツファンが密かに注目しているパン屋「さざなみベーカリー」がある商店街だ。商店街といっても、あの商店街はどこが始まりでどこが終わりかいまいちよくわからない。お付き合いする前にセックスをしてしまい、ぬるっと付き合いはじめてしまったような商店街だ。アーケードもないし、境界線がわからないが、たぶん、北大路通りからそのもう一本北の大通りまでだ。あれが何通りなのかもわからない。私たちって、もう付き合ってるってことでいいんやんな?あ、ああ、う、うん。

 商店街という割に、商店が連なり続けてるわけでもない。なんというか、スカスカやないか!しかし僕はこのプロの手が入ってない感じが好きだ。デザインとか戦略とかイノベーションとか言い出すと途端に面白くなくなる。それっておまえのマスターベーションなんじゃないのとツッコミたくなるあの面白くなさに染まらないで帰って、染まらないで帰って!

漬物屋さんの店頭で見つけたアート

ありがたいことに染まらずにいる新町商店街。西側を北上するとお漬物屋さんの店頭にまず一枚のアートを見つけた。京都新聞の記事によると、人やキャラクターなどを描いている、ということだったが、何を描いているのかは見当もつかない。しかし僕はこれでいいのだと思う。勝手に解釈して芸術だとかアートだとかと語ることほどつまらないことはない。よくいるでしょう。ちょっとアートに触れたら嬉しがって解説したがるアホ。アホがアホな解釈で語るアートの薄さときたら、コンドームにしたら売れるかもしれない。そういうのがマスターベーションならぬイノベーションなんじゃないのかしらん。

 結局、一本北の大通りに辿り着くまで、この一作品しか見つけられなかった。東へ渡り南下する。窓越しにさっそく二作品めを発見した。茄子だろうか紫芋だろうか、いや、これは紙だ、絵画なのだ。

これは何かなんて別にどうだっていいのだ

さらに南へ下がると銭湯があったので入ってみた。手ぶらのくせに思いつきで入ってしまうところが旅気分じゃないか。そういえば、今日5月16日は松尾芭蕉が奥の細道の旅に出かけた記念日か何かだから「旅の日」だ。タオルを2枚借りて男湯へ入る。体重を計る。むむむ。
風呂場にはおじいちゃんしかいなかった。割と全身刺青だらけのおじいちゃんもいた。けっこうな人数が入浴されていましたが、あれが若い男ばかりだったら、もっと圧迫感があっただろうな。おじいちゃんは、存在が遠慮がちだからありがたい。オレがオレがのオレ様型マウンティングおっさんたちも、やがてあんな風に遠慮するようになるのだろうか。それとも場所が変わればあのおっさんたちも謙虚なんだろうか。そうだとすれば、それはそれで腹が立つ。サウナを独り占めして水風呂に入り、サウナを独り占めして水風呂に入り、延々繰り返せそうなループ天国、風呂天国。ラジオは今週と来週、ユーミンのリクエストWEEKだ。お借りしました2枚タオルほど柔軟剤の香りが強いものはない。こっちは字余りまくりの布施明。風呂上がりのパイン牛乳が美味かった。

パイン味に昭和の面影


 銭湯を出て南下すると、ポップコーン専門店やシカゴピザにも作品が飾られており、その先にはコンドームの自販機があった。アートにアホ解釈するおっさんでできた極薄のコンドームだ。

アートにアホ解釈するおっさんより薄いかもね。



 牛乳屋さんや何屋さんかわからないお店の軒先にも展示があり、僕が写真を撮っていたら地元のおじさんとみられるおじさんが微笑みかけてくれた。あのおじさんも、おじさんのコミュニティではオレ様型マウンティングおっさんになるのだろうか。

こちら、全国のスピッツファンが訪れるパン屋さん


 全国のスピッツファンの聖地(これは言い過ぎ)「さざなみベーカリー」は閉まっていた。さらに南下していくと、僕が北上してきた西側のお店の店頭に飾られている絵を一点見つけた。西側にいたままでは気づけなかった一枚が東側に来ただけで発見できたわけだ。立ち位置を変えることで気づけることがあると、プーチンにも教えてやりたい。

みんなプーチンのことを非道だとか言うわりに、やってることがそんなに変わらなかったりしていて、そういう社会において僕は少数派になった。居心地の悪さを感じたときは今日みたいに旅に出ることにしよう。特別何が面白いということもなかったけれど、僕はそういうところに面白さを見つけることのほうが、少なくとも、アートを嬉しがって解説するアホでまぬけなオレ様型マウンティングおっさんより、はるかに面白い。

涌井慎です。趣味は京都新聞の地域面で見つけたお出かけ情報に乗っかることです。

#京都新聞  #旅の日 #旅 #旅行 #観光
#京都観光  #京都新聞 #地域面 #お出かけ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?