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察してくれや!

いつも新幹線は三列席の窓側の席に座ります。真ん中の席は空いていることもありますが、通路側の席はたいていの場合、誰かが座ります。

僕は京都で降りますが、この通路側の人がどこで降りるかがわからないから困る。僕がとても嫌なのは、京都で降りる僕が通路側の人がくつろいでいるところ、「すみません」と横切って降りようとしたところ、すぐ後にその人も京都で降りるのだとわかった時、あれが本当に嫌いなんです。

まず自分が嫌になる。自分がもう少しゆっくり降車の準備をしていれば、この通路側の人の最後のくつろぎを邪魔せずにお互いに「すみません」の気持ちを抱くことなく降りられたのに!

もう一つは、大変申し訳ないんですが、この通路側の人にも腹が立つ。この人が早めに降車の準備をして席を立っていれば、僕が変にこの人に気を遣うことなく、ただ、順番通りに降車できるのに、この人が変にギリギリまでくつろごうとするものだから、「あ、この人は京都では降りないのだな」という判断のもと、僕は前を横切ることにするわけです。

結果、この人は最後のくつろぎを邪魔されて気分が悪いだろうし、僕だって同じ京都で降りる者同士なのに窓際の分際で通路側の人を差し置いて先に降りるなどという無礼な行為に走ってしまった己のことが恥ずかしくて仕方ない。

この窓側のはしたなさを避けるための最善策は、通路側が気持ち早く降車の準備をすることに尽きる。「あ、この人は京都では降りないんだな」とこちらが判断する数秒前に「京都で降りるで」というシグナルを僕に送ってくれさえすれば、お互いが嫌な気持ちにならずに済むのに。と思いながら、今、新幹線がもうすぐ京都に到着するんですけど、通路側のおじさんは降りる気配がない。このおじさんはどっちなんやろ。こっちは降りるで!ていうか、おっさん、こっちが充電器片付けたりリクライニング元に戻したりしてるんやから察してくれや!

#note日記 #日記 #短編 #コラム #エッセイ

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